髪盛ってるから森姫

「お金」という最低限のやりがいを失って

»

◆はじめていただいた「お金」という「やりがい」

 今月のお題は「エンジニアとしてのやりがい」ということですが、やはり「自分の作ったものが店頭に並ぶ瞬間がうれしい」とか、「お客さまが『このシステムは便利だね』といってくださる瞬間にやりがいを感じる」とか「リーダーが『よくがんばったね』と褒めてくれる、自分がリーダーを支えていると思うとやる気がでてくる」など、それはそれは読んでて涙が出るようなことをエピソード添えて書かなくてはならない気持ちになります。

 もちろん、前述したことは嘘ではありません。

 自分がお仕事で携わったものが店頭に並んでいて、ちゃんと動いているのを見ると、涙が出る思いになるのも事実です。

 しかし、究極のやりがいはやはり……給料日にやってくるのです。

 つまり、お金ということです。

 社会人になったのはいまから5年前なのですが、初めてもらった「給料」というものがとてつもなく怖かったのを覚えています。

 当時はITバブルということもあったせいでしょうか、21歳の小娘がいただく額にしてはとてつもなく多かったのです。

 しかも、新卒というと、大体は1カ月目は研修なので、お仕事は大してしていないのです。

 それなのに、こんなにいただいていいのだろうか……という恐怖。

 給料日に銀行から下ろした金額に、手が震えたのを覚えています。

 「これだけいただいているのだから、もっとがんばらなくては!!」と心に誓いながら、初の給料日に同僚と新宿の飲み屋で散財したのは、若き日の思い出です。

◆貧乏でタクシーの運転手相手にキレそうになる

 そんな若い日から5年経ちました。

 ITバブルがはじけて、世の中は不況の嵐です。

 わたしの会社では4月に大きな給与カットがあり、それを機に未曾有の生活苦。給与カットがあり、休みも増えた……ならちょっとは心はおさまるのですが、反比例するように仕事は忙しく。

 その日もすでにタクシーで帰宅せねばならないお時間でありました。タクシーの運転手さんの言葉を、わたしは忘れません。

 「こんな遅くまで大変だね~。でもあれでしょ? やっぱり残業代いっぱいでてウハウハなんでしょ?」

 ウハウハいってたら今頃ジャ○コで買ったテロテロのスカートなんてはいてねぇよ!! と、大人げなくキレそうになりました。

◆失った最低限の「やりがい」

 わたしは直接「エンドユーザー」とやりとりすることはありません。

 仕事をしても、直接お客さまから褒めていただけることはないのです。店頭に並んでいる、自分が製造に携わった商品を見ても、それには映画のスタッフのように名前がロールで表示されるわけではないのです。

 かといって、社名が出るわけでもありません。製造元はもっと大きい会社なので、小さい会社は扱いに入らないのです。

 となると、やりがいはやはり「お金」となってしまうのです。

 その「お金」というやりがいも崩れ去ってしまったのです。

 お金が満足にいただけない。仕事量は増えるのみ。

 給与明細の金額と時間を割ってみたら、時給なんて……見たくもありませんでした。

 働けば働くほど、自分がみじめになるのです。こんな仕事のどこに「やりがい」なんてあるのでしょうか。

◆見失ったやりがいと改めて見るやりがいと

 わたしも、こうして「やりがい」を見失ってしまって途方に暮れた1人です。

 普通にアルバイトしていたほうが豊かな生活を送れるのなら、そっちの方がいいのです。接客業であれば、エンドユーザーと直接やりとりもできるので。

 しかし、いざ「ITエンジニア以外の道を選ぶ?」と聞かれると「なんかそれは違う気がする」と答えてしまいます。

 それはなぜか?

 社会人として初めてお金をいただけた……目に見える評価の形として「お給料」をいただけた職業がITエンジニアだったから。

 いままで学校などで努力して学んできた技術、好きでやってきたことが「お金」という一番分かりやすい形でかえってきたのがうれしかったから。

 もっとがんばって、認められたい。そのためには、一番最初に手にした武器を磨いていくのが一番早いと思っているからです。

 だから、わたしはITエンジニアを続けているのでしょう。それがITエンジニアを辞めない理由です。

◆かっこいい「やりがい」がほしい

 しかし、「やりがい」が「お金」というと、あまり響きが良くないような気がします。ストレートすぎるので。

 もちろん、根本はお金であるので大切なことなのですが、もし、他の人に「なんでエンジニア続けてるの?」とか「エンジニアのやりがいってどこなの?」と聞かれたときに、格好いい理由がいえるといいなぁと思います。

 いまのわたしには、格好いい理由が何1ついえません。

 知り合いのエンジニアが「自分の名前は残らないけど、自分の作ったものが形になる。それで報われる」とおっしゃっていました。

 その生き生きとした姿をみて、「わたしもいつか、こういえるようになりたい」と心の底から思いました。

 格好いい「やりがい」が欲しい。できることなら、初めて「社会人」として認められたITエンジニアとして。

◆実は現在……

 ITエンジニアとして現在、大きな岐路に立たされています。それはまた後日。

◆好きです

 ITエンジニアとしてちゃんとお金をいただけること、「やりがい」以前に、まずはそこから。

Comment(4)

コメント

もの

やりがいは、いつでも自分で作る。他者の評価やお金の多寡に関わらない。
これを実行したら、更に自分を尊敬できる気持ちになれる。自尊心を自ら高めることこそが真のやりがい。

(株)ポチ

正直なところ給与に関しては、一番に求めて当たり前で特にこの業界、それ以外の技術肌的なやりがい指向を逆手に労働条件が悪くてもまかり通ってしまっている業界体質を作っているような気がしてなりません。

なので、もっと声を大にして「残業代は全てよこせ」と叫ぶべきです。

雨野

森姫さんはいつも考えさせられるようなコラムを書きますね。

上のコメントでポチさんが書いていますが、私も残業代はきちんと請求すべきだと思います。私はプロマネとして働いていますが、残業が発生するのも、それに対して残業代を支払う予算がないのも、マネジメントの責任です。

仕事をする上でお金以外の志しも重要だと思うのですが、それも働いた価値に対する正当な対価を貰った上でのことです。趣味やボランティアじゃないですからね。

しっぱ

こんにちは。しっぱと申します。
今回のコラム、前職にいたころにトレースされます。

まあ、唯一違うのは私自身がIT業界で生きていきたいと思っていなかったところですかね。。。。

現在もITの業界に居りますが、やはり給与の問題は切実です。

『やってみせ、いって聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ』

山本五十六の言葉ですが、やはりこれが満たされない中では「仕事のやりがい」を見つけるのは困難です。
その結果行きつく先はリアル(お金)しかなくなります。

そうなってしまったらもう末期ですね。

コメントを投稿する