「生活イチバン、ITニバン」という視点で、自分なりのITを追及するフリーエンジニアです。ストレスを減らすIT、心身ともにラクチンにしてくれるITとはどんなものかを考えていきます。

さよなら、神様

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 日本は八百万の神々が住まい給う国だ。中でも今いちばん元気な神様は、間違いなく「お客様」という神様だろう。この神様は、いわゆる「荒ぶる神様」の部類に入る。

 我々はお客様のご機嫌を損ねないように、朝から晩まで馬車馬のように働き続けているのだ。

■古き良き静寂の年末年始

今年もいよいよ大晦日となってしまった。

 私が子どもの頃を振り返ってみると、正月はほとんどすべての店は閉まっていた。初詣客を見込んで、神社仏閣の周辺店舗はやっていたが、それ以外の一般的な商店はスーパーやデパートも含めてすべて閉まっていたものだ。

 そして我々はそれが普通のことで、特別不自由と感じることもなかった。むしろそのいつもと違う不自由な日への備えや、静寂に包まれた街並みが楽しかったりしたものだ。

 ところが、今では年中無休のコンビニだけではなく、スーパーなども元旦から店を開けている。特別感は薄まり、不自由さを楽しむこともできなくなった。

 このように、お客様が望む前に、企業は先回りして新たなサービスを展開する。そしてそれが成功すると、お客様の潜在的なニーズを掘り起こしました、などと得意げに自慢する。

■日本人は裸の王様

 そんな甘やかしの数々が、この国のお客様を勘違いさせている。神様、というよりも、王侯貴族なみの扱いを受けるのが当然という感覚を植え付けられているのかも知れない。

 そのようなわけで、資産的には潤っていない人も含めて、精神的には、すでに日本国民は一億総神様、一億総王侯貴族化している。

 クレーマーもモンスターペアレンツもブラック企業も、すべての元凶を辿ればこのような過剰な「お客様意識」に行き着くのではないだろうか。

■お客様は神様ではない

 もちろん、お客様は大切にしなければならない。わたしは、それを否定しようとしているわけではない。しかし、お客様は決して神様ではない。対等な立場のパートナーなのだ。

 三波春夫氏が「お客様は神様」と言ったのは、芸能がもともと神に奉納するものだったことに由来する。それに対して商売は、もともと人と人との間で行われて来た。売り手と買い手が対等な立場でなければ、win-winな関係など決っして結ぶことはできない。

 わたしは以前、ここでこんなコラムを書いた。しかし、今は神という言葉を使ったのはふさわしくなかったと考えている。

 今の我々に必要なのは、お客様に、神様の座から降りていただくことだ。

 あなたも、そろそろ神様にさよならをしてみないか?

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