地方エンジニアが感じる地方・中小企業での悩み

名前だけはIT屋

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 世の中、非常に数多くのIT屋と呼ばれるSIerやソフトハウスが存在し色々仕事を行なっていると思います。ですがこのIT屋と呼ばれる中でも問題のある企業や人というのは数多く存在しています。

 開発を行なっている人にとってはプロジェクト管理の話というのはよく耳に目にすると思います。またソースや納品物などで構成管理というのもよく話題になるのではないでしょうか。

 しかしIT企業の中で果たしてどのくらいの企業が(ある程度以上の)管理を行えているか、と言われると恐らく半数にも満たないのではないでしょうか。中小企業になればその割合は更に減ることと思われます。

 ある会社での話ですが、「ソース管理はしっかり行なっています」とプロジェクトマネージャーや担当SEなどが言っていたのでどれどれと見せてもらったところ、APのソースはビルド時に圧縮し専用のフォルダに時系列で保存していたので「気持ちは微妙だけどまぁいいか」と思っていたら、共通部品に関しては一切保存していなかった、というなかなかダイナミックかつアグレッシブな管理を行っている会社でした。

 そこではリリースの管理についてもエクセル上で記載するようになっていたのですが、やはり人によっては記載忘れなどがあってちゃんと管理はできていなかった様子です。ついでに言うとソースには修正履歴がコメントとしてぎっしりと……。

 また違う会社では「これからは社員の作業実績をちゃんと管理する」と意気込んだのは良かったのですが、実際にはエクセルを利用して、日報を毎日提出させるという方法を採っていました。ここまでなら問題はそれほどないのですが、実際の社員側では関わっているプロジェクト毎に日報週報の提出が義務付けられ同じような内容の書類をいくつも作成しないといけない状態に……。

 こういう会社ほどユーザーには「しっかりと管理する必要がある」ですとか「現場に負担の掛からない管理を」などと美辞麗句を並べて活動しているのが多かったりします。自分の会社でできていないことを、人の会社には要求・提供できる訳ですね。ちょっとした魔法みたいなものです。こと管理、という話題においてはIT屋というのも一般ユーザーとなんら変わらない、もしくは下回っている会社が多いのが実体ではないでしょうか。

 もう1つ実例を挙げると、とある会社では自社の販売管理にはAccess97で作成されたシステムを今現在利用し続けていたりします。そういう会社がユーザーには「そろそろレベルアップの時期ですよ」と言うのが何とも面白くもあり、恥ずかしい話だと思います。VB6で作成されたシステムを使い続けるよりも、Access97を利用し続けるというのは更にワンランク上の豪快さを醸し出していると思うんですけどね……。実体として結構普通に見かけたりするのが怖いところです。

 構成管理で言えば、今では比較的容易に構築できるSubVersion・CVS・VisualSourceSafeなど、予算や個別の事情を踏まえたとしても多種多様な選択肢が出揃っていますし、プロジェクト管理ではExcelで管理できる領域には限度があるというのも知っているはずです(もちろん扱う案件の規模によってExcelでの管理が十分に適切なケースも多いです)。ある程度以上の規模になれば、やはり専用ソフトなどの導入を考えるのが、トータル的なコストや以後の体制などにおいて最も適していると思います。よく「ケースバイケースで」と、お茶を濁す人も多いですが、本当にその「ケース」を考慮した上で決定した人・会社はどれだけあるのでしょう?

 自分達の知っている手段の中でチョイスするだけで、「世の中にたくさん存在する手段を調査した」ですとか、「同業者に聞いてみた」ですとか、「本を参考にした」ですとか、本当に考えた上で決定したという話は殆ど聞いたことがありません。「色々考えてみたんだけど~」と言う人には一度「何をどう色々考えてみたのか」聞いてみたいです。

 (偏見ですが、ある程度以上の規模を持つ会社でなければ中々出会えない、とまで思っています。上記の様な事を考えている人は数多くいると思いますが、考えを実践できるとなると場所は限られてくるのではないでしょうか……)

 もう1つIT屋に多い風潮となっているのが「ISO」や「プライバシーマーク」などに始まる多種多様な資格群です。特に今は個人情報の取り扱いなど注目されていますのでユーザー側も、そういった資格のある・なしは気にされているところも多いと思います。しかしここにも当然のように問題があるのは、皆さんご承知の通りかと思います。

 未だに発生し続けている情報流出事件も、半分ほどはこういった資格を取得している企業が起こしていることを踏まえると、資格を取得したこと自体にはそれほど意味がなく、「継続して取り組んでいること」が一番大切ではないでしょうか。PDCAサイクルというのは何においても大事なポイントですね。言い方こそ違えど、継続して物事に取り組むことの大切さというのは私達は知っていたはずです。

 このようなポイントというのは簡単に変革できるものではないでしょう。ですが、変わっていこうとする気持ちを持つ人がいれば、決して不可能ではないと思います。小さなことから少しずつ変えていけば、後で振り返ると大きな変革を行えているものではないでしょうか。最初から大きな変革を行えるのは、経営層など上層部でなければ無理です。私も含め雇われ身分の際は、足元から一歩ずつ積み上げていくのがベターではないか、と思います。そのようにして培ったものを実績として、改めて話をしていくべきでしょう。

 大体にして、変わって欲しい人達というのはこういったコラム自体読みません。自分達の方法に改善の余地があるかどうかすら考えていません。今の手法に疑問を持ってすらいない、または漠然と「何とかしないと」と思っているだけなのです。そのような人達に変化を望むよりも、自分達が周囲を巻き込むようにやっていくのが上手いやり方ではないでしょうか。

Comment(4)

コメント

JULY

同じ、「試される大地」の中小企業のエンジニアです。

「試される大地」の IT 関連企業だと、メーカー等からの下請けだったり、派遣だったりで、自分のところできちんと管理しよう、という感じになりづらい、という面はありますね。行き当たりばったりの仕事で継続性がなくて、「金をもらえるなら何でもやる」みたいな。

自分も、個人的には Subversion 使って管理していたことがあるんだけど、現場の技術を良く知らない元請けだと、「変更履歴をコメントに残せば良いってもんじゃないだろう」というソースを渡されて、「これを流用して改造してね」だったり。そのコードを理解するために、コメントをはずすとこからはじめないと...。

といった仕事に振り回されると、Excel で管理、という発想以上のものは出てこなくなるような気がします。基本が「元請けに合わせる」になっちゃう。なので、自ら「こうやろう」というモチベーションが低い。「バージョン管理システムって何?」「BTS って何?」てな感じで。

Ahf

コメントありがとうございます。

元請からの仕事や派遣・出向のケースなど、なかなか自主的に行ないにくい場面というのは多々ありますよね。そのような場合ですと意見を言う事自体がはばかられるような空気もあり、とても難しいところだと私も思います。

ですがJULYさんのように分かってらっしゃる方がいれば。時間は掛かるでしょうがきっとどこかで実を結ぶ、と思います。本来であれば、元請に意見できるくらいの関係にまでなることがベターなんですけどね。現実は難しいです・・・。

>変更履歴をコメントに残せば良いってもんじゃないだろう
コメントのほうが容量を食っているソースは見かけますよね・・・。
今の私の職・・・ゲフンゲフン

LUNACY

興味深く拝見いたしました。

当方、Pマーク取得企業の社内SEをやっております。

>自分の会社でできていないことを、人の会社には要求・提供できる訳ですね。ちょっとした魔法みたいなものです。

個人レベルから組織レベルまで似たようなことはあると実感します。
思うに、これは決まりや仕組みは、その道の専門ではない素人にとって有効であって、中身を理解している人間=自分(達)は、仕組みに頼る必要性が低いと、半ば無意識のうちに感じてしまっているからではないかと思います。
大部分は無意識な「驕り」だと思うのですが。

多かれ少なかれ誰にでもあると思いますが(自分にも多少はあるかもしれません)、理解しているからこそ実践できる人であるよう努力したいです。

Ahf

コメントありがとうございます。

仕組みに頼る必要性が低いと~、というのは大いにありますよね。「無意識な驕り」と思われるのも私も同じ意見です。
どこか「自分(達)は大丈夫」という根拠のない自信が根底にあるのかな、と思います。LUNACYさんが思われているように、「自分にもあるかも知れない」という気持ちのある・なしでその後は大きくわかれるのではないでしょうか。

私も自戒をこめて書いていますので、常に努力していきたいと思います。
お互い頑張っていきたいですね。

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