攻撃に対して「ハックされにくい人間」に

最後には離れていくAI

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これまで、AI時代に人間が失ってはいけない判断力について考えてきました。

攻撃が狙うのは、私たちの知識不足だけではなく、疲労、焦り、時間的な圧力、孤立といった「状態」でもあること。

自分の判断が曇りやすい状態にないかを確かめる「曇りの日チェック」。

そして、私がサイバー判断力として考える、六つの判断の型。

感じる、止まる、間をとる、疑う、確認する、行動する。

昨日は、この判断の型を身につけるために、AIを「答えを教える先生」ではなく、「判断の稽古相手」として使う可能性について書きました。

では、稽古を重ねた先で、AIはどのような存在になるのでしょうか。

最初は、AIが問いかける

判断の稽古を始めたばかりのときには、AIが一つずつ問いかけます。

「何か違和感がありますか」
「いま焦っていませんか」
「すぐに行動する必要がありますか」
「事実として確認できていることは何ですか」
「別の経路で確認できますか」
「なぜ、その行動を選びますか」

AIの問いかけに支えられながら、人間は自分で感じ、止まり、間をとり、疑い、確認し、行動します。

しかし、AIがいつまでも同じように問いかけ続ければ、今度はその問いかけに依存してしまうかもしれません。

AIに「立ち止まってください」と言われなければ、止まれない。

AIに「確認してください」と言われなければ、確認できない。

それでは、答えへの依存が、問いかけへの依存に変わっただけです。

支援を少しずつ減らしていく

そこで、稽古を重ねるにつれて、AIの問いかけを少しずつ減らしていきます。

最初は、六つの流れに沿って具体的に問いかける。

慣れてきたら、「この状況をどう考えますか」と、より広い問いに変える。

さらに進んだら、AIはすぐに言葉をかけず、人間が自分で考えるのを待つ。

そして最後には、AIの支援を外します。

AIがいなくても、自分の状態に気づけるか。
必要なときに立ち止まれるか。
考えるための「間」をつくれるか。
情報や自分の思い込みを問い直せるか。
別の経路で確認し、誰かに相談できるか。
自分で行動を選び、その理由を説明できるか。

AIと一緒に正解できたかではなく、AIが離れた後、人間に何が残ったかを確かめます。

「使われ続けること」だけがAIの成功ではない

多くのデジタルサービスでは、利用回数、利用時間、継続率などが成功の指標になります。

しかし、人間の判断力を育てるAIでは、別の成功の形があってもよいと思います。

人間が自分で判断できるようになり、AIを必要としなくなる。

AIが自らの役割を終え、静かに離れていく。

それも、AIの成功ではないでしょうか。

もちろん、これは業務でAIを使わないという意味ではありません。複雑な分析や大量の情報処理に、AIの支援はこれからも必要です。

しかし、教育や訓練の目的が人間の判断力を育てることであるなら、AIを使っている間の成績だけを見てはいけません。

支援がなくなった後にも、人間自身に判断する力が残っているかを見る必要があります。

AIが離れた後にも残るもの

私が目指しているのは、AIを上手に使って正解する人を増やすことだけではありません。

AIによる攻撃や偽情報に直面したとき、自分の状態に気づき、立ち止まり、間をとり、問い直し、確認したうえで行動できる人を育てることです。

そのためにAIを使う。

しかし、AIに判断を委ねない。

AIと一緒に判断の稽古を行い、やがてAIが離れた後にも、その判断の型が人間のなかに残る。

答えを教えず、判断の型が身につくまで稽古し、最後には離れていくAI。

AI時代の人間中心サイバーセキュリティには、そのようなAIのあり方も必要なのではないかと思っています。

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