いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

エリート思考はエンジニアをやるべきでない

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▪️システムは思い通りに動かないのが前提

 大企業のシステム構築にありがちな話だが、システムを構築する際に極端にミスを嫌う傾向が強い。やたらと細かく手順を突き詰めたり、大量のエビデンスを求めてくる。これは自分たちの手法に自信がない現れだと思っている。

 手順を突き詰めるのはいい。だが、想定外が起きた時に大概総崩れになる。大量のエビデンスを取るのはいいが、後から見直す手法がデタラメだ。ドキュメントを作るにしてもメンテナンス性なんて全く考慮されていない。致命的なのは、過去のプロジェクトのデータが分析、再利用できる形で残っていないことだ。

 大企業というのはエリート思考だ。ミスを知らない秀才型が好まれる。だが、所詮は秀才。理論的思考はできても発想力や思考の柔軟さは別ものだ。想定外の多いシステム系の業務とは相性が悪いのかもしれない。

▪️エリートは挫折に弱い

 ちなみにうちの親は典型的エリートだった。某大会社で重役やってたとか。確かに頭もいいし場も読める。だが、私から見て重大な欠点があった。一般論しか言えないのだ。他のエリートと言われる人、もしくはその生き方に価値を置く人ほど、優秀ではあるが、行動のパターンが読みやすいのだ。

 エリートとは一般論を極めた秀才だと思う。そういうエリートを良しとして価値を置く人たちが、エリート思考の人たちだ。そういう人達の傾向として、一般論で収まるレベルの問題には迅速に対応できる。そういう長所がある。だが、少しでもその範疇を超えると凡人と変わらない、もしくは凡人以下の能力しか発揮できなくなる。

 発想力というのは、その一般論を超えるための力だ。なので、一般論を重視するエリート思考ほど発想が貧弱になり易い。また、物事をうまく進める力と、挫折に対する精神的な強さは別ものだ。エリート思考の人ほど物事をうまく進める事ばかりに注力し易い。それはそれでいいのだが、上手くいかなくなった時の対処法を学びそびれるので、結果、挫折に弱くなるのだ。

▪️なぜエリート思考にエンジニアを勧めないのか

 エリートに向いている仕事、それは事務仕事だ。決められたテンプレートの上を着実に進む。そういう業務こそエリートが実力を発揮できる仕事だ。エンジニアの仕事は高い知能は求められるが、必要なのは一般論ではなく専門性だ。そこに大きな違いがある。

 エリートがエンジニアになりたかったら、一般論を捨てて専門分野に傾倒する必要がある。この方法なら、元々知能が高いのである程度成功できるだろう。一般論にしがみつくなら、間違いなく爪弾きにされる。一般論と専門性を両立させるのであれば、膨大な労力はかかるが、実現できたらすごいエンジニアになれる。

 問題は、高い能力を持った本当のエリートではなく、エリート思考なだけの人がエンジニアをやる場合だ。一般論にしがみつく分、早急にリソース切れを起こしてスキルに伸び悩む。実のところ、これがエンジニア35歳定年説の理由だと思っている。

▪️エリート・パターン

 失敗したプロジェクトをいくつも見てきたが、失敗するモデルケースで、エリート・パターンというのがある。大企業で必ずと言っていいほどよく起こる失敗ケースだ。ちなみにググっても出てこないぞ。今、私が考えたものだからだ。書いていると長くなるので、詳細は別のコラムで書くとする。

 エリート思考の人が集まった大企業では、必ず共通する思考のパターンがある。例えば、自分たちはコンピュータを使いこなせているという慢心、下書きをせずにいきなりドキュメントを書く、データの分析をしない等だ。こういった傾向に端を発して、絵に描いたようにどこの会社も同じ失敗をしているのだ。

 IT業界全体での評判が悪いのも、結局、みんな同じパターンで失敗しているからだ。だが、原因は単純、かつ明確なものだと思う。ただそれが身近すぎて気づけないだけだ。問題解決の糸口はそんな難しいものではない。まず、常識から疑ってみてはどうだろうか。

Comment(8)

コメント

ハリコフ

エリートについては知見がないので何ともですが、確かにシステムは泥臭い人間の方が向いている気がします。システムも一般論だけで語れるくらい洗練されたら、私たちの仕事は楽に・・・いや、仕事が無くなるかな?

大量のエビデンスは確かに無駄が多いかも。でも私も要求したことがあります。

システムのリプレースのテスト工程で大量に問題が発生して、現場レベルでは認識を共有して対処にあたっていたのに、会議の席で「まったく問題ありません」とか言いやがったので、事前に用意していた数百のテストパターンを投げつけて、「問題ないなら、このテストのエビデンスを出せ」と(なお、結果はボロボロだった)。

大量のエビデンスを求められた時、相手に不信感を持たれているって見方もあるのかなと思います。

社会インフラも対応するSIer

著者はダメ人間としか仕事がないのかな?

誰しも想定外の動作をした場合、クレーム大会になるから慎重を期す。
自信がないのではなく、影響範囲を考え、信用を重視する。

システムは思い通りに動かないのが前提であることは理解しているが、同業者であるシステムの開発者であっても、利用者側にその許容度はない。
たとえば、銀行の預金残高の計算結果が間違っていれば、システムがワルイという。思い通りに動かないから仕方ないとは絶対に言わない。

エリート云々ではなく、ダブルスタンダード対応ってことである。

Anubis

ハリコフ さん

> 大量のエビデンスを求められた時、相手に不信感を持たれているって見方もあるのかなと思います。
なるほど。そういう観点もありますね。

システムが一般論で語られるとしたら、システムの進化というより、人の進化したらそうなると考えている。
システムの簡素化も限界がある。複雑さに対応できる人が増えれば、今のシステムも一般論で語られるのかなぁと。

小企業開発者

> 自分たちはコンピュータを使いこなせているという慢心、下書きをせずにいきなりドキュメントを書く、データの分析をしない等
こういう人のことを「エリート」と定義したのならばそれはエリートだし、それゆえに失敗するでしょうが、大き目な企業の方とかはそれが多数派ではないと思います。
私の過去の経験ではシステムを開発するにあたり新しいことにも挑戦していたし、その新技術や新手法についてしっかりと分析してましたね。情報共有のためのドキュメントも豊富でした。

エリート・パターンというのがどんなものかぜひ知りたいです。コラム待ってます。

社会インフラも対応するSIer

あの内容で単純に失礼だと感じると言うことは、的を得ていると言うことなんですけどね。
また、自らの主張を否定されたら、本質を関係ない部分で一方的に議論を打ち切るやり方は、心理学的には、間違ったエリート志向(自らは選ばれしエリートでありたいと深層心理で感じていて、自らの主張を否定されると過剰に反発する)の象徴である様に見えますよ。

まあ、本質と関係ないので、本件のコメントはこれで差し控えますが。

Anubis

> 小企業開発者 さん
>エリート・パターンというのがどんなものかぜひ知りたいです。コラム待ってます。
今後、機会があれば書いて見たいと思います。コメントありがとうございました。

Anubis

>社会インフラも対応するSIer
最初の一言が失礼。ついでに日本語がおかしい。
内容自体は的を得ている部分もある。だが、考え方がまとまっていない。
議論と言うなら、最低限の礼儀はわきまえましょう。あと、的確に物事を伝える努力をしよう。
他件でもコメントを控えていただくと助かります。

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