街で見かけたガジェットを分解してわかったこと・わからないこと色々レポート

第2回: リモートワークのお供に!ダイソーの330円Bluetoothヘッドセットを分解してみよう

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こんにちは。「100円ショップのガジェット」を中心に電子機器を色々と分解をしているThousanDIYです。
このコラムでは、ガジェットを分解する中での発見や感想をつらつらと書いていきます。


2020年春からの新型コロナウイルスの流行により、リモートワークが一気に増えた感があります。それが理由なのか、100円ショップだけではなく、ドラッグストアや書店・雑貨店でもBluetooth接続のヘッドセットを見かけるようになりました。
第2回は、そんな「激安Bluetoothヘッドセット」について、です。

はじめに

元々はスマートホンとBluetoothで接続してハンズフリーで通話するための「ワイヤレスヘッドセット」、以前は家電量販店等で数千円で売っていたのですが、2019年末にダイソーから300円(税別)という格安品が登場しました。その後の新型コロナウイルスの流行で一気に低価格化が進んだ感じがあります。そこで、ダイソーブランドとして最初に登場した「ワイヤレス片耳イヤホン」を分解してみました。

製品の仕様

ダイソーの「ワイヤレスヘッドセット」は白と黒の2色があり、主にスマートフォングッズコーナーにあります。

01_展示の様子を拡大表示

パッケージの表示によると通信仕様は「Bluetooth 4.1+EDR」、50mAhのLiPo(リチウムイオンポリマ)バッテリーを内蔵し「連続通話1時間/連続待ち受け24時間」となっています。パッケージ裏面にはきちんと「技適マーク」が表示されています。

02_パッケージを拡大表示

本体にもきちんと「技適マーク」が印刷されています。取り扱い説明書も日本語・英語の2か国語で、きちんと日本市場対応をしています。

03_本体の技適マークを拡大表示

本体の分解

ケースの開封

本体はツメで固定されているだけですので、隙間に精密ドライバを差し込んでこじ開けます。

基板はケースの形に合わせた1枚基板です。LiPoバッテリーはケースと基板の間に格納されています。

04_本体を開封を拡大表示

基板実装部品以外のスピーカー・コンデンサマイク・バッテリーのリード線は基板に直接ハンダ付けされています。

05_基板をケースから外した状態を拡大表示

部品構成

LiPoバッテリー

LiPoバッテリーはパッケージの表記通り"3.7V 50mAh"の表示があります。LiPoバッテリー自体に保護回路を内蔵したタイプです。
激安の中華ガジェットでは保護回路なしのものが使われていることもよくありますので、価格の割にきちんとしているという感想です。

06_LiPoバッテリを拡大表示

ちなみに同等品をAliexpress(中国の通販サイト)で検索するとUS$2〜3で販売されていますので、LiPoバッテリーの入手用としてもかなりコストパフォーマンスは良いと言えます。

ちなみに、ダイソーやキャンドゥでは製品に問題が見つかると、きちんと製品交換・回収の対応を公表しています。そういう意味では雑貨店や通販で激安の怪しい商品を購入するよりは、製品として信頼できると思います。

メインボード

メインボードはガラスエポキシ(FR-4)の両面基板です。裏面には型番である「XL-165-AC6919A V2.0A」の表示があります。
主要部品は表面実装のLSI1個、Bluetoothアンテナは基板パターンです。

07_メインボードを拡大表示

基板レイアウトとしては特におかしな設計をしている箇所は見当たりませんでした。
GNDパターンはできるだけ広くとっていて、変に細く引き回したりもしていません。
コントロール用のボタンもきちんとスイッチを使用していて、いわゆる良い意味での「普通の設計」です。

回路図

メインボードの基板パターンを追いかけて、回路図を書き起こしました。

08_回路図を拡大表示

メインのLSI(U1)がBluetoothの通信、スピーカー出力、マイク入力というワイヤレスヘッドセットに必要な機能をすべて制御しています。
LDO_IN端子に入力されたMicroUSBコネクタのVBUS(+5V)を電源として、動作に必要な電源電圧をU1の内部で生成、LiPoバッテリーの充電コントロールもU1で行っています。完全な「オールインワンのSoC」となっています。

スピーカー出力はMisroUSBコネクタの3,4ピンにもつながっていて、基板の動作チェックに使用しているようです。

キー入力(3個)は抵抗分割された電圧をADCで検出、2色のLEDは1ポートで排他的な制御(同時点灯できない)を行うなど、16ピンという限られたピン数で必要な機能をうまく実現しています。

主要部品の仕様

アプリケーションプロセッサ AC6919A

09_LSIのパッケージを拡大表示

"JL"というロゴは、中国製のBluetoothやWiFiのチップセットでよく使われている珠海市杰理科技股份有限公司(ZhuHai JieLi Technology, http://www.zh-jieli.com/)製のLSIです。

パッケージのマーキング及び基板の型番より"AC6919A"というLSIであることはわかりますが、この型番は一般向けの販売や仕様の公開はされておらず、製造元の製品情報でも詳細情報は提供されていませんでした。

ネットで検索したところ、FCCに申請している製品で同様の機能のものがあり、申請用に提出している回路図のLSIのピン配置が基板から起こした回路図と一致していましたので、この型番であると特定しました。

https://fcc.report/FCC-ID/2AANZ1588/4136816

同社のシリーズ(AC69xx)でデータシートが入手できた"AC6905A"では主な機能は以下のようになっています。回路構成からほぼ同じだと判断して良さそうです。

  • 最大160MHz動作の32bit RISC CPU(CPUのタイプは記載なし)
  • FS USB 2.0 OTGサポート(DP/DMあり)
  • 1チャンネルのMICアンプ
  • 内蔵ヘッドホンアンプ
  • 10bit ADC
  • Bluetooth V4.2+BR+EDR+BLEサポート
  • LDO内蔵
  • LiPo充電コントローラ内蔵

Bluetooth情報の確認

スマートフォンに接続

Bluetoothでの接続情報の確認は、Android版の"Bluetooth Scanner"というアプリを使用しました。

画像10を拡大表示

本気の電源をいれて、スマートフォンからBluetoothデバイスを検索すると"BT earphone"という名前で検出されるのでペアリングして接続します。
接続した状態で、"Bluetooth Scanner"で情報を確認すると、プロファイルは「Headset」、プロトコルは製品仕様通り「EDR」でした。ちなみに"Vendor"は"Unknown"となっています。
(ざっと調べたところ、Bluetooth SIGでのCompany IDは主にBLEで使用するらしく、取得は必須では無いようですので、問題ではなさそうです。この辺は不勉強なので有識者の方からの情報をお待ちしております。)

11_本機の接続情報を拡大表示

まとめ

メインボードのパターンレイアウト、回路構成ともにコストダウンのための無理な設計をしている部分はなく、全体的にきちんと設計されているという印象です。

安価で販売されている中華ガジェットを分解していると、今回のようにオールインワンのLSIでローコストを実現するプラットフォームを多く見かけます。
これとは別に中国の通販サイトでこれと外形の成形品は全く同じものを見つけて分解したのですが、内部の基板上のLSIは別のメーカーのものでした。格安のBlutooth機器向けのプラットフォームも複数あってお互いに競争しながら進化しているようです。

金型作成の時間とコストのかかる成形品を共通(いわゆる公摸)にし、それに合わせて各社が内部の基板を設計(いわゆる公板)する、そしてそれらを組み合わせて開発スピードとコストダウンを実現する「エコシステム」があるようです。

この「エコシステム」を利用して製品を調達し、日本の技適を取得しても100円ショップというネットワークで大量に販売することにより、ある程度実用的に使えて「300円」という価格が実現できているというのが、この製品というわけです。


次回更新は2週間後の2/1(火)の予定です。

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