@IT自分戦略研究所 メールマガジン「@IT自分戦略研究所 Weekly」に載ったアイティメディア社員のコラムを紹介します。

父の夢がかないました

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 2007年11月9日の「@IT自分戦略研究所 Weekly」に掲載したコラムを紹介します。現場で働き続けたからこそ、見えるものがある。どの世界も同じですね。

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 私の父の密やかな夢は、特許を取ること。昔から何かアイデアを思い付いては、図面を描いていました。これまで何度か特許出願を考えたことがあったようですが、実際に出願するには至りませんでした。ちなみに去年のいまごろ「死角がない車用バックミラー」を考案しましたが、母がWeb検索であっさり類似品を見付けてしまったことで出願を断念しました。

 ついこの間まで、家族の誰もが文字どおり「夢」だと思っていましたが、先日「特許査定きた。やったー」という携帯メールが父から届きました。

 特許事務所の対応は、初めはかなり冷静だったようですが、図面を見た途端、対応は一転。「『実用新案』でいい」という父の言葉とは裏腹に「『特許出願』でいきましょう!」と意気込んだのは担当の弁理士さんでした。出願が受理された後、早期審査請求をしていただき、弁理士さんいわく「儀式だ」という拒絶理由通知に対し補正書を出して、無事査定となりました。出願から査定までの期間が約4カ月で、登録料はすでに納めたようなので、「特許登録が先、広報公開が後」ということになります。このように順調なケースは珍しいようです(分野にもよるみたいですが)。

 縁がある瞬間とは、このように、「アッサリとしたモン」なのかもしれません。

 今回査定が下りた特許は、父の仕事に関するものでした。父は20年以上、建築設計事務所を営んでいます。「事務所」といっても、一軒家の書斎がそれです。それでも、バブル崩壊後の不景気も乗り越え、おかげさまで、いまも無事に生き残っています。父は建築設計士で経営者ですが、いまもなお、現場で自らカナヅチとノコギリを振るい続けています。長い間ずっと、現場をリアルタイムで見つめてきたからこそ、今回のような特許の登録に至ったのかもしれません。「現場で考え、研究せよ」、ビバ! 豊田喜一郎! このたびの一件は、娘として心から誇らしく思います。

 土日も関係なしで働きづめで、しかもITオンチ(携帯が臨界点)な父の代わりに、事務所とのメールベースのやりとりにおいてクイック・レスポンスをした母も内助の功をたたえておきましょう。

 お金もうけ? それはまた別の話。「お金は後から付いてくる」ことを信じます。

(@IT MONOist 編集部 小林由美)

Comment(1)

コメント

小林由美さんへ

会議室ではどうも。現在休職中、貧困SEの田所です。僕の場合「素朴なエンジニア、略してSE」なので、SEを名乗ることさえはばかられるのですが……。

現場で考えることは良いことです。僕の社会人デビューは、親戚のプロパンガス機器類を作る中小企業なのですが、そこで、ドラフターで図面を引いては、上司にダメ出しされ、酷い時には3徹ぐらいして、自動液切替弁の軽量化・静粛化設計に成功しました。(20%も軽くなったのですよ)

溶接工に「こんな図面でけるかい」と工場でフランジ(つまりは鉄板)を投げつけられたり、組み立て工に「こんなややこしいもん組めるかい」と散々だったのですが、おかげさまで懸念していた「ガス漏れ・引火・爆発」することもなく、耐用期間を無事に終えました。裏六甲の「立杭焼窯元」や「かまぼこ工場」に納められたそれは、無事に仕事を終えました。もうプロパン業はこりごりです(苦笑)。やっぱり「死人が出ない」SEの方が向いていますね。精神的に。では。

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