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私は友達とケーキを食べた-コンピュータは誤解する

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 「友達を食べるわけないだろ」

 先週、日本プロジェクトマネジメント協会(PMAJ)が主催する年間で最大のイベント、PMシンポジウム2014に行ってきた。そこで聴いた講演について書いてみる。

■システム開発の実習

 東京都市大学(旧武蔵工業大学)の大谷紀子教授による「人工知能の研究とシステム構築」という講演を聴いた。

 大谷研究室では毎年、学内で使うシステムの開発を3年生が行うことになっている。システムを4つのモジュールに分けてそれぞれを3、4人が作りコンペで勝ったモジュールが採用される。勝った人はモジュールの結合検査を行い、負けた人はマニュアル作成などの作業を行う。このやり方でいままでいくつもの大学内のシステムを作ってきて役に立っている。

 このシステム開発では、学生にユーザと直接話をさせている。ユーザと言っても学内の他の先生や事務員や学生だろうが。ユーザの話を直接聞くことにより、顧客がいかにわがままかを学ばせている。さらに、コンピュータに無知な人にどう説明すればいいか、まで体験させているという。

 学生のうちにここまでやらせているとはなかなかやるな。下手な新人教育よりもよっぽどためになる。気の利かないウチの若手と交換したい、と思う人もいるのではないだろうか。東京都市大の大谷研はあなどれないゾ。

■コンピュータが苦手なこと

 「私は友達とケーキを食べた」「ボクはウナギ」

 こんな簡単な人間ならあたりまえに分かる分かる会話でも、コンピュータは理解できない。

 「私ハ友達ヲ食べ、ケーキモ食ベタ」「私ハ(人間デハナクテ)ウナギ デアル」

 と誤解してしまう。人間は常識を通して理解するがコンピュータには人間の常識はない。コンピュータと人間とでは、得意、不得意なことが違う。それを理解することから人工知能の研究が始まる。という話を聞いた。

■人間の脳ってやるなあ

 そう考えると、人間の脳ってすごいと思う。さらに私がすごい思ったのは、その会話のシチュエーションによって意味が違うことがあり、人はそれを感知できることだ。

 「私は友達とケーキを食べた」 と言ったのが「進撃の巨人」のエレンだったら、「ついに友達を食べちゃったか!」 と解釈する。

 「ボクはウナギ」 と言ったのが「サザエさん」 の夫のマスオさんの同僚だったら、「ウナギさんって名前か。アナゴさんの後輩かな」 と解釈する。

 コンピュータにはここまではできない。コンピュータのスピードと記憶量はすごい。人工知能もどんどん賢くなってきている。でも、人間の脳も意外とすごいんだなあ、まだまだコンピュータには負けていない。と 改めて感じた。がんばれ、人間!

 ところで、サザエさんにはウナギさんは登場しない。その理由をご存じだろうか? どうしても知りたくなった方はこちら

 abekkanでした。

Comment(6)

コメント

仲澤@失業者

ちょっと記憶が「あれ」なのですが、
たしか技術評論社のプログラマーズシグマという雑誌(4号くらいで廃刊)に
似たようなことが書いてあったような気がします。
1987年ごろの話なので27年前ですね。

このときは「ぼくはたぬきだ」だったような。

1.たぬき蕎麦またはうどんの注文
2.本人が実は狸であることを告白
3.本人はややずるい性格であることを表現
などなど・・・

ってか、笑っちゃうくらい進歩が「あれ」ですね(笑)。

abekkan

>仲澤@失業者さん

いつもコメントをありがとうございます。

27年前の雑誌をよく覚えていますね!
「ぼくはたぬき」「私はきつね」という会話は私も見たことがあります。まあ、誰でも思いつきそうなネタですから(笑)。

ふるさん

話がそれますが、言語学の例でも昔からあったように思います。
「僕はハンバーガー。」は「I'm the hamburger.」じゃないよね、という話だった様な。
結局のところ、自動翻訳ってコンテキストの解析が重要なのですね。

空気を読まずにコメントします。
・その「は」は主語を確定する助詞であるという思い込みをコンピュータに強いていないか?
・そもそも、品質の保証されていない生の会話文を甘く見ていないか?これは文章スキルの不足気味のエンジニアの報告文にもあてはまる。自己顕示欲の強いことを有権者に絶えず主張しないと落選する国会議員の質疑答弁でも「わたしは」「わたしが」が単なる調子を整えるためで情報量ゼロということを思い返してみた。大臣・副大臣でない官僚諸氏はそうしないことを思い出すだけでも十分。
・「ぼくは」を除去した文と情報内容を比較してみるのもいいかもしれない。国語の分野で「頭がなくても意味が通じる文」というトピックがあるし。この頭を主語だと決め付けると落とし穴にハマる。

abekkan

> ふるさん さん

コメントありがとうございます。
人は文法的に正確でない文章も理解できますが、それを人工頭脳にやらせるのがたいへんなのでしょう。それができるようになったら、人間の職がまた減ってしまうんでしょうね。

abekkan

> nsh1960 さん

議員の答弁はたしかに自己顕示のみの発言はありますね!

ところで、幼児用の教材を思い出しました。
おかし、ぎゅうにゅう、シャツ
のむ、たべる、きる
などのカートがあって、合うものをつなげる。
おかしは食べ物でシャツは衣類、という幼児教育から始めれば、人工頭脳も品質が保証されていない会話も理解できるようになるかもしれません。(^^)

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