攻撃に対して「ハックされにくい人間」に

判断のお稽古④ 判断する前に、まず気づけるか

»

昨日は、私が考えるサイバー判断力の「型」について書きました。

感じる。
止まる。
間をとる。
疑う。
確認する。
行動する。

今日は、その最初にある、

「感じる。気づく。」

について書いてみたいと思います。

Codex Image Sep 16, 2026, 07_24_19 AM.png

私のワークショップは、少し変わったところから始まることがあります。

クレヨンと画用紙を渡して、絵を描いてもらう。

大人のサイバーセキュリティのワークショップで、いきなりクレヨンです。

でも、私はこれが結構大事だと思っています。

少しだけ、子どものころのような感覚を取り戻してほしいからです。

もちろん、子ども時代が楽しい思い出ばかりだった人ばかりではありません。

つらい思い出が多い人もいるでしょう。

思い出したくないことがある人もいる。

だから、無理に「子どものころを思い出してください」とは言いません。

そうではなくて、

今の自分の中にも残っている、無邪気に感じる部分を少しだけ使ってみる。

うまく描かなくていい。

正解もない。

評価されるものでもない。

クレヨンを持って、感じたものをそのまま描いてみる。

例えば、

何もかもうまくいかない日。

朝から失敗する。

仕事もうまくいかない。

疲れている。

焦っている。

そんな日に、思いがけない連絡が来たら。

自分は何を感じるのか。

逆に、

何もかもうまくいっている日。

仕事も順調。

気分もいい。

自信もある。

そんな日に、思いがけないことが起きたら。

自分はどう反応するのか。

それを、言葉だけではなく、

絵にしてもらう。

色でもいい。

線でもいい。

ぐちゃぐちゃでもいい。

私は、そこから始めます。

なぜなら、

判断する前に必要なのは、

まず、自分が何を感じているのかに気づくこと

だからです。

これまでワークショップをやってきて、私は一つ強く感じています。

気づくことは、思っている以上に難しい。

もしかすると、大人になるということは、気づくことに少し鈍感になることなのかもしれません。

経験が増える。

パターンができる。

効率よく処理できるようになる。

「これはこういうものだ」

と、無意識に分類できるようになる。

それは必要な力です。

でも一方で、

「ん?」

「なんか変だな」

「いつもと違う」

そんな小さな違和感を、通り過ぎるようにもなります。

私は、その小さな「あれ?」を取り戻したい。

だから、少し童心に戻る。

感じる。

描く。

自分に素直になる。

そこから始めます。

そして、気づく対象は一つではありません。

私は、大きく3つに分けています。

環境。
状況。
感情。

まず、環境。

どこにいるのか。

どのデバイスを使っているのか。

どのコミュニケーション経路なのか。

いつもと違うことはないか。

次に、状況。

急いでいないか。

締切に追われていないか。

権威のある人からの指示ではないか。

例外対応になっていないか。

情報が足りないまま判断しようとしていないか。

そして、感情。

焦っていないか。

不安ではないか。

責任を感じすぎていないか。

怖くないか。

期待していないか。

疲れていないか。

サイバーセキュリティというと、

「このメールはフィッシングか」

「このリンクは怪しいか」

と、外側にあるものを見ようとしがちです。

もちろん、それも必要です。

でも私は、その前にもう一つ見なくてはいけないものがあると思っています。

自分です。

「自分はいま、どんな条件の中で判断しようとしているのか」

そこに気づく。

同じメールでも、

余裕のある月曜日の午前中に見るのと、

疲れ切った金曜日の夕方に見るのとでは、

判断は変わるかもしれません。

私はこれを、

「曇りの日」

と呼んでいます。

疲れている。

焦っている。

責任を感じている。

一人で抱えている。

時間がない。

そんな日は、判断の空も少し曇っています。

曇っていること自体は悪いことではありません。

誰にでもあります。

大切なのは、

「今日は少し曇っているな」

と自分で気づけること。

ただ、毎回毎回、自分の環境、状況、感情を全部チェックしていたら疲れてしまいます。

だから、まずは特に気をつける場面を決めておく。

私は、少なくとも次の3つは意識した方がいいと思っています。

1.お金を扱うとき。

送金。

支払い。

口座変更。

お金が動くとき。

2.認証を扱うとき。

パスワード。

MFA。

本人確認。

人であれ、システムであれ、

「本当に相手は正しいのか」

が関わるとき。

3.誰かから、いつもと違う行動を求められたとき。

急な指示。

秘密にしてほしいという依頼。

いつもとは違う連絡方法。

普段とは違う手順。

この3つが来たら、

少し気をつける。

少しだけ感覚を研ぎ澄ます。

「何か違わないか」

と、自分に聞いてみる。

私は、それだけでもかなり違うと思っています。

サイバー判断力のお稽古は、

いきなりフィッシングメールを見抜くところから始まりません。

クレヨンを持つところから始まることもあります。

感じる。

自分に気づく。

周りに気づく。

そして、

「あれ?」を取り戻す。

それが、判断の入口です。

気づけなければ、止まれない。

止まれなければ、間もとれない。

間がなければ、疑うことも、確認することもできない。

だから最初の目標は、

正解することではありません。

まず、気づけるようになること。

私は、そこから始めたいと思っています。

#HumanCenteredCybersecurity #サイバー判断力 #CyberJudgment #HumanFactors #Cybersecurity #SecurityCulture #CyberMindfulness #DecisionMaking #PsychologicalSafety #AI

Comment(0)

コメント

コメントを投稿する