突き抜けていくITエンジニアとは? ~ITプロフェッショナルの道を究めんとする人へのアドバイス
中堅と呼ばれる年齢までキャリアを重ねてきたエンジニアの中には、今後も1人のプロフェッショナルとして道を究めていこうと決意を固めている方もおられるでしょう。ただし、常に人から頼られ、必要とされるエンジニアであり続けるのは、簡単なことではありません。では今後、「ITエンジニアとしてさらに突き抜けていく」ためには、どう努力すればいいのでしょうか。成功する人は、どこが違うのでしょうか?
■最近のエンジニアは技術力が低下?
今日のITエンジニアの状況をとらえると、一口にITエンジニアと言っても、いろいろな立場の方がいるでしょうが、総じて感じるのは、「以前と比べて技術力が落ちた」ということです。具体的に言うと、技術の基礎となるアーキテクチャの理解不足が目立ちます。その結果、応用力が不足し、ある特定の技術/製品には詳しいけれど、それ以外の仕事はできないという人が増えているように思います。
そうしたエンジニアは、活躍の場が限定されてしまいます。エンジニアを使う側からすれば、ある局面で、ある部分に関する能力を提供してくれさえすれば事足りるわけですから、下手をすると"使い捨て"にされてしまうのです。
技術力低下の理由としては、組織の縦割り化が進んだ、扱う製品の数が増えた、また技術の発展速度が速まったなど、原因はいろいろと考えられます。いずれにせよ、一定範囲のことをキャッチアップするのに精一杯で、アーキテクチャの基礎をじっくりと学んだり、研究したりする余裕も時間もないと思われます。
■必要とされるためには、基礎をしっかりと身に付ける
広く、そして長く必要とされるエンジニアになるためには、やはり基礎の部分からしっかりとした知識を付けなければいけません。完成した技術や製品の使い方を知っているだけではダメです。例えば、リレーショナルデータベースなら、どういったアーキテクチャに基づき、これまでどのような経緯で発展してきたのかといったことを知らなければ、データベース・エンジニアとして長く生き残ることはできないでしょう。E.F.コッドの関係モデルに関する理論などは必修です。パラレル機能などのオプションの機能は年を追うごとに増えていますが、RDBの根幹の部分は何十年もの間、何も変わっていません。その部分に関する知識をしっかりと身に付けることが大切なのです。
■会社の外に出て、自らの可能性を広げる
近年は、ITSSやUISSのようなスキル標準を導入し、エンジニアのキャリア・プランの設計を支援する企業が増えてきました。ITSSやUISSではなくても、独自の専門職制度を設けている企業は、実は多く存在します。しかし、組織/業務の実態と合っていなかったり、うまく機能していなかったりといったケースが多いという現状です。それに、「あの部署の、あの仕事がしたい」と思っても、簡単に部署異動できるような会社はあまり多くありません。
そもそも、会社としては、一度何かの仕事で良い成果を出した人には、その後も、その仕事を頼み続けたいものです。その人に頼めば、うまくやってくれることがわかっているわけですから当然です。一方、本人の側も、それを仕方ないと思ってやり続けていると、段々と別のことをやるのが怖くなってきてしまう、できなくなってしまう。これをキャリア・パスの視点で見ると、「短い距離をまっすぐ上って終わり」というかたちになってしまいます。
では、まっすぐ上って終わりになるのではなく、横に、あるいは斜めにキャリア・パスをつなげていくために、個人でどう努力すればいいのか?
今、所属している組織の中だけでこの問題を解決しようとしても、選択肢は非常に限られてくるでしょう。では、選択肢を増やすにはどうしたらよいか? 自ら組織の外に出て行くことです。有志による勉強会や公的機関などがやっている研究会などの活動に参加し、視野を広げ、新たなキャリア・パスを見つけるよう努力することが大切です。単にセミナーに出て誰かの話を聞くだけでは足りません。自分の考えを基にディスカッションしたり、何らかの成果物を出したりするような活動に参加しないと、なかなか視野は広がりません。
もちろん、普段は仕事があるので、こうした活動は定時後や休日などに行うことになります。結局、そうした時間を割いてまで自分の視野/可能性を広げたいという人が、一段も二段も突き抜けていくことになります。それに、外の世界を見ることで、自分が居る組織の良さや、自分が担当している仕事の良さに気づくこともあります。
また「外の世界を見よう」と言うと、いきなり会社を辞めてしまう人がいますが、それは違います。確かに、会社を辞めることも、いずれは手段の1つになるかもしれませんが、その前に大切なのは、まず外の世界を知ることです。外の世界を見て視野を広げ、新たなキャリア・パスを模索し、そのうえで必要なら会社を変えるというステップになるはずです。
■「相手が何を求めているのか」を考えて行動する
ここまでは技術スキルに関する話題が主でしたが、それとは違った視点で、もう1つ重要なことは、「相手が何を期待しているのかをつかみ、それに応えるよう努力する」ことです。
技術力が高くて尖ったエンジニアというのは、往々にして我が強いものです。そのこと自体は問題ないのですが、そうしたエンジニアにもぜひ心掛けてほしいのは、自分が相手から何を期待されているのかを常に考え、その期待に応えるよう努力することです。
相手の期待に応えるには、もしかしたら新機能は必要なくて、昔ながらの枯れた技術を使えば済むかもしれません。無数の選択肢の中から相手の期待に応える方法を見つけるのは大変ですが、それができるようになると、「この仕事はAさんにお願いしたい。Aさんが必要だと考える技術/製品/機能を導入したい」と頼られるようになります。これこそ、突き抜けたエンジニアです。ITプロフェッショナルたるもの、いずれはこうなりたいものです。
相手との間で、「その製品/機能を使えるからAさんに頼む」というのではなく、「Aさんが勧めるから、その製品/機能を入れる」という関係を築くということです。ぜひそうした立ち位置を目指していただきたいと思います。