@IT自分戦略研究所 メールマガジン「@IT自分戦略研究所 Weekly」に載ったアイティメディア社員のコラムを紹介します。

贈与と返礼

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 2008年5月9日の「@IT自分戦略研究所 Weekly」に掲載したコラムを紹介します。『アットマーク・アイティ 丸の内日記』が一部(というかエンジニアライフ担当)に好評の編集長による「ご機嫌な職場の作り方」。新人の元気なあいさつに負けないようにしたいですね。

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 2008年1月に出版された『不機嫌な職場』(高橋克徳、河合太介、永田稔著、講談社現代新書)が4月15日で17万部に達したそうです。毎日新聞夕刊(4月17日付け)によると「同書を取り上げた読者のブログは約200件にも上る」そうです。

 職場の雰囲気が悪化している原因について、著者の高橋氏は「自己完結した働き方の主流化」や「社内コミュニティの喪失」といったことを指摘しています。

 まるめていうと、同じオフィスで一緒に働いているにもかかわらず、あまり話をしない人たちが増えた、ということのようです。また、話をしなくても、仕事が成立してしまうということでもあるんでしょうね。

 しかし、これ、何かおかしくないですか。同僚と没交渉に近い状態で仕事ができるとは到底思えません。

 仕事なる行為をいったんバラバラに解きほぐし、その本質を取り出して眺めてみると、仕事というのは結局、「自分を含めた<他者>とのコミュニケーションにほかならない」ことに気が付くはずです。そして、そのコミュニケーションで相互に受け渡されているのは、“自分では手に入れられないけれど、あなたなら手に入れられる何か”です。

 神戸女学院大学の内田樹教授は、フランスの文化人類学者クロード・レヴィ=ストロースの『構造人類学』を参考にしながら、こんなことを書いています。

 「何かを手に入れたいと思ったら、他人から贈られる他ない。そして、この贈与と返礼の運動を起動させようとしたら、まず自分がそれと同じものを他人に与えることから始めなければならない。それが贈与についての基本ルールです」(『寝ながら学べる構造主義』、文春新書)

 さらに内田氏は「人間の本性は贈与にある」ともいっています。

 自分が欲しいと思ったものは、決して自分では手に入れることができず、他人に贈与することによって、巡り巡って返礼という形で戻ってくる。人類の社会は、このように極めて奇妙な形で構造化されている、と内田さんはレヴィ=ストロースを参照しながら指摘するわけです。

 僕にとって、この指摘は大変説得的なもので、贈与と返礼の循環運動が起動されない職場が不機嫌になるのは、そりゃまあ、当然のことやろな、と思うのでした。

 あいさつしましょうね。まずはそこからだと思います。

(@IT自分戦略研究所 編集長 谷古宇浩司)

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