ユーザーより1歩先に行くための業務分析ノウハウ ~要求分析(最終)
今回は要求分析の最終回です。
要求分析のアウトプットである要求モデルは、ロジックツリー法を使い、目的/手段の関係で階層化すると便利です。
組み立て方は、上位の3階層ほどを仮にブレークダウンしたあと、KJ法を使用してボトムアップでそこに向かってまとめていくことになります。
その作業の途中に、うまく組み立てられないときに、ロジックツリー法の「WHYツリー」を活用すると、うまく解けていくことをお話しました。
さらに進めると、「対立要求」が表面化します。つまり、ある部署の要求では「在庫を減らす」なのに、別の部署の要求では「在庫を増やす」ということで、相反するような要求内容が登場することになるのです。
なぜこうなるかというと、業務は部署などある範囲で閉じていますが、システム化対象として見ると組織枠を外すことになるので、それぞれの利害関係などが、浮き彫りになるということです。
対立関係には次のような種類があります。
- 両方とも必要であるが背反関係にあるもの
- どちらか一方があればよいもの
- 包含関係にあるもの
- 共通目的を補完し合うもの
競合度の評価は次のような考えで実施します。
1. 背反関係・包含関係にあるもの
<背反関係>
要求モデル上で現す共通手段を検討する。
この段階で、上記要求c,要求fがみつからない場合は、結論を代替案検討に持ち越しても構いません。
2. どちらか一方があればよいもの
両者の特性を比較し、総合的に評価の上、どちらかを選択します。
3. 共通目的を補完し合うもの
共通目的へのそれぞれの貢献度を評価し、どの要求を採用するかを判断します。
各部署より出された要求をうまくまとめることによって、1つの目的に向かって実現手段が並ぶという、理想的な要求モデルになります。
策定の途中で常に意識しないといけないのは、「何のために」という目的視点と、その目的に合わない要求は範囲外として明きらかにすることです。
外された要求を、その理由とともに該当部署にフィードバックすることの重要さは、言うまでもありません。
●評価基準の設定
要求モデルができれば、次にシステム活用時に評価する基準を決めておく必要があります。
要求分析の最後でこれをまとめることはセオリーとして守りたいものです。
システムが出来上がってから評価基準を作るのは、後出しジャンケンと同じです。このタイミングで、構築したシステムの価値について、何を評価するかを明確にしておくことが肝要です。
評価基準体系は、次の条件を守る必要があります。
- 評価要因のもれがない
- 確実に関連がある
- 測定可能である
- 重複は最小である
また、基準体系例としては次のようなものが挙げられます。
1.プロジェクト特性をベースにしたもの
- ユーザの満足度
- 要求達成率
- アプリケーションのポテンシャル
- 開発コスト
- 運用コスト
- コスト発生時期
- 効果発生時間
- 開発期間
- 実施時期
- 必要要因
- 成功の確率
- 予算達成の確率
- 必要新機器
- 機能の優先順位
2.経済的基準をベースにしたもの
3.企業経営効率をベースにしたもの
これらの基準は、システム提案のときにも内容のチェック項目として利用することができます。顧客のRFPにマッチした提案にするための指標とするのです。
次回は機能分析に入っていきます。
コメント
ビガー
ビガーです。
部署間の確執のような「壁」は、厄介ですよね。論理的に説明するだけでは、なかなか納得してもらえないこともあると思います。そのあたりは、信頼関係の構築とかになっちゃうんでしょうけど。。個人的にはメンドイです^^;
高橋秀典
ビガーさん、
高橋です。コメントありがとうございます。
要求分析のセッションにユーザー部門の方々が出てくれるのは、利害関係が顕著になり大変ですが、成功パターンのシナリオにのせるにはいい形だと思います。
一番あとあと問題になるのは、情報システム部門が完全に間に入って、直接ユーザー部門と話させないという状況の場合だと思います。
以前も書きましたが、自分たちの存在価値に影響するので、必ず間に入って伝言ゲームを演出するのです。
自分たちに不都合なことになってくると、ユーザー部門と話すときは、ITベンダやSIerのせいにし、逆の場合はユーザー部門のせいにする傾向があります。
こんな時は何とか直接ユーザー部門と話せるように、色々と策略を練ることになりますが、言われるように面倒ですね。時間がもったいないです。
コンサルは個人が選択されるものという考えで、昔は信頼関係を一番の武器にしていましたが、最近はどうも勝手が違うようです。
役割が限定されていて、すべてを見れる人がいなくなったからか・・・、何か狭い中で変なプライドやプロフェッショナル意識を強く持ちすぎているようで・・・、感じませんか?