髪盛ってるから森姫

ITバブル時代のロマンチックな就活のお話 ~こんな時代でもこだわりを持って!

»

 「IT業界就職ラボ」(就ラボ)の記事を読んでおりましたところ、若き日の自分のことを思い出しました。

 ちなみに就職活動に関しての独自の「アレそれ」なので偏見に満ちておりますが、その辺を踏まえて「こんなやつもいるんだ」程度に読んでください。ちなみに動画配信の結果を書く前に、このコラム書いております……(10/3なので本番は明日)。

 わたしは21歳のときに就職しました。

 ちょうどITバブル全盛期で就職には困らないといわれる年でした。自分で言うのもなんですけど、一般学生よりはIT関係のスキルも持っていたので、担任の先生かもら「君は大丈夫だよねー!!」なんていわれたりしました。

◆就職へのこだわり

 まず、大手に行くか、中小に行くかだと思うんですよね。こだわりって。

 わたしは大手を選びませんでした。はなから選択肢にいれなかったのです。働いているときに社長の顔が見えない、社長がどこにいるかわからない、そんなイメージがする大手には行きたくありませんでした。もちろん、これは偏見ですけど。実際大手に行ったことがないからわからないです。

 そんなわけで中小企業に片っぱしからエントリー。年明け前から活動して2月がピーク。3月はほとんど学校に行かなかったのを覚えています。説明会が忙しく、学校に行っている余裕がなかったのです。

 まぁ、説明会であれば学校は「欠席」扱いにならかったのですけど。エントリーした会社は50社を軽く越え、説明を受けに行った会社だけでも20社は超えていました。「合同企業説明会」の説明を含めたらエントリーと同じぐらいの数でしょうか。とにかくいろいろな社長や従業員さんの声を聞きました。

◆だが

 いまいち「ここで働きたい!!」というのがなくてとりあえず入社試験は受ける……。とりあえず……という会社には失礼なことばかりしておりました。

 が、こんな「とりあえず」というまったく意志のない動機で受かるはずもなく、大抵は第1次選考(筆記試験)で落ちておりました。あ、書類審査はほとんど通りましたけど……(いい訳)。

 わたしは本当に数学・英語が苦手で、筆記なんかできるわけがないのです。一応SPIのお勉強もしたのですが、さっぱり。しかし、そうして受けた試験って落ちてもあんまりピンとこないというか落ち込んだりしなかったんですよね。自分の中に「働く」ということになにか深いこだわりでもあったように思えます。

◆となりは吉野家だった

 その日もある企業の説明会に行きました。覚えているのは……隣が吉野家の企業説明会だったこと。おいしそうだなぁ……おなかすいたなぁ……と思いながら自分が受ける会社の説明会に挑みました。社長と呼ばれる人が最初部屋に入ってきたとき……

ぞくっ!!

としたのを覚えています。

 とにかくその社長さんは怖かったんです。それまで出会ってきた社長さんや従業員さんはとにかく「やさしい」感じの人ばかりだったのですが、その社長さんは違いました。「やさしい」の「や」の字もありませんでした。

 お話をうかがうと……喋ったらすごく優しい人!! なんてことはなく、怖い人のままでした。大抵のお話って「笑い」の要素がどこかにあると思うんですけど、そんな要素はなく、社長さんは淡々と自社の説明と教育方針を語ってくださいました。

 具体的すぎるぐらい例をあげて。「わたしの会社はプログラマを育てる」と。わたしはプログラマ志望でした。なので、その一言を聞いた時に「ここで働きたい」と思いました。お笑い的要素は1つもなく、説明会は終了。

 アンケートは素直に「御社に入社するにはとても厳しいと感じました。高い志が必要です」
と書いて、入社したかったので試験を受けることにしました。

◆書類選考は受かって筆記試験

 SPIだったのを覚えています。

 しかし、勉強というものがさっぱりできないわたしには過酷すぎました。国語はできるんですけど、ほかの教科はさっぱりです。絶望的すぎました……。

 最後に心理テストのような試験もあったのですが、こういうときって自分をすごく良く見せて答えると思うのですけれど、悟りを開いちゃったわたしはよく見せることなくネガティブ要素満載で回答しました。

 もちろん試験には他の人もいて、帰り道にお話をうかがう限りは、とても有名な大学の人。あぁ、この時点で格差が……。

 落ちたな、と思ったのです。

◆メールが飛んできた

 「面接に来てください」とメールがきました。筆記試験は受かった様子。  

 「は?!」でした。

 しかし、入社したいと思った会社です。なにをためらうことがありましょうか。受けましたよ、面接。

◆ぼろくそに泣かされる

 後で友人に「こんな面接だった」と話したところ「それ、絶対圧迫面接だから」と返されました。

 面接にはこれまたお笑い的要素は1つもなく、かといって社長さんが笑顔になることもなく。社長さんは全然しゃべりませんでした。横にいた面接官の人がいろいろ聞いてきてくださって、それにこたえる感じ。面接も無事に終わりそうだとおもったときに社長さんがぽつりと、

 「君、システム開発ってどういうことするかわかってる?」

と聞いてきました。

 それまで長所や短所などをきかれてきたところにこんな質問で正直びっくりしましたが、知っている範囲を教科書的に答えました。すると社長さん、

 「それで……?」

 あきれ顔で疑問文でした。顔が真っ青になったのは記憶にあります。

 「なにが必要なの?」

 「えーっと……あの……要件定義と」

 「そうじゃなくて、能力として」

 「お客様から要望を聞き出す能力などが……」

 「じゃあ、その能力って具体的になに? どういうの?」

 こんな感じな質問が20分。体感的には1時間的以上。ツッコまれすぎて最終的にはわたし、答えられなくなって、答えられない自分に嫌気が出てしまって、なによりもそこまで聞かれるとは思っておらず、パニックになり、泣いてしまいました……。

 面接官の人がフォロー入れるまで、泣きながら答えておりました。泣きながら「でも……」というあたり自分って……(笑)。

 最終的に泣きだして10分で喋れなくなったわたしに向かって、社長さんは「もういい」とだけいって去っていきました。面接官の人が「ごめんね」といって面接終了。でも、礼儀としてもちろん「ありがとうございました」とオフィスの奥にいるはずの社長さんに向けて言って帰りました。

 駅にて……コーヒーを飲みながら、

 「あぁ、あれは面接というよりは修業だったんだなぁ……」と思いました。

 ちょっとITがわかるからって良い気になっているのは書類で明らかだったでしょうね。そこにツッコミをいれるべくして行われた面接だったのだろう。ありがとうございました……でも、「もういい」ってことは採用されないってことなんだろうなと思いました。いくら「入りたい」と思った会社でも、能力が伴ってないとだめなのです。

◆翌日

 バイト終了後、携帯を見ると30分に1回、知らない番号からかかってきていて、いやな迷惑電話だなぁ……と思ってかけ直したら、転送電話とのこと。こっちからコンタクトもとれないということは迷惑電話だな……と思っていたらまた携帯が鳴りました。

 出てみると……昨日受けた会社からでした。

 「採用です。おめでとうございます」

 面接のとき以上に頭が真っ白になった4月のことでした。

◆入社の決め手

 わたしはすぐに「御社で働きたいです」と答えました。企業説明会と面接、すべて含めて社長さんのことを尊敬したからです。ありきたりな面接ではなく、ちゃんと技術に対してのこだわりと持っている人だと実感しました。そんな素敵な会社に入れるなんて……それこそ涙が出ました。

◆そして入社して……

 同期は4人いました。入社半年後に「入社試験の時の成績」を見せていただくと、同期4人の中で一番というか……論外の成績だったのはわたしでした。

 他の同期は70点とか出しているのに……わたし……20点(笑)。心理テストも「こいつはネガティブすぎるから採らないほうがいい」というようなことが書いてありました。良く受かったな……と思います。

 技術的にもいろいろ恵まれ、いろいろな体験と話を聞くこともできました。とてもいい会社でした。

◆しかし

 いろいろな事情があり、わたしは恋に焦がれて入った会社をやめました。まぁ、そのあたりは……気が向いたら書きます。趣旨と異なるので。

◆今回の趣旨

 これから就活する人は、それこそ「会社選んでられない!!」なんていうぐらい厳しい状況だと思いますけど、「働く」ことにはこだわりを持った方がいいです。人生の5分の1ぐらいは「働いている時間」なのですから。

 自分が「ここだ!!」と思った会社、そういう……それこそ「びびっときた」(死語)会社に入ることをお勧めします。

Comment(5)

コメント

wk

>わたしは恋に焦がれて入った会社をやめました。

すみません。
そこが一番重要な気がしますが。

森姫

wkさん

今読み返して、ここ気になるだろうなぁ~と思いました(笑)
これに関しましてはまた別の機会にでもつらつら書こうかなぁ・・・と。
それこそこのコラムの趣旨になっちゃいますので普段の倍ぐらい時間をかけたいです。

wk2

>わたしは恋に焦がれて入った会社をやめました。
>「びびっときた」(死語)会社に入ることをお勧めします。

失敗したことを薦められても・・・

森姫

wk2さん
うーんと、やめた事情はいろいろあるんですけど、
就職にあたってはこだわりを持ってほしいなぁ~という思いで書きましたので。
別に失敗をすすめているわけではありませんので・・・(汗)

ばしくし

仕事にこだわりを持つことは大事ですが
まだ働いてない=実態がわからない状態で仕事にこだわりなんて持てるでしょうか?
いや、新卒or未経験はそもそもがゼロベースの状態なのに、「こだわり」なんか持つべきでしょうか?

それこそ、人から聞いた話・一般論をベースにして、自分勝手な脳内妄想を作り出し
全く筋違いな期待感、歪なモチベーションを作り出してしまうと思うんですが。

業務に対する哲学・こだわりは、一般的な採用面接では重要視される視点ですが
それは、経験者採用でこそ行われるべきことであり
新卒採用・未経験採用で問うべきことかというと、大間違いのような気がします。

これこそ雇用のミスマッチを大量生産している原因だと思いますね。精神疾患にかかる人なんか特に。

とりあえず入社してみて働き
合えばそのまま続け
合わなければ早めに職種転換・業種転換を行うべきだと思います。
どんな業種・職種でも。

今や第二新卒なんて言葉もある時代。
向かない者、低モチベーション者の異業種への早期転職は、非常に重要です。
なお、職種転換は転職でも可能ですが、社内での部署移動でも可能です。

可能であれば、社内での部署異動を働きかけるところから始めてもいいですよね。

コメントを投稿する