人間不在システム考
昨日、家に帰ると留守電の再生ボタンが点灯していることに気がついた。よくある日常の一コマだ。半ば自動的に再生ボタンを押す。
すると、相手は音声ガイドでアンケートと思われる質問を一方的にしゃべり始めた。
■自動音声セールスに効果はあるのだろうか?
なるほど、これがそうか。最近は多いらしいが、実際にウチに来たのは初めてだ。最後まで答えていくと「お礼に粗品を送るから」といって、住所と名前を要求するパターンだろう。
これが留守電ではなく、受話器をとったら音声ガイドが流れてきた、という状況を想像してみる。おそらく、わたしは間違いなくその場で切ってしまうだろう。
それにしても、留守だと告げる音声ガイドを無視して、一方的にアンケートの質問を始める音声ガイド。そんなところでデジタル漫才を始めないで欲しいものだ。そのうち、音声ガイド同士でコンビを組んだ漫才師が吉本興業あたりからデビューするのではないだろうか。
■まさに人間不在システム
ネットで色々と検索してみると、このような音声ガイドを使ったセールスやアンケートについては、意見が2つに分かれていた。一方は「自分から呼び出しておいて、音声ガイドとはなにごとだ!不愉快だ!!」という意見。そしてもう一方は、「相手が人間じゃないから気が楽。」
まぁ、どちらにも共通しているのは「答えずに切る」という点だが。
このシステムは、オペレーターを何人も雇って電話を掛け続けることを不要にする点でも人間不在だが、電話を受ける側の気持ちを考えていないという点でも人間不在なシステムといえるだろう。
しかし、中にはこの手口に引っかかってしまう人もいるようで、福岡県消費生活センターに『自動音声電話のアンケートに答えたら-投資目的の勧誘電話が!』といった事例が紹介されていたりもする。
掛かってくる時間帯から考えて、やはりターゲットはお年寄りや主婦とみて間違いないだろう。気をつけてもらいたいものだ。
■人間不在の世界を作るのは、人間
わたしがこの音声ガイド同士のやりとりを聞いて真っ先に思い浮かべたのは、IoT(モノのインターネット)の中で、なんというか、擬人化されたモノ同士が一生懸命コミュニケーションをとろうとしている姿だ。もう、人間なんて完全に置き去りで、モノ同士で完結された世界。
実は、わたしはもう少し音声認識と音声合成の精度が向上してきたら、セールス電話に対して、のらりくらりと受け答えをするイヤがらせシステムを作ったら面白いと思っているのだけれど、ひょっとしたら、イヤがらせをしているつもりの相手もシステム化されている、ということもあるわけだ(*1)。
このようにして、人間の与り知らぬところで通信回線とコストだけを浪費する不毛なコミュニケーションが繰り広げられる日も近いのであった。
違う違う。人間の与り知らぬところ、ではない。すべては人間の指示通りに動いているのだ。この不毛な世界は、我々自身が築き上げているのだ。
(*1)もっとも、音声認識や音声合成の精度が向上しても、意味を正しく理解できるかどうかは別の話だ。そのあたりはabekkanさんの『私は友達とケーキを食べた-コンピュータは誤解する』をどうぞ。)
コメント
仲澤@失業者
タチコマ同士の会話がまさにこれかも(ただし面白いので許す。アニメだし)。
もっとも、こいつらは人の許しもなしに自己判断で武器まで使いますが・・・。
一方、スパムメールなんかは既に問題になっているような気もします。
1.サーバーに積まれたメールのほとんどがスパム。
2.通信回線のトラフィックの大半がスパム。
3.私の晩飯のおかずもスパム(減塩タイプ)。
などなど(笑)。
さて、電話勧誘は昔からありましたが、
不動産や投資融資に関しては現行法では確か違法なはず。
んで、こういった手順になるのかもしれません。
まぁ、あれでご飯を食べている人がいるのかと思うと、
むしろややブルーになるんですけどね。
abekkan
私の家にFaxが無かったころ、ときどき
ピー、ピピピピー
というFax音が電話にかかってきました。切ってもリトライしてくる。
ムカついたものでした。
自動音声のアンケートもかかってきたらムカつきそうですね。
しかし留守電に気づかないとは賢くないな!
コンピュータが誤解する話、読んでみます。
と思ったら私のコラムでした(笑)。
Umi
故星新一氏の著作にすでにそういう世界が書かれてありました。シチュエーションや仕組みは全く違いますが。思い出しました。
onoT
>仲澤さん
確かに、タチコマはまさにそれですね。武装ロボットにあまり自由に行動されると怖いです。
>abekkanさん
そういえば、Fax音はわたしも何度も経験しました。あれもイヤでしたね。
>Umiさん
なるほど、星新一氏ですか。読んでみたいですけど、彼の膨大なショートショートの中からその作品を見つけるのは大変そうですね。