コラム「ハケンの品格」
◆品格のお話の前に退職の報告
2カ月ぶりとなってしまいました。森姫です。
現在、徳島のスタバでコラムを書いています。徳島駅前のスタバは電源が取れるのでゆっくり書けそうです。
今月のお題は「○○の品格」ということですが、そのお題で書く前に書いておきたい私事を。
10月某日で退職しました。
ここで2カ月コラムを書いていなかった言い訳をすると、退職関係で仕事がごたごたしていたということです。
これまでの会社はわりとすんなり辞めてきたのですが、今回はけっこう長く(とはいっても3年)いた関係で引継ぎ資料が膨大でした。
いつぞや「仕事は1人でかかえこむな!」と書いた気がしますが、自分こそためこんでいたなぁ……と思って、膨大な資料をさばきながらため息です。
最終日は送別会を開いていただき、いろいろな方から花束を贈呈されて恐縮でした。
◆お題:○○の品格の前に
さて、今月のお題に戻りまして「○○の品格」です。○○に言葉を当てはめる前にまずは「品格」という言葉について、ちょっと考えてみたいと思います。
「品格」という言葉の意味を調べていると「気高さ」という言葉に行き当たります。
では「気高さ」とは何かということを調べると「品格」という言葉に行き当たります。
これ以上の言葉が出てこないので、勝手に意味を想像することにします。
「品格とは気高さを持つこと」ではないでしょうか。
気高さとは、気を高く持つこと。手っ取り早く言えば、上品であることだと。
◆一昔前に放送された「品格」ドラマ
さて、「品格」という言葉を意味づけたところで、次は○○に当てはめる言葉を考えます。
わたしの世代だと、この「品格」という言葉が流行ったときに出てきた「ハケンの品格」を思い浮かべます。
「ハケンの品格」というのはドラマのタイトルです。
ストーリーとしてはスーパーハケン社員の主人公が派遣先でその力を発揮するというものだったと思います。
主人公はロシア語がしゃべることができたり、マグロの解体が行えたりするほどの力の持ち主で、さすがにそのあたりは「ドラマ」だな……と思いました。
もちろん、わたしはロシア語はしゃべれないし、マグロの解体もできません。それどころか魚を三枚におろすこともできませんが(苦笑)。
◆ドラマではなく、コラムでの「ハケンの品格」
そんな言葉が浮かんだので「ハケンの品格」についてドラマではなく、コラムを書いていきたいと思います。
先述したとおり、わたしは退職したので「元ハケン」なのですが……。さらにいうと、純粋な「ハケン社員」ではなく「特定ハケン社員」という立場なので多少は違ってくるのです。
まぁ、社員さんからは「ハケンさん」として扱われるのでその微妙なところは本人が気にするかしないか、なのですけど。
「ハケン」の仕事へのかかわり方というのは大変難しく、時が経つにつれ「気を高く持つ」ということができなくなります。
それはなぜかというと、「ある日社員さんとの決定的な違い」を体感してしまうからです。
最初はがむしゃらに働いて、仕事を覚えることに夢中になるためその「社員さんとの違い」に気がつくことはないのですが、仕事を覚え、要するに「現場慣れ」をして余裕がでてきたころに「社員とハケンの壁」を知ることになります。
「ハケン」の身では一定以上の責任のある仕事はさせてもらえません。
分かりやすい例としては「予算」や「人事」が絡む会議には参加できないことです。
ある程度仕事を覚えてきたら、やはり上流のことを話し合う会議に参加したくなります。
しかし、「あなたは社員じゃないから」という一言で終わってしまいます。
つまり、一定以上の仕事はさせてもらえないのです。
「上に行きたいけど、行けない」という現実を知って、愕然としてしまい気を落としてしまう。
仕事の内容はもう覚えてしまっているわけなので、現状の仕事に不満がでてくる。
そしてモチベーションの低下。毎日同じことの繰り返し。「気を高く持つ」前に「気が低くなってしまう」のです。
では、この壁にぶちあたった後に、「気を高く持つ」にはどうすればいいのか。
方法としては2つあると、わたしは考えます。
◆ハケンの品格を上げるため、ハケンをやめる
これは一番簡単で素直なステップアップです。社員以上のことができないのであれば、社員になればいいのです。
なにも「ハケン」にこだわる必要はありません。「ハケン」で培った能力を業務経歴書にしっかりと書いて転職活動すれば社員になることはできます。
ただし、会社や業界を選んでいるとこのご時勢なのでとても難しくはなってしまいますが。
「社員になって、権限を持ちたい」と思ったら、もう社員になるしか選択肢はないのです。
とはいえ、社員になってからも数年は権限をもらえないためここでも地味な努力が必要になってくるのですが。
いままで長く「ハケン」をやってきた人なら耐えられる年数であると思います。
「社員」になったら次に考えるのは「社員の品格」であるので、このコラムでこれ以上の言及は避けます。
◆ハケンの品格を上げるため、自分の仕事内容に「誇り」を持つ
言ってしまえば、これこそが「ハケンの品格」となります。
自分が行っている仕事に「誇り」を持つと、急に気が高くなります。
たとえ末端の作業であっても、「この作業がないと製品は出荷できない」といった責任を持ちましょう。
そして「社員さんを支えている」という考えをもっていいかと思います。
自分が努力して、成果を出すことで上司である「社員さん」の評価が上がります。
社員さんのみならず「プロジェクトチーム」の評価も上がるので、急に仕事を任されたりしてやる気が上がります。
自分は「責任のある中心人物」にはなれないですが、「社員さんから『あなたが必要です』といわれる人物」になることはできます。
ハケンの品格をあげるというのは「必要とされる人になるために努力する」ことにあります。
必要とされる人になるためにはもちろん仕事を適当にやっていてはいけません。
自分の仕事に誇りをもち、最大限の力を出してやりましょう。
◆上の人のビジョンを聞く
要するに「あっさりやめてしまう」か「自分を受け止めて続ける」かのどちらかです。
退職してしまったのにこんなことを書くのはいかがなものかと思いますが、わたしも結構「ハケンの品格」で葛藤がありました。仕事は大体慣れてしまったのですが、ある程度のことまでしかやらせてもらえない。
基本的に決定権は自分にはない。仕事も難しいわけではないので誰にでもできる。はっきり言ってモチベーションは下がります。
モチベーションが下がると「必要最小限しか仕事をしなくなる」のですよね。必要最小限は効率面などで悪いことではありませんが、わたしの場合は自分の成長思考すらシャットアウトしてしまいました。
もやもやしているとき、ひょんな偶然があって社員さんの相当上の役職の人から声をかけていただきました。
「あなたたちの仕事は単調作業も多いし、開発のしわ寄せがすべてやってくるのでつらいと思う。でも、あなたたちがテストの仕事をしてくれるおかげで、わたしたちも安心して仕事ができる。本当にありがとうございます」
この言葉にかなり救われました。
「多少なりとも、自分がこの人を支えているのだな」と実感したからです。
その上の役職の人に聞いてみました。「あなたは何を誇りに仕事をしていますか?」
「映画などとは違って、製造者がテロップで出てくるわけではない。製品名に印刷されるのは『社名』だけ。わたしもメディアなどに出るわけではない。おまけにバグが出たら吊るし上げを食らうし……(苦笑)。でもやはり『良いもの』を作成して、それらが店頭に出るのを見ると『誇り』を感じる。やってやったぞ!! という気持ちになるよ」
良いものを世に出すこと、それが誇りということだそうです。この考えがとても格好いいと思いました。
人にそう語れる仕事は素敵です。たしかに苦労は多いですが。
こんなに頑張っている人に「ハケン」ができる精一杯のことは「支える」ことです。
本当に良いものが市場に出回るように、自分の仕事に責任を持ってやることです。
「わたしはハケンだから」とドライに考えて仕事をしている方は案外多いと思います。
「ハケンだから、これ以上のことはしなくていい」
「ハケンだから、必要以上の責任は感じなくていい」
こう、ナーバスにとらえることなく「この仕事全体を支えている」と考えると「ハケンの品格」は上がるように思えます。
「ハケンだから○○しかできない」と考えず、「○○しかできない。だからこそ、○○を極め裏から支える」と考えて品格を上げていきましょう。
◆好きです。
とはいっても、わたしのように「いきなりすごい役職の人から話を聞ける機会」なんて滅多にないのですけどね。
すごい役職の人の話ではなく、身近な社員さんが「仕事にどんな誇りをもっているか」を飲みの席でもいいので、熱い思いを聞いてみるといいかと思います。
身近な人の仕事話を聞くことは、案外いろいろな発見があるように思えます。
「ハケンだから」という言葉で割り切らず、少し物事に「マエノメリ」になってみましょう。
◆最後に
いきなり冒頭で「退職しました」と書いたのですが、理由を書いてませんでした。
書き出すと長い上に、今月のお題という趣旨を変えてしまうのでまた今度にします。
退職しても忙しいので今年中に全部書けるかといったらけっこう不安ですが、気長に待っていてください。
徳島のスターバックスにて、思考にふける10月の終わりでした。