地方エンジニアが感じる地方・中小企業での悩み

視点の違い

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 開発者的な視点で見ると、なぜこの技術を採用したのか不思議に思う案件を見かけることがあります。利用しているものとしては、別のベンダーからもっと良いものが提供されているにも関わらず、性能の低いサービスを採用しているように思える場面は一度や二度ではなく目にしたことがあるのではないでしょうか。

 以前であればこっちのサービスのほうがいいよね、とか、このアーキテクチャがベストだよね、と思うことが多かったのですが、最近は開発者の立場で仕事に関われなくなったことが多いこともあり、私自身のものの見方が変わってきたと感じています。

 実際に開発から離れてみて感じるのは、開発者は仕組みも含めた内面を重視する傾向が強めで、開発外の立場では周囲に与えるインパクトやアピール力といった内面以外の部分を重視する傾向が強いのではないかという点です。

 これは視点の違いというか、求めるものの優先順位の違いが大きいように考えられます。技術者の場合は、利用している技術そのものが重要に感じることも多いです。はやり言葉になってしまっているのであまり用いたくはないですが、マイクロサービスなアーキテクチャで AI を活用しクラウド上で展開するサーバレスなサービス、宣伝文句だけを並べてしまうとこのような中身が何もなさそうなものができあがってしまいます。ですがその中でも例えば、開発者としてはマイクロサービスを利用することでモノリシックで構築した際のデメリットを回避できたことを大切に感じます。これが同じものを球体依存のアーキテクチャで実現できたとした場合、あっちはアーキテクチャがアレだよね、と考え品質としてはこちらが上だと捉えてしまいます。

 このように考えることは悪いことではない、私としてはそう思います。ですが、視点を変えてユーザーとして見た場合、マイクロサービスとかサーバレスとかは、それほど重要に思える要素ではなく、最終的に自分たちが実現したいことができるかどうか、そこを最重要として物事を見比べていきます。極端に言えば、開発者がどのようにきれいに作り上げたとしても、自分たちの希望が叶わなければそこに価値を見出さないのです。このあたりを考えていくことで、開発者とそうでない人たちとの間にあるギャップが見えてくるのではないでしょうか。

 暴論として書くと、AI は ChatGPT であって言語モデルとかどうでもよいですし、パソコンは Windows 時々 Mac でしょうし、クラウドは AWS とぼちぼち Azure、そう考えている人も一定数以上いるのが実際です。開発者としては「落ち着け落ち着け、ステイステイ」と言いたくなる話ですが、IT に明るくない人であればあるほどここに書いた考えに近い人が増えてきます。

 そのような人に正しい話を伝えることも重要かもしれませんが、それ以前に興味を持って話を聞いてもらう土壌を作り上げる必要があります。そのような背景もあり、技術要素以外のところを重要視している相手に伝わるものでなくてはならないのです。そこに技術的な話題はあまり歓迎されません。

 システムを作る開発者としては重要に思えても、それを世の中に出した時には重要でなくなるものは多々存在しています。どちらの視点が正しいといった話題ではありませんので、できる限りは両方の視点で物事を考えていくのが重要なのではないでしょうか。どちらかからでも歩み寄っていかなければ、この先の未来でも同じことを繰り返していくのだと思います。

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