街で見かけたガジェットを分解してわかったこと・わからないこと色々レポート

第5回: シリコンをお手軽に観察!光学マウスのイメージセンサを顕微鏡で見てみよう

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こんにちは。「100円ショップのガジェット」を中心に電子機器を色々と分解をしているThousanDIYです。
このコラムでは、ガジェットを分解する中での発見や感想をつらつらと書いていきます。


半導体不足が話題になっていますが、そもそも「半導体って黒いパッケージしか見たことがない」という方も多いと思います。
第5回は、半導体を使用した製品のなかでも一番手軽に半導体チップが観察できる「光学マウスのイメージセンサ」について、です。

今回のターゲット

今回の分解のターゲットはキャンドゥで100円(税別)で販売されている「USB光学式マウス」です。

本体は黒と透明のABS樹脂の組み合わせで構成されています。黒の部分の表面はシボ加工されていて、触った感触も100円の割には安っぽさをあまり感じません。

03_製品の外観を拡大表示

本体を分解して基板を取り出す

底面に貼ってある丸いシールの下のビスを外して本体を開封しました。コストダウンのために、USBケーブルはメインボードに直接ハンダ付けされています。

本体を開封した状態を拡大表示

メインボードの部品

メインボードはコストの安い紙フェノールの片面基板、実装されている部品は「光学マウスセンサ」とLED、マウスボタン用の3個のスイッチとホイール用のロータリーエンコーダです。

メインボード_表面を拡大表示

裏面にはマウスの移動検出のためのイメージセンサ開口部が見えています。

メインボード_裏面を拡大表示

「光学マウスセンサ」の仕様を調べてみる

「光学マウスセンサ」は、中国の深圳市汇春科技股份有限公司(Shenzhen Yspring Technology Co.,Ltd., http://www.yspringtech.com/ )製の「YS8108」です。

データシートは https://bit.ly/2UQVS8w から入手できます。


08_光学マウスセンサを拡大表示

データシートの「YS8108」のブロック図をみると、USBインターフェースや電源制御機能も内蔵されており、1チップでUSBマウスが実現できる構成となっています。

10_ブロック図を拡大表示

ブロック図(YS8108データシートより)

「光学マウスセンサ」の半導体チップを顕微鏡で見てみる

センサを開封する

「光学マウスセンサ」裏面のカバーの隙間にカッターを差し込んでカバーを外すと、内部のイメージセンサの半導体チップが見えます。

14_イメージセンサーのカバーを外すを拡大表示

使用するUSB顕微鏡

今回は小型でPCやスマートフォンに接続できるUSB接続の顕微鏡を使用します。(2022年2月現在、amazonで2,300円)

https://amzn.to/3pQHc7A

「スペック上の」倍率は40〜1000x(これはちょっと怪しい)、観察位置の固定に工夫が必要ですが、比較的高い倍率でチップを観察できます。

15_使用したUSB顕微鏡を拡大表示

ワイヤボンディングを確認する

チップ自体はパッケージのピンに接続するための基板(インターポーザー)に実装されています。基板の電極とチップの電極(PAD)は細いワイヤで接続されています。この構造を「ワイヤボンディング」と呼びます。

接続しているワイヤが観察できる程度まで拡大してパッケージの各端子とチップの接続を確認したものが以下です。
チップの各電極にワイヤーが繋がっているのがわかります。特に電源(VDD5)とGNDは複数のワイヤで接続されています。

16_ワイヤボンディングを拡大表示

半導体チップを拡大して見てみる

さらに倍率を上げて、半導体チップを拡大したものが以下です。
チップサイズは実測で1.2mmx1.0mm、ワイヤ接続部やイメージセンサの画素がはっきり見えます。

17_チップの拡大を拡大表示

写真の左側の正方形に並んでいるのが、マウスの移動を検出する「イメージセンサ」です。
画素数は縦16x横16=256画素、画素ピッチは写真からの換算で約33umです。

上部の「DP」と「DM」に挟まれた部分がブロック図の「USB Mouse Contoller」、イメージセンサの下辺と「VDD5」から「GND」のPADに挟まれた部分が「Voltage Regurator and Power Control」(内部電源の生成ブロック)、右側のごちゃっとした部分が「Digital Signal Processor」を含むその他の「ロジック回路」だと推定できます。

まとめ

マウスのセンサーは、パッケージのカバーを外すだけで半導体チップがむき出しになるので、非常に手軽にきれいな状態で観察することができます。
(通常の黒いパッケージは開封して半導体チップをきれいな状態にするのはかなり難しい)

規則正しく並んだイメージセンサの画素や、ワイヤーが接続された電極(パッド)など、実際に自分の目で見てみると色々と発見があります。

余談ですが、USBマウスを分解すると各種スイッチや4色のリード線(USBケーブル)といった、電子工作に使えそうな部品も色々と手に入りますので、マウスの分解は初めての分解としても個人的にはおすすめです。


次回更新は2週間後の3/15(火)の予定です。

Comment(1)

コメント

100円のマウスにこのようなテクノロジーが!
イメージセンサーなんだ。目から鱗です。
それも、こんなに簡単に確認できるとは。
感動しました。ありがとうございます。

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