遅れに遅れる電車を待ちながら
2009年10月9日の「@IT自分戦略研究所 Weekly」に掲載したコラムを紹介します。この日は本当にすごい風でした。最寄り駅に3時間、閉じ込められた思い出があります。
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10月8日の朝、すさまじい風の音と共に起き、そして確信した。
「ああ、今日はすし詰めの満員電車に間違いない……」
社会人になって半年。仕事を少しずつ覚え、お客様と話をする機会もどんどん増えてきた。与えられる仕事量に比例して残業も増える。少しずつ、企業戦士として目覚めつつあった。しかし今日、歴戦のサラリーマンにはまだまだ及ばないということを、つくづく思い知らされたのである。
駅へ着くと、思ったとおり、人であふれていた。
無理もない。ベッドタウンであるうえに、通る電車は1種類、駅もそれほど大きくない。駅の外から駅構内を眺めてみると、ホームから落ちそうなほど人が立っている。停車している電車には人がギュウギュウに詰め込まれていて、いつ発車するか分からない電車の中で携帯電話をいじっているのが見えた。
改札に向かう階段を見て、さらに絶望する。改札に行けないのだ。階段も、恐ろしい人口密度である。さらに、階段の前には40メートルほどの大行列。
……これは並んでいるのか? 並んでいる? どこに向かって? まさか……
さっき来る途中で見た駅のホーム。サラリーマンの皆さまは、あのカオスへと向かうに並んでいた。ここら辺で、わたしはもう定時で会社へ行くことを諦めた。午前中の予定のリスケを手配する。
無理だ。これに並ぶのは。この時点で精神的にキツイ。
たとえ電車が動いても、改札に行くまでに30分以上かかるだろう。そもそも、電車はいつ動くんだ? ああ、イライラしてきた。今日も溜まっている仕事がたくさんあるのに。
そんなことを考えながら周りを見回し、ふと気付いた。サラリーマンのオジサマたちは「いつものことだ」といわんばかりに涼しい顔をしている。恐ろしい人口密度の中、微動だにせず、立ちっ放しで、いつ出発するのか分からない電車を待っている。
何という忍耐力と精神力。これには驚いた。くぐり抜けてきた修羅場の数が圧倒的に違うのだろう。こんな芸当ができるのは、世界でも日本のサラリーマンだけなのではないだろうか。いつかわたしも、この人たちと同じくらいの忍耐力と精神力を身につけたいと素直に思った。
そんなとき、Twitterに「京浜東北線は2時間後に運転再開予定」というポスト。
わたしは家に戻った。