「ググるな危険」を読み解く
本音が語れるエンジニア参加型メディア「@IT自分戦略研究所 エンジニアライフ」。日々、ITエンジニアの「生の声」を公開している。
ここでは、編集部の独断と偏愛によって選んだコラムをテーマ別に紹介していく。初回はさまざまな議論を呼んだ「ググるな危険」。同コラムから生まれた「スピンオフコラム」も一緒に紹介する。
2つの主張があった「ググるな危険」
『プログラマで、生きている』のひでみ氏が書いた「ググるな危険」には、大きく分けて2つの軸があった。1つが「プログラマとしてのコードの書き方」、もう1つが「新人教育」だ。
まずは、「プログラマとしてのコードの書き方」から見ていこう。ひでみ氏は、「自分で説明できないコードを1行たりとも書くな!」と主張している。
プログラムを書くための情報収集は、どんな方法でもいい。先輩に聞く、本を読む、検索エンジンを使うなど。コピペも悪いわけではない。しかし、どんな方法で作ったコードであれ、最終的に自分が理解して「なぜこのように書いたのか」を説明できなければいけない、とひでみ氏は主張している。この主張には、多くの読者が共感したことと思う。
一方で、「新人教育問題」の方はさまざまな議論を呼んだ。検索してばかりで、一向に質問してこない新人に業を煮やしたひでみ氏は、「ググるの禁止!」令を出した。できあがったコードは中途半端な知識の寄せ集めで、どう見ても新人は自身が作ったコードの中身を理解しているとは思えなかったからだという。
「検索エンジンを使うのは悪いことではない」とひでみ氏は前置きしたうえで、「理解できないコードを簡単に見つけることができてしまう」検索エンジンの使い方に警鐘を鳴らしている。新人は、検索エンジンを使いこなすのではなく、検索エンジンに振り回されてしまっていた。
新人で右も左も分からないうちは、きちんと知っている人に質問するべきではないのか。これがひでみ氏の主張だった。
質問できない新人と質問されない上司、どちらが悪いのか?
「ググるな危険」に対するコメント欄での意見は二分した。1つは「分からないなら質問すべき。質問できない新人が悪い」という意見。もう1つは「部下を見るのも上司の仕事。質問できないような雰囲気を作っている上司が悪い」という意見である。
『ベンチャー社長で技術者で』の生島勘富氏は、「質問できない雰囲気を作る上司が悪い」という意見を「甘えている」と一蹴した。「会社と学校は違う。学生は教えてもらうのが仕事だが、新人はできないことができるようになるのが仕事。どんどん質問していくべき」と、生島氏は主張した。
「空気を読まない質問をして、笑われたり怒られたりするのも新人の仕事のうち」と生島氏はアドバイスする。注意しなければいけないのはただ1点、「同じ 質問を何度もしない」ということだけだ。どんどん質問して、自分で情報収集をして、先輩や上司が身に付けている「常識」を覚えていってほしい、と生島氏は 語っている。
新人には「質問できる人」「できない人」の2タイプがいる
とはいえ、「質問するのが怖い」と考える人は少なからずいるだろう。「質問できる人」と「質問できない人」の意識について、生島氏は「ググるな! タイプ」と「ググれよ! タイプ」に分類した。
- 「ググるな! タイプ」……知的好奇心が弱い。「知りたい!」という気持ちよりも「怒られたらどうしよう」「聞くのはプライドが……」という気持ちが先に立つ
- 「ググれよ! タイプ」……知的好奇心が旺盛。「忙しそうな上司の都合・話しかけにくい雰囲気」という気持ちよりも「とにかく知りたい」という気持ちが先に立つ
知的好奇心が強いタイプには、どんどん検索させて知識を収集してもらう。一方で、知的好奇心が弱いタイプには、検索エンジンの使用を禁止して、ある程度上司が「これをやりなさい」とプッシュして知識をつけさせる必要がある、と生島氏は分析している。
新人と上司、どちらかが悪いわけではない
「新人と上司、どちらが悪いのか?」という議論について、「どちらか一方が悪いわけではないのでは」と提唱したのが、『恋愛感情で仕事はできるか?』の森姫氏だ。
森姫氏は、「今は質問タイム! な空気を作れない人が悪い」という意見である。つまり、上司と新人どちらかが悪いのではなく、「質問できる時間」を作ることができないのが問題である、というのである。
上司は「いまちょっと手が離せないから、あと30分したらまた来てね」、新人は「いま、○○について勉強していて、分からないところがあります。お時間のあるときに来てもいいですか?」といえばよいのではないだろうか。質問したらすぐに答えなければならない必要はない。それぞれの都合を考慮しながら、両者が歩み寄れる時間を提案すればよいのである。
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コメント
しっぱ
こんにちは。しっぱと申します。
この話は盛り上がりましたね。
個人的にはどっちも悪いってのが私の思いであったりします。
会社の方針によっても様々だと思いますが、自分の仕事だけしていればいいという考えが根本にあるのかなと思います。
上司が常に「忙しい」って言葉を連発したり、愚痴ばっかり言ってたら質問しようにも出来ません。
逆にそのタイミングでも常にそういった状況ではないでしょうから、上司の手の空きそうな時間やメールなどで「お手すきの際に」ってことで聞くことも出来ます。
ですが、基本的に業務をこなすだけが仕事ではなく、先輩社員は後輩指導も仕事のうちですので聞ける雰囲気を作るのは上司としての業務であり、それをしないのは業務放棄と同じと私がPMであれば判断します。
最近の新人さんは情報をいつでも調べられる故に暴走しすぎなのも問題です。
自分お作ったものに対して責任を持つことは最低限の社会人としての常識です。
わからないけど動いちゃったからいいや
で終わらせることはその部分を放棄していますので、これも職務放棄と同等ですね。
一歩譲り合うことでこういった問題って解決できたりするんではないかと思います。
上司も新人も頭が固すぎるように思います。
一連の皆様の意見は非常に感慨深く見守らせていただきました。
私自身、質問され安い雰囲気を作りながら、わからなければ手低的に検証し、それでもダメなら聞くべき方にしっかり解説をしていただくことを今後忘れずにいきたいと思いました。
こんにちは。編集部の金武です。
コメントありがとうございます。お返事遅くなってしまって申し訳ありません。
この話題は、教育する立場の方・新人の方両方にいろいろ考えるきっかけを与えたコラムだと思います。
>「迷子になったらいつでも助けてやるよ~。でも、SOSは自分で出さないとダメだよ~」ってだけのことなんです。
とひでみさんが本家コラムでおっしゃっていますが、どちらが良い悪いという問題ではなく、お互いにコミュニケーションする意欲(ときっかけ?)があれば、やがて皆ハッピーになるなのではないでしょうか。
わたしも非常に考えさせられたコラムですので、独断と偏愛によって取り上げました。