「業務経歴書」という物語に書けること
2005年3月30日の「@IT自分戦略研究所 Weekly」に掲載したコラムを紹介します。アイティメディアの代表取締役会長、藤村厚夫氏による、「アットマーク・アイティとソフトバンク・アイティメディアの合併」直後のコラム。いろいろと「波瀾万丈」な人です。
皆さん、お元気ですか? 株式会社アットマーク・アイティ改め、アイティメディア株式会社の藤村厚夫です。この3月、私たちの会社は新たに生まれ変わり、久々にフレッシュな気分で春の到来を実感しているところです(編注)。
(編注)2005年3月、株式会社アットマーク・アイティはソフトバンク・アイティメディア株式会社と合併統合し、アイティメディア株式会社になりました。
さて、私事ではありますが、この会社合併を機に会社にとっての自身の役割に変化が生じました。履歴書上、記すべき新たな項目がまた増えたというわけです。振り返ってみると、この5年(旧アットマーク・アイティを創業してからの)間、履歴書(職歴)に書くべき変化はありませんでした。ずーっと、肩書き「代表取締役=会社経営者」。以上終了。でも、この合併統合で会社経営の役回りも「COO」と「CEO」に分け、専任分野も生じました。必ずしも「会社経営。以上終了」というわけでもなくなったという次第です。
「履歴書」に書くべき項目としては、この5年間まったくの無風・不変に終始してきましたが、その間を振り返ると、「業務経歴書」という物語にはたくさんのことが書けそうな気がしています。自分の生涯においても最も波瀾万丈な“無風”期間であったということになるかもしれません。
「土俵の真中で四つに組んで動かない力士は、外観上至極(しごく)平和さうに見える」
と書いたのは、大正5年の夏目漱石でした(「点頭録」)。見るからに波瀾万丈、絵に描いたようなドラマティックな人生も世の中にはあるようですが、往々にして人生上の激動は個人的に、かつ人目からは見えにくい形でやってくるのではないでしょうか。
上手には表現しにくい、自分自身の中の物語。その大切さに気付くことは、平穏無事に見えるかもしれない他人の人生に、「波瀾万丈」の物語を見る想像力にもつながります。たかが「キャリア」、されど「キャリア」の話でした。たまには「転職の技術」から遠い話題も必要ですね。
藤村厚夫