このコラムでは私が体験したIT業界の黒歴史を語ります。

暴力という名の会社

»

 『May Day!』にコラムを書くのもこれで5本目なので、そろそろ当初のコンセプト通り、厳しい現実に目を向けていこう。

 今回は、わたしが体験した中でもかなりヤバい話に属するのだが、冷静に書き進めていきたい。

  • カオス度:4
  • クライム度:4
    (筆者の独断と偏見によるものです)

※これ以降の文章には非常に生々しい描写が含まれております。ご自身の適切な判断が必要です。

 わたしも「職場でよく喝を入れられた」のですが、それはあくまでも遠い昔の話。文学的表現を許してもらえば「昭和の残照」と言ってもよい。

 しかし、この平成に「昭和」な経営方針を貫いていた(過去形)会社がありました。

■ビルの外に一列に社員を並ばせ、ビンタを張る

 その会社(以後、A社とします)のK氏(A社取締役)はどうも武闘派らしく、喝を入れるのが趣味になっている。

 日ごろから仕事ができない社員を電話でなじる。A社社員が隣に座っていたのだが、携帯電話からの「怒号」が、漏れてくるなどという生やさしいものではなく、ハッキリと聞こえる。

 それだけではなく、ビルの外に一列に社員を並ばせ、ビンタを張るということまでしていた。この行為は、彼にとっては日常茶飯事と言ってもよい。傷害行為じゃないのかなと思ったことも一度や二度ではない。

 この「ビルの外に一列に社員を並ばせ、ビンタを張る」行為が、時にはエンドユーザーの命令でもあったということを知り、唖然としました。

■打ち合わせに遅れ、暴言を浴びせられたA社社員に……

 A社は某大手SI企業の仕事を受注していたのですが、A社社員がミーティングに遅れた時に、某大手SI企業社員が「○ねよ、ここ(2○階)から飛び降りて○ねよ」と暴言を発したわけです。

 わたしがA社のK氏であったならば、自社の社員がそこまで貶められるようなことを言われた場合、毅然とした態度で抗議を申し入れます。「確かに、ミーティングに遅れたのは良くないことですが、『○ねよ』とはあまりにもひどい言葉です」と。

 参考までに、こういった「いわゆる職場での言葉の暴力」について、知り合いの弁護士に尋ねてみたところ、「どのように暴言を吐いた」かではなく、「何を言ったか」が問題になるそうです。くれぐれも職場での暴言にはお気をつけいただきたい。

 ましてや、武闘派のK氏のことですから、読者の皆様は当然、「自分の会社の社員に暴言を吐かれたことに逆上して、その某大手SI企業社員にビンタを張った」などと推測なされたかも知れません。

 が、実際は逆でした。

 自分(K氏)より、ふたまわりも若い某大手SI企業社員には「謝罪」し、暴言を吐かれた自社の社員には「喝」を入れる始末でした。こういうのを内弁慶というのでしょうか。

■○masパーティで

 A社は結構盛大なパーティを催しておりました。否、K氏の趣味ですかね。

 年末の○masパーティで、角界や、大山○達氏が創設した会の師範代などプロフェッショナルなゲストを招き、「デモンストレーション」を行うのが習わしのようでした。

 そのデモンストレーションは、詳しくは書けませんが、か○ら割から始まって、○属○ットをへし折るなど……。年末の○masパーティにですよ、そういったデモンストレーションを見たいですか?

 少なくとも見ている社員さんは「プレッシャー」を感じずにはいられません。座興としてもやり過ぎの感があると思います。

■傾向と対策

 A社について、ざっと3つのエピソードを書きました。しかし、わたしが一番「危うさ」を感じたのは、これらの3つのエピソードではなく、「自社の社員、パートナー企業の社員の区別なく、何とかと称して賞金を渡していた」ことです。

 そんな「どんぶり勘定」で大丈夫なのかと。

 一番かわいそうだったのがA社の社員さんであったことはいうまでもありません。結局、A社は倒産しました。

 わたしもA社が倒産したと聞いたときは虚無感に襲われました。あの「自社の社員、パートナー企業の社員構わずに、何とかと称して賞金を渡していた」のは何だったのかと……。

 時勢柄、わたしも厳しい状況にあるのですが、A社の経営について分析してみると、

  • どうもスキル不足の技術者が目立つようで、一括受けの際に赤字が出ると、地方から技術者を連れてくる
  • 失礼ながら、地方の技術者を安単価で作業に従事させても、住居の手配をしなければならないために、ペイできるのかという疑問が湧きます
  • それらを糊塗するために「ユーザーの言いなり、社員には暴力を以て接する若しくは賞金で釣る」と言うことではあるまいか?
  • また、わたしが感じたA社に対する違和感を、当然、A社中堅どころは感じており、離職率が高く、結果的にA社は新人とロートルだけの人員構成になってしまった

 「納期までに間に合わない⇒増員⇒一括受けであるために赤字」という、典型的な「所用に満たない戦力の逐次投入」なビジネスケースになってしまったわけです。これを「この平成に『昭和』な経営方針を貫いていた」と感じたわけです。

 暴言を吐いた某大手SI企業社員のその後についても、それはそれで興味深い話があるのですが、それはまたの機会といたします。

 最後に、この話を書いたのは決してA社に対する怒りからではなく、元A社の技術者の方々を慰撫するためです。

 次回予告 凄い飲み会とは

Comment(7)

コメント

foo

直接的、間接的あるいは精神的、肉体的を問わず、良識の範囲を超えている現状があること自体が嘆かわしい限りです。精神的に稚拙ということなのでしょう。A社は消えるべくして消えたのでしょうから、さもあらんといったところでしょうか。中小、零細企業の場合は組合という組織自体が存在していなかったりするので、何ともやりきれない思いを感じます。

fooさん
>A社は消えるべくして消えたのでしょうから、さもあらんといったところでしょうか。

正常な頭でストレートに考えると、自ずとfooさんが仰る通りだと思います。

が、今回の話は数年前から、A社と取引がある別の会社の方に、A社の危険性について何度も何度もお話を差し上げていたのですが、どうしてもご理解いただけなかったようすで(その別の会社の方と、朝之丞の信頼関係構築の仕方にも問題があったかと、今さらながら忸怩たる思いです)、別の会社の方も最後の最後になってようやくお判り頂けたのですが...

コメントありがとうございます。

朝之丞さん、こんばんは。
御挨拶が遅れまして申し訳ございません。

改めてコラムニストデビューおめでとうございます!
他のブログ共々、大変興味深く拝見させて頂いております。
改めて朝之丞さんの見識の広さに敬意を抱いている次第です。

今後も多方面での御活躍を期待しております。

Flipperさん
こちらまでお越しいただきまして、感激です、ありがとうございます。
>改めて朝之丞さんの見識の広さに敬意を抱いている次第です。
そこまでお褒めいただき恐縮です。
故忌野氏の「つきあいたい」みたいなことにはなりませんので、今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。

saki1208


はじめまして。saki1208と申します。
CNETの方でも時々拝見させていただいておりますが、中々興味深い内容で色々と考えさせられます。

最近は少し穏やかになりましたが、ほんの少し前まではまだまだ体育会系のノリで訳の解らない要求をされることはありましたよね。そういう自分自身も過去を振り返ってみるときっと同じノリでやっていた部分が多少なりともあると思われます。

少し、反省しています。

saki1208さん

こんにちは、朝之丞です。

CNET Japan ブログネットワークの拙稿もご愛顧ご愛読のこと、ありがとうございます m(_ _)m
こちらのコラムとCNETの方では、内容や文体がガラリと違うのでビックリなされたと存じます。

>最近は少し穏やかになりましたが、ほんの少し前まではまだまだ体育会系のノリで訳の解らない要求をされることはありましたよね。

確かに仰る通りです。私自身現場叩き上げですので、生産工学とか熟知しているわけではないのですが、それにしても「どうしても看過出来ない」内容でしたので、今回コラムにUpさせて頂きました。

>そういう自分自身も過去を振り返ってみるときっと同じノリでやっていた部分が多少なりともあると思われます。

それはそれで良いと思います。今後コラムをUpしていきますが、未だにそう言うノリを要求される場面があります(クライアントから)。

そう言った要求をする方々こそ、「昭和の残照」と思ってます。
ただ、厳然としてそう言う方も居られるのですから、ここが資本主義の切ないところですが、お金を出す人(クライアント)がある面、絶対なわけで、それはそれとして割り切る(ここでの結論はそうしておきますが)必要があると存じます。

ただ、自身の考え「そうじゃないだろ」と言うのは常に持ち合わせて頂いた方が、そう言うノリの対処も変わってくると思います。

>少し、反省しています。

気づかれたことは大いに良いことだと思います!お仕事無理せず頑張って下さい。

そう言えば、このコラムのサブタイトル「80’sからのIT業界のカオスな、クライムな話」今後も続々とカオス度若しくはクライム度の高いコラム記事をエントリして行きますので、少々辟易なされるかも知れませんが、お付き合い下されば望外の幸せです。

長くなってしまいましたが、今後ともどうぞよろしくお願い致します。

Thank your for sharing the experience of you life. We are at the same place. We can figure out the way it should be by sharing.

コメントを投稿する