地方エンジニアが感じる地方・中小企業での悩み

地方って……

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 インターネットがここまで発展して論理的な距離はものすごく縮まってきているのですが、やはり物理的な距離が多くの影響を与えてくるというのは、今の時代になってもあまり変化がないように思えます。

 わたしが現在勤務している会社は、海を越えたとある都市にあります。初夏の時期には多くの人たちが踊りまくるイベントがあり、冬になれば氷雪で綺麗な像を作ったりするイベントのあるあの場所です。しかしそんな人の集まる都市であっても、海を越えパスポートはいらないけれど、ある種の海外と化している場所であるために痛烈に思うことが多々あります。

 「セミナー・イベントの数が東京と比較して極端に少ない」

 仕方ないとはいえ実際に行われているイベントやセミナーの数を比較してみると、そのあまりの差には驚いてしまいます。わたしが一番よく利用させてもらっているのはマイクロソフトの行っているセミナー系ですが、一般向け用・企業向け用を併せるとものすごい差があります。

 興味のある方はぜひとも検索してもらいたいのですが、2008年10月現在、わたしの住んでいる場所での開催予定は10もありません。対して東京はというと、数十ものセミナーが開催されています。

 こういったイベントやセミナーというのは、人が集まる場所でなければ開催しにくいというのは重々承知しているのでわかってはいますが、それにしてもすごい差です。逆にいえば地方に住んでいるというだけでそういった機会は発生せず、東京に住んでいる(または東京近郊に住んでいる)人たちと比べチャンスが圧倒的に少ないという現実があります。もちろんセミナーやイベントに参加するだけで、イコール技術力などに差がつくというほど単純なものでもありませんが、平均値という見方をするとその差は歴然です。チャンスの数がそれほどまでに違います(最近行われたTechEd2008も横浜でしたね……行きたいとは思うのですが……交通費だけでも厳しいのです)。

 こういったことも関連するので、同じ仕事であっても東京の企業と地方の企業では「費用対効果」に差が開いているのでは、と思えます。仕事の質という点ももちろんあるでしょうが、教育面などの質を確保するための点も含まれるのでは、と思います。

 ところが、現実としてはそこまで地方において本州企業が進出できているわけではありません。ここには冒頭で述べた「物理的な距離」というのが関連してきていると思います。いくらインターネットが発展しても、新幹線が引かれJRで行き来しやすくなるかも知れなくても、飛行機の値段が下がったとしても、「海」という壁は物凄く高い障壁になってしまっているのです。

 よくある例としては外食産業やコンビニなどがあると思います。本州においてはほとんどの人が知っているであろう大手チェーンでも、北海道ではそのチェーンを見ることがほとんどない、などといったことはよくあります。コンビニで有名なam/pmもその一例で、東京に住んでいるときはよく見かけたのですが、これが北海道となると一店もありません。大体はコストの問題が大きく関連するので、北海道で展開するためには北海道独自に考えていかなければ事業としてうまいこといかない、という話はよく聞かれます(松屋やファミリーマートが北海道上陸したのは非常に嬉しく思いました)。

 IT業界でも同様で、いかにインターネットVPNなどが広まってきたとしても、現実的な距離というのはそれ以上に影響が大きいと思われます。特に世の中のほとんどを占めるであろう中小企業では、いくら技術的にサポートが可能であっても「物理的な距離が近い」というのは精神的にも安心できるために、地元業者と契約をするというのはよくあることだと思います。わたしも個人的にはそれほど問題とは思っていません。

 ただそれを一番のウリにしてしまうような企業は、大いに問題があるとは思いますが……(もちろんそうでない企業も多数存在しています。ですが地方ではその割合が低下するのもそれほど外れていないのではないでしょうか)。

 このあたりには色々と関連する話があり、そうそう簡単ではないところだと思います。

 大きくは人材の問題でしょうか。実際に就職活動を行っているような人たちですとよくご存知だと思いますが、本州企業が地方の学生達を大量に採用し、地元企業にはあまり人数が回ってこないなどという一面もあります。地元企業が採用を行う時には、すでに本州企業によって半分以上採用されてしまった後、というのもよくある話です。

 人により事情は異なるでしょうが、純粋に給与面においても地元企業と本州企業ではかなりの差がある、というのも要因の1つでしょう(アルバイトの最低賃金もかなりの差がありますね)。

 また、わたしも思う気持ちなのですが、「本州で働いてみたい!」という純粋な気持ちもあるかと思います。学生のころは「格好いいから」と思うことが多かったのですが、年齢を重ねると「どこまでできるかを試してみたい」とか「働く環境を良くしたい」とか色々違う理由も増えてくることがあります。

 このように地方では厳しい状態に置かれているのですが、その中でいかに最善を尽くしていくかを模索していかなければますます地方は困窮していくばかりで、やがては限られた体力のある企業だけになってしまうでしょう。そうなることにメリットは少ないと思います。まっとうに切磋琢磨して数が減少するのであれば、まだ意義があると思います。しかしそうではない理由で企業の数が減っていくというのは大変な問題ではないでしょうか。

 ここではそういった地方ならではの問題や、業界に関わる人間として思うこと、そのようなところを主軸にして(時々脱線しながら)書いていこうと思います。色々な点で至らないところが多いですが、ご指摘を戴けるとありがたく思います。

 ここ@ITでも色々と参考になる記事が多いのですが、残念ながら地方に向けた記事というのはまだまだ少数だと思います。業界記事といってもどうしても本州を中心に見据えた記事になってしまうのは仕方のないことでしょう(当然メディアですから広く全体に向けた記事になるのがいたって当たり前ですが)。

 そのような中、こういうしがらみも一切抜きにわたしのような単なる一個人でさえも発言を行える場を提供してくださった@ITの皆さんに感謝します。

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