街で見かけたガジェットを分解してわかったこと・わからないこと色々レポート

第6回: いい意味で予想外!ダイソーの110円LED電球を分解してみよう

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こんにちは。「100円ショップのガジェット」を中心に電子機器を色々と分解をしているThousanDIYです。
このコラムでは、ガジェットを分解する中での発見や感想をつらつらと書いていきます。


フィラメントを使った白熱電球から、省電力タイプの電球型蛍光灯へ、そしてLED電球へと置き換えが進んでしばらく経ちます。
第6回は、ここ数年一気に低価格化が進んだ「LED電球」について、です。

今回のターゲット

今回のターゲットは、ダイソーで110円という衝撃の価格で販売されている「LED電球(40W型相当)」です。

写真1_パッケージ.jpg

パッケージの定格表示

ルーメン値は480lmm、消費電力は4.5Wと若干高めの印象です。寿命は15000時間(1日8時間使用で約5年)です。

写真2_パッケージ裏面.jpg

PSEマークの確認

LED電球は電気用品安全法の「特定電気用品以外の電気用品」です。「丸形のPSEマーク」に加えて、製造・輸入事業者名と定格電圧・定格消費電力等の表示が必要です。

本製品でも本体にきちんと表示がありました。この辺はダイソーはきちんとしています。

分解してみる

外装の開封

LEDを覆うプラスチック部と、口金がついた部分との間はシリコン系の接着剤で固定されているので、プラスチック部分の根元にカッターを入れて切り離して分解します。

写真5_外装分解.jpg

プリント基板

本体を開封した状態で見える内部のプリント基板の表面に実装されている部品は以下です。

- 7個のLED
- AC電源の全波整流用のブリッジダイオード
- LED駆動用の定電流ドライバIC
- いくつかのコンデンサと抵抗

写真6_PCB表面.jpg

プリント基板を引き出して裏面を確認しました。プリント基板はLEDによる発熱を放熱するためにアルミ基板が使われています。
下半分の口金がついた部分も放熱のためにアルミダイキャスト製です。

電球としての配光を妨害しないように、全波整流用のブロック電解コンデンサは裏面より挿し込み式のコネクタで実装しています。口金からのACラインも裏面からコネクタに挿し込むようになっています。ACライン用のコネクタは周囲が樹脂で囲まれた絶縁タイプのモノが使用されています。

写真7_PCB裏面.jpg

使用されている主な部品

ブロック電解コンデンサ

全波整流用のブロック整流コンデンサは12uF/200Vで、AC100V専用(日本向け)の設計となっています。
使用温度範囲は105℃品で、通常品である85℃品と比べて長寿命のものが使われています。

写真9_ブロック電解コンデンサ.jpg

短絡保護用抵抗

口金から基板に接続されている黒のリード線(ACのホット側)には直列に熱収縮チューブに覆われた抵抗が挿入されています。

写真10_黒リード2.jpg

熱収縮チューブから取出した状態。カラーコードは黄紫銀金(0.47Ω)、基板側の回路が壊れてショートした時にはこの抵抗が溶断して過電流が流れるのを保護するために挿入されています。

写真11_保護抵抗.jpg

ブリッジ整流ダイオード

AC電源(交流)からLEDを光らせるための直流を生成する「全波整流回路」用のブリッジ整流ダイオードです。
マーキングが「FGK LB08K」なので定格は800V/1A、中国では複数の会社から汎用的に流通しているものだと思われます。

写真12_ブリッジ整流ダイオード.jpg

LED駆動用定電流ドライバIC

「全波整流回路」で生成されたDC電圧(約141V)に直列に接続された7個のLEDに流れる電流を一定にして輝度を安定させるための定電流ドライバICです。「9003A H8090」のマーキングに該当するものは見つかりませんでしたが、同等の機能のICはいくつか該当するものがあり、そのうちの一つである「Bright Power Semiconductor Co.」社のBP5131Sというものと機能的にはほぼ同じものだと思われます。


写真13_LEDドライバIC.jpgBPS5131S_BlockDiagram.png

LEDを流れる電流(Iled)は、CSピンの外部に接続された抵抗値(Rcs)で設定できます。

Iled = Vref/Rcs

BP5131Sのデータシートでは Vref = 600mV(typ.)、 基板に実装されている Rcs は 15Ωですので、Iled = 40mAとなります。

本製品の定格消費電力の4.5Wから、AC100Vを全波整流した実効値(110V)として計算するとLEDに流れる電流は約40mAなので、ほぼ一致しています。

LED

LEDはSMD2835(2.8mm x 3.5mm)でVF = 9Vのものです。最大定格電力1.0Wですので定格の36%での使用となっています。

発熱する回路部品は定格の1/3以下で使用することが一般的なディレーティング(許容設計条件)の考え方ですので、アルミ基板で放熱性が良いとはいえ、ギリギリで使用しているようです。

LED.jpg

まとめ

基板パターンのホットーコールド間の絶縁距離もそれなりに確保しており、LEDのパターンも面積を広くとっています。
回路構成も電流駆動であったり保護用の抵抗がACラインに挿入されていたりと、かつての激安品にみられた「ただのLED基板を電球型にいれたもの」ではなく、LED電球としてきちんと設計されています。
回路的には最低限の構成ですが、この価格帯で「ある意味納得できる設計」ができているのは素晴らしいです。

別途、複数の価格帯の日本製品と比較した記事も公開されていますので、興味があれば参考にしてみてください。

「同じLED電球なのに300円と15,000円? 分解してわかった価格差の"裏側"」
https://persol-tech-s.co.jp/i-engineer/product/leddisassembly


次回更新は2週間後の3/29(火)の予定です。

Comment(1)

コメント

Jim

Surprised it is DC drive! Around 40% of the total power dissipation is consumed by the MOSFET of the controller chip. Though reasonable it is only 1.9W.

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