地方エンジニアが感じる地方・中小企業での悩み

罪の意識と罪の認識

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 過去にスラッシュドットなどでも話題になっていた違法ライセンスの問題。

 最近では石川県庁や北海道などでも同様の話題が続くように、古くから問題として認識されているにもかかわらず一向に解決できていない話だと思います。この問題は企業ユーザー側に限定した問題ではなく、一般消費者やわたしたち開発者側も同じく違法に利用している割合が高いところが根深い問題ではないでしょうか。

 日本でもBSA(BSINESS SOFTWARE ALLIANCE)が頑張っている様子で、違法コピーに対しての調査や啓蒙活動など多くの活動が行われています。石川県庁の件もここが設立している情報提供窓口に通報されたのが始まりでした。

 個人的に根深いと思えるのが「開発側でのソフトウェア違法利用」です。

 VisualStudioなどの開発環境、Office製品、Adobe製品、シェアウェアまで違法に利用されるソフトウェアは多種に渡ります。本来ならボリュームライセンスなどで必要数導入し、管理されるべきなのですが、1セット(もしくは少数セット)購入し、社内で使いまわすケースが多いようです。Office2000やWindows2000などもよく違法利用されるものとなっています。ネットワークアクティベーションが導入されたXP以降からは割合が減ってきていると思いますが、それにしてもクラッキングして回避する人というのも結構な数が潜んでいるでしょう。

 旧来の製品ではアクティベーションが不要な物も多く、不正利用を行いやすいものが多々存在していたのもあり、

「そのまま使えるのだから馬鹿正直にライセンスを購入するのは無駄な費用だ」

という誤った認識のまま、今に至っていると思います。聞いた話ではライセンス自体を

「紳士協定です」

と、都合よく捉えて不正に利用していたり、あまつさえ不正な製品をユーザー側環境に導入してしまうということもあるそうです。

 不思議なのは、同じようにライセンス方式のものを販売しているようなところでさえも、このようなライセンス違反は行われているというところがある、というところです。

 昨今のドラクエIXにおけるマジコン騒動にも見て取れるように、違法利用は巡りめぐって自分たちの首を締める結果になるのは明らかです。正規に商品が売り上げをあげることがなければ、ソフトウェア業界というのは衰退していくのは避けられない事実です。作っても売り上げが立たないのならば作らない、というのは考えるまでもなく当然ですよね。ビジネスなのですから。

 同じ業界に勤めている以上、気付いていないはずはないと思います。分かっているけどやっている、そのような状態ではないでしょうか。

 ご存じの方も多いでしょうが「割れ窓理論」という環境犯罪学上の理論があります。少しの割れた窓を放置することにより、さらに凶悪な犯罪を呼び起こす引き金となる、というものです。わたしはソフトウェアの違法利用というのもこれにあたると思っています。

 きっかけはただ1人が違法に利用し始めるところからスタートするのですが、気がつくと社内全域で違法利用が当然(というか罪を感じない)の状態になってしまっている。そのうちに社内にとどまらずユーザーにすら違法利用を暗に勧めてしまう。この状態が進むと次にくるのは「自社で提供しているソフトウェアが違法利用される」という状態で、そして売り上げが落ち込み業界自体が停滞してしまう。現時点での状況と比較しても、それほど外れていないのではないでしょうか。

 「そうはいってもそれ(違法利用しているソフト)がないと仕事にならない」という方もいるでしょうが、それは言い訳にすらなりません。最初の時点で間違っているのですから、どうやっても間違ったままです。できない仕事をやってしまったことが原因なのです。原因に対して手段を講じない限りは、いつまでたっても改善することはありません。

 仮にそのような環境だったとすると、どのように是正していくのがベターなのでしょう。

 この点については何通りか方法があるかと思います。

  • 社内の意識改革を行う
  • BSEなどの外部機関に連絡する

 BSEなどに連絡をするのが、恐らく1番手っ取り早いとは思います。ですがこのご時世ですので、なかなかその後を考えるとふんぎりがつかないと思われます。何しろケースによっては多額の賠償金を支払うことになりますので、勤めている会社の存続に関わることすらありえます。

 そうなると意識改革を行うという選択肢になるのですが、これは物凄く根気のいることです。恐らくはトップダウン型で対処されなければ、事態が進展することもないと思われます。ボトムアップで解決できるくらいなら、最初からこのような問題も発生していないと思えます。

 理想的なのは個々人それぞれが明確に意思を持って「違法ライセンス」を拒否することなのですが、それも物凄く精神力が必要とされる姿勢です。一社員が会社に反抗するというのは中々できることではありません。

 ですが、そこで諦めては何も変わりません。

 辛く厳しいと分かっていてもやらなければならない、それぐらい大切なことだと思います。技術者としてのプライドというか、難しいのですけどそういった根幹を形成する部分ではないでしょうか。

 最後に個人的に思うところですが、現在の状況をコメント欄などに書いてみてください、と言った場合、どの程度情報が集まるものなのでしょうか(ここのコラム自体が参照数少ない、という問題が一番大きいのですけど……)。

 こういう時は「完全匿名」な環境というのは必要だな、と思いますね。わたしは小心者なので言いたいこと、伝えたいことがあっても発言しないことは多々あります。それがWeb上となればなおさらです。本当の意見を知りたい時、伝えたい時程「完全に匿名だったらなぁ」と思ってしまいます。

 まぁ、いろいろ考えなければそのような場所を用意することも難しいのですけどね。

Comment(2)

コメント

hajime

うちはボトムアップで改善(解決ではない)しています。
企業の意識を変えることはできそうなのですが、
個人(自宅でのOfficeやマジコン)の意識を変えることは本当に難しいです。

Ahf

hajimeさんコメントありがとうございます。

企業の意識を変えるところまでいけるというのも立派なことだと思います。
私のところは・・・まぁそれはおいといて。

最後に行き着くところは個人になるので、いつかはどうにかしなければならないの
ですが言われるように物凄く難しいですよね。
地道に「違反がどうしてダメなのか」「どれくらいダメなのか」といった
啓蒙活動を行っていくくらいしか思いつかないのが難しいところだと思います。

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