エンジニアとしてどうあればいいのか、企業の期待とどう折り合いをつけるのか、激しく変化する環境下で生き抜くための考え方

ユーザーより1歩先に行くための業務分析ノウハウ ~ユーザーをリードするためのモデル化の手法

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 要求分析について話を進めていきます。

 先回は、システム要求をまとめていく最初のステップとして、関係部門から要求を一件一葉の形で抽出し、精査していくことを説明しました(○○を○○する、という要求表現)。

 各部門の方々は、自部門での業務はよく理解していますが、インプットされる情報やアウトプットされてからの情報について、どのようなプロセスで扱われて、どう形を変えていくかは、あまりご存知ないのが一般的です。

 従って、極端な表現をすると「自分さえよければいい」的なシステム要求になりがちです。

 これらを是正し、共通認識を持ってもらい、さらに前向きな要求にしていくために、関与者利害管理表を使います。

 他部門でどのようなことを課題としているか、自部門からの要求が他部門に与える影響は……、などといったいいシステムを構築するためには欠かせない共通認識や全体観をイメージできるいい機会となります。

■要求モデルの構築

 対象領域での要求がある程度出た時点で、ロジックツリー法を活用して要求モデルを構築していきます。ロジックツリー法の中の1つで、要求を「目的-手段」の関係で階層化していく考え方です。

Objective_how

 次の図は、一件一葉で記述された要求を階層化した簡単な例です。

 Objective_tree

 残念ながら先日お亡くなりになった川喜多二郎先生の「KJ法」を使い、次の図のように同じ目的のものをグループ化し表札を付ける、今度はその表札を同じ目的のものでグループ化し、表札を付ける。この作業を繰り返して階層化するのが、ボトムアップ手法です。

Kj_method

 ただし、この手法だけだと、上位に向かって拡散していく傾向があるので、トップダウン手法と併用してまとめていきます。

 最上位は、新システムを構築する一番の目的になります。その下位はそのための手段、今度はその手段を目的と読み替えて手段を見出す。これがトップダウンの考え方です。

 上から2、3階層目くらいまでは、新システム構築の目的を把握できていれば展開することが可能です。

 そうしておくと、ボトムアップで積み上げるときに目指すべき位置が見えやすくなります。それらがうまくつながらないときは、どこかか矛盾しているということなので、見直しをすればいいのです。

 こうしてボトムアップとトップダウンを併用しながら要求モデルとして組み立てていきます。

■WHYツリーの活用

 そうはいっても、うまく展開できない場合に必ず遭遇することになります。

 例えば先の要求モデルの中で、「部品表を起こす工数の削減」とありますが、そのためになにをすればいいか分からない、といったようなケースです。

 こういう場合は、ロジックツリー法で原因解析すると分かりやすく解けます。一般的に「WHYツリー」と呼ばれていますが、次の図のように結果から原因を導き出していくのです。

Why_tree

 次の図は、結果から原因を突き止めるために展開した例ですが、問題を解決するにはツリーの右端に登場した6つの原因を解消しなければなりません。

 その原因を要求表現に変換したものが、一番右側に記載されています。

Why_tree2

 原因を解消する解決策で無いと、いいシステムを構築するためのシステム要求にはなりえません。原因を突き止めることができれば、それを要求モデルに追加していくと、うまく目的-手段で展開されたものができます。

Why_tree_add_2

 WHYツリーはシンプルで使いやすい方法でありながら、なかなかの説得力を持ちます。いろいろな局面で使えますので、ぜひ使いこなしてください。

Comment(2)

コメント

guuguu

いつも勉強させていただいております。
guuguu と申します。

正直申しますと、
早く次が読みたいです。

また自分自身を振り返ると、
要件定義はいつも不安で、
このコラムを読み、基礎固めが必要と認識しました。

自分でも書籍を探しておりますが・・・・
期待しております。

こんなに良いコラムなのにコメントがないので、
野次馬根性で参加しております。

高橋秀典

guuguuさん、

 コメントありがとうございます。
また、いつもご覧頂いて感謝いたします。

 少しコラム執筆に間が空いてしまっていますが、何とか今週末にはアップしたいと考えています。

 私のコラムは、どちらかと言うと読み物的な一方通行型なので、コメントがあまりなくても気にしていません。
 また、数名の熱心な方々からは、定期的にコメントをいただいていますので、満足しています。

 とは言ってもguuguuさんのように思いがけないコメントをいただくと、うれしくなります。
 私の手法は理論ではなく、実践的なものですので、現場で参考にしていただけると思います。

 ご期待にこたえることができるよう踏ん張ります。

高橋秀典

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