街で見かけたガジェットを分解してわかったこと・わからないこと色々レポート

第31回 激安!「Aliexpressの500円スマートウオッチ」を分解してみよう

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皆さん、こんにちは。「100円ショップのガジェット」を中心に電子機器を色々と分解をしているThousanDIYです。
このコラムでは、これまで分解したガジェットの中で興味深かったものをダイジェストで紹介していきます。


はじめに

思い起こせば昨年(2022年)の夏ごろ、Aliexpressをさまよっていたら500円の「スマートウオッチ」を見つけてポチっていました。そのまま積んでいたのですが部屋の掃除で発掘したので、いまさらながら分解してみました。

​パッケージと製品の仕様を確認してみる

500円スマートウオッチは2023年5月時点でもAliexpressで販売されています。セール中で60%オフとなっていますが、セールが終わっても同じくらいの価格で販売されています。(Aliexpressではよくある)

商品ページ.PNG

製品ページ


到着した製品はきちんと箱に入った状態で(箱の角がつぶれていましたが)届きました。箱には機能がアイコンで書いてあるだけで、具体的な仕様等の記載はありません。

01_パッケージ.jpg

到着した製品パッケージ

パッケージの中には本体とベルト、取扱説明書が入っています。取扱説明書にはアプリのQRコードの記載があります。

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パッケージの中身

本体の外観

本体はプラスチック製です。LCD画面側の表示は円形ではなく四角形、LCD画面はカラーですが輝度は低めで視野角は非常に狭いです。充電は本体から出ているバンド取り付けと共用のUSB電極(VBUS & GND)を直接USB充電器に差し込んで行います。

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充電用USB電極


背面には血流を測定するためのグリーンのLEDがあり、心拍測定中には点滅しています。心拍測定結果には血中酸素飽和度と血圧の測定値も表示されています。ただ、数回測定を繰り返したのですが値はバラついて安定しませんでした。手に付けない状態でも測定値が表示されますので非常に怪しいです。

03_本体の外観_心拍測定の画面.jpg

本体の外観(心拍測定の画面)

説明書のQRコードからGooglePlay経由でスマートフォンアプリ(fitpro)が入手できます。

04_スマートフォンアプリ(fitpro).png

スマートフォンアプリ(fiitpro)

本製品とアプリを接続して、実際に実際に手に付けて近所を歩いてみましたが、歩数は正確に計測できているようです。スマートフォンに近づけたらアプリの方にも歩数が転送されました。

05_歩数計測の結果.jpg

歩数計測の結果

​本体を分解してみる

本体側面にすき間がありますので、カッターの刃を差し込んでこじるとLCD画面側のカバーが外れます。
カバーの下には四角形のLCDパネルがあります。当然ですがLCD表面にはタッチパネルはついていません。

LCDパネルの上にみえる2個の電極はUSB充電端子、下にある1個の電極はタッチ操作用です。

06_開封した本体.jpg

開封した本体

LCDパネルを固定しているクッションテープをはがしてはずすと下にメイン基板が見えます。LDCパネルのフレキケーブルはメイン基板に直接ハンダ付けされています。

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LCDパネルのテープを外した状態

メイン基板はツメで固定されているので、外して引き出します。メイン基板の下にはLiPoバッテリーとバイブレータがテープで固定されています。LiPoバッテリーの下にはセンサ基板がケースの手首にあたる側にテープで固定されています。

08_メイン基板を引き出した状態.jpg

メイン基板を引き出した状態

本体から電子部品一式を取り出して裏表をならべてみました。LiPoバッテリー、バイブレータはリード線がメイン基板に直接ハンダ付けされています。センサー基板のフレキケーブルはコネクタ接続になっています。

09_本体内部から取り出した電子部品.jpg

本体内部から取り出した電子部品

​使用されている部品を確認してみる

メイン基板

メイン基板はガラスエポキシ(FR-4)の両面基板です。

型番「LM716D-MB-V1.1」と基板の製造日「2021/03/30」がシルクで印刷されています。
ほぼ全ての部品は表面に実装されています。裏面にはデバッグ用のランドがあります。
基板形状は長円形でいわゆる「スマートバンド」と共用できる設計になっているようです。

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メイン基板

センサー基板

センサー基板はフレキ基板(FPC)で、部品実装している部分の裏面に透明な保護プレートが貼り付けられています。
実装されているのは緑色のLEDと抵抗のみで、検出用のフォトセンサーはついていません。
心拍数・血中酸素飽和濃度・血圧はLEDを点滅させて測定しているように見せかけているだけで、LCD画面やアプリにはランダムにそれらしく見える値を表示している(フェイク)だけです。

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センサー基板

主要部品の仕様

メインプロセッサ OM6621DQ

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メインプロセッサ

メインプロセッサは北京昂瑞微电子技术股份有限公司(Beijing OnMicro Electronics Co., Ltd. https://www.onmicro.com.cn/)のBLE内蔵SoC「OM6621DQ」です。

データシートは以下より入手できます。

http://rafavi.com/images/chips/datasheet/OM6621Dx_datasheet_V1.3.pdf

Bluetooth Low Energy5.0対応でCPUはARM Coretex-M4(最大64MHz動作)、Deep Sleep時の電力は2.5uAです。
末尾の「DQ」シリアルフラッシュ4MB版でQFB32パッケージとなっています。

以下はデータシート記載の内部ブロック図ですが各種ペリフェラルもあり、かなりちゃんとしたSoCです。

13_OM6621Dxの内部ブロック図.png

OM6621Dxの内部ブロック図(データシートより抜粋)

加速度センサ K5 0V(詳細不明)

14_K50V_IMU.jpg

加速度センサー

「K5 0V」のマーキングの部品は加速度センサーです。マーキングを元に検索したのですが詳細はわかりませんでした。

3.3V LDO XC6206P33xDx

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3.3V LDO

「662K」のマーキングの部品はトレックス・セミコンダクター(https://www.torex.co.jp/)の低ESRコンデンサ対応LDO「XC6206」シリーズです。

データシートは以下より入手できます。

https://product.torexsemi.com/system/files/series/xc6206-j.pdf

データシートのマーキングルールより3.3V品であることがわかりました。

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マーキングルール(データシートより抜粋)

NPNトランジスタ S8050

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NPNトランジスタ

「J3Y」のマーキングの部品は汎用のNPNトランジスタ「S8050」です。同じ型番で複数の会社から販売されています。

データシートはJCET社のものが以下より入手できます。

https://datasheet.lcsc.com/lcsc/1810010611_Changjiang-Electronics-Tech--CJ-S8050_C105433.pdf

リチウムイオンバッテリー充電制御IC 型番不明

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リチウムイオンバッテリー充電制御IC

マーキングのないSOT-23-6パッケージの部品は、基板上の位置よりリチウムイオンバッテリーの充電制御ICだと思われますが、これだけでは型番の手がかりがなく詳細は不明です。

まとめ

販売価格が500円ということで、どこまでちゃんと動くのだろうと思っていましたが、血流を測定するセンサー部分がLEDが光るのみのフェイクで、これはある意味では予想通りでした。

ただ、歩数計測はそれなりにできていますし、スマートフォンのアプリと連携しての時刻合わせやどこにあるかを探すためのバイブレーター動作などはきちんと動作しています。SoCもそれなりのものが搭載されています。

LCD画面が暗く視野角も狭いということもありますが、そういう部分を割り切って「オモチャ」として遊ぶならありかなとも思います。

なお、当然ながら技適マークはついていませんので、使う人の責任で電波が外に出ない環境で使うように注意してください。(ちなみに、筆者は携帯電波も入らない地下の物置でスマホアプリとの接続試験をしました。)


次回更新は2週間後の5/17(水)頃の予定です。

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