あなたの体験談を元に、前向きにおしゃべりしませんか?

IT業界は本当に悪い業界か?

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 先日、大学を卒業して新たに小児科医になろうとする先生が減少しているという報道を見ました。

 大学生の声も紹介されていたのですが、「すき好んで過酷な条件のところで働こうとは思わない」という声が上がっていました。「医師というのはなぁ、自分を犠牲にして命と向き合うからこそ、命の大切さが分かるんだよ」と理想を懇々(こんこん)と語ることはできますが、自分がこれから働く職場を選ぶ時に、よほど強い意志や、これまでの何かしらの強い体験がなければ、わざわざ大変なところに飛び込む人は確かにいないだろうなぁ~と思いました。

 一方で、これから医者になろうとする大学生が、「過酷だ」という情報をどこから得たんだろうと想像しますと、おそらくマスコミやインターネットなど、何かしらの情報媒体からの情報なのではないかと察しています。そんな情報が溢れれば、「小児科医? そんな大変なところはやめておけ!」と、周囲からの反対が起きるのも不思議ではありません。

■この報道を見て感じた懸念

 わたしはこの報道を見て、やや懸念を抱いてしまいました。小児科医は(わたしが想像する以上に)大変だと思うのですが、「小児科医の全員が、大変で、嫌な職業だと思っているのか?」という疑問を持ちました。小児科医の中にも、やりがいや楽しさを持ってご活躍されている先生がきっとたくさんいらっしゃると思うのです。

 わたしたちは意としていないネガティブな情報にコントロールされているのでは?

 ある若い先生が、「先生のおかげで、わたしの赤ちゃんはこの世に生まれてきました。ありがとうございました」というお母さんの言葉を聞いて、「今まで小児科医になるのを悩んでいたけれど、小児科医になることを決意した」というシーンも報道されていました。

 わたしたちは毎日たくさんの情報に触れますが、外部から得る情報というものを少し疑ってかかるぐらいの気持ちが必要なのかもしれません。そして、自分の目で見て、その状況を感じてみる必要があるのではないでしょうか?

■この構造は、IT業界も同じ(?)

 さて、この構造は、医療界だけでしょうか?

 そうです。IT業界も全く同じ(というより、すべての業界がそうでしょう)。7K職場と言われる業界ですが、本当にきつくて嫌な職場という、それだけなのか? ということを、これからの若きエンジニアの方々には、外部の情報に流されないで、「IT業界で学べることは何か?」をぜひご自身の目で検証していただきたいと思ったのです。

 なぜなら、情報はネガティブなことを流す傾向にあるからです。

 もし、小児科医が「過酷だ」という報道だけでなく、「すっごくやりがいのある仕事だよ」という先生がもっとたくさん報道されたのなら、きっと小児科医になる先生方が増えると思うんですね。

 いい情報はいい人のところに集まります。現在ご活躍されている方のセミナーや講演会に行ってみる、近くで楽しそうに仕事をしている人に話を聞いてみるなどするといいかもしれません。やりがいを持って活躍している人は、必ずいます。

 例えば、今ホームページを作る会社はたくさんありますが、わたしが眺めていて、ホームページを作る会社で楽しそうだなぁと思う会社は「ホームページを作る会社」ではなく「インターネットのマーケティングにホームページというツールを活用している会社」です。その会社がIT業界か? というと疑問ですが、ITというツールを使い込んでいることは間違いありません。他業界にもITというツールを扱っている会社がたくさんあります。少し視野を広げて、活躍されている方のセミナーに行ってみるのも刺激になると思いますよ。

■今、IT業界にいるみなさんへの警鐘

 今、エンジニアの方からは「業界が悪い」という声をよく耳にします。けれども、本当に業界を良くしたいのであれば、誰かが変わるのを待つのではなく一人ひとりが変わるしかないと思います。一人ひとりが情報発信に気を配り、ネガティブな面だけでなく、ポジティブな面にも光を当てていく必要があるのでは?

 ネガティブな情報を発信するなとは言いません。事実は事実として、大いに発信すればいいと思います。けれども、「○○が悪い」で終わるのはもったいないと思うのです。悪いで終わらせておくと、悪いスパイラルが生まれてしまいます。

 物事の意味づけは表裏一体なので、捉え方で悪くもなれば良くもなります。「○○は悪い。だからわたしはこうしたい」「○○は悪い。そのおかげで△△を学んだ」という思考の転換ができれば、IT業界もきっと良くなっていくと思います。「エンジニアライフ」をお読みの方は、そう願っているのではないでしょうか? わたしもそう願ってやみません。

■□■

 次回は、わたしがIT業界にいてよかったと思う面について、お話ししたいと思います。

Comment(9)

コメント

mm70663

医療とITは一緒にならんでしょう。

使命感に燃え医療に携わる医師のやる気を挫くには、
「医療ミス訴訟」一発、「たらい回し批判報道」一発で十分なんだから。
それ以前に、やる気が持続しても、社会的に抹殺されることもあるし。
これは、イメージだけじゃなく、実例が多数あるのは報道の通り。

そのリスクを含んだ上での「過酷な条件」なのだから、
単に仕事がしんどい(それだけでも十分問題なのはわかりますが)だけの
IT業界と一緒に論ずることは少々乱暴過ぎやしませんか?

■mm70663 さん

> そのリスクを含んだ上での「過酷な条件」なのだから、
> 単に仕事がしんどい(それだけでも十分問題なのはわかりますが)だけの
> IT業界と一緒に論ずることは少々乱暴過ぎやしませんか?

「労働条件」にフォーカスすると、確かにmm70663さんのおっしゃる通りかもしれません。

この記事でお伝えしたかったことは「労働条件」というよりは、むしろ「情報操作」についてお話したいと思い書いてみました。外から得る情報に「情報は本当にそうなのか?」「自分が気が付かないうちに流されてはいないか?」「もう少し自分の肌で感じてみよう」「情報を出す側も意識しよう」ということを書きたいと思いました。

医療現場を例に出したのは、この記事を書こうというきっかけになったので出しましたが、他の例でもよかっと思います。

コメントいただきましたことに感謝いたします。

taku

労働条件が悪いなら、会社と戦ってでもその悪い労働条件を変えるべきでしょう。
IT業界だけではないかもしれませんが、会社や業界が悪いとは言うけど、それを変えようとする人があまりにも少なすぎます。
ちなみに、私は過去にそういう経験があり、一人で会社と戦って、労働条件を改善させた上で、退職したこともあります。
私はこと労働条件に関しては、ITも医療も一緒で、日本全体の問題だと思っています。

mm70663

竹内様
わざわざお返事いただき、ありがとうございます。

>むしろ「情報操作」についてお話したいと思い書いてみました。
私が医療訴訟やたらい回しについて指摘したのも、
ある意味皮肉なことですが、
正にこの「情報操作」を危惧したからです。

率直に言って竹内様の文章は、
「自分の意見を述べる上で都合が悪いから、
医療訴訟やたらい回しについては触れなかった」
と私には見えたのです。

情報操作の手口や危険性を自ら演じて見せた、
と好意的に解釈することも可能です。
が、でなければ情報操作について語る際に、
自ら情報操作して見せるのはダブルスタンダードであり、
ご自身の主張の信頼性を損ねることになっても
仕方ないと思いますが、いかがでしょうか。

taku様
>労働条件を改善させた上で、退職したこともあります。
例えば、扶養家族がいれば、こんなことはできませんよね。
結局、その業界に首根っこを押さえられていない、
新規就業者が「No」を突きつけるのが
現実的で効果のある唯一の方法だと私は思うのですが。
#直訴すれば打ち首って、江戸時代か?っての。

■mm70663 さん

コメントありがとうございます。

>「自分の意見を述べる上で都合が悪いから、
>医療訴訟やたらい回しについては触れなかった」

なるほど、そのように捕らえられたのですね。

ひょっとしたら、今回の記事が「悪いことを隠していいことだけを発信してほしい」と伝わったのかもしれません。

今回お話したかったのは、

・たくさんある情報を自分が解釈するとき、情報だけを鵜呑みにしないで自分の目で確かめて見ることが大切なのでは?

・情報を発信する側は、事実は事実として発信する上で、「いい/悪い」の解釈を発信するなら他の表現方法もあるのでは?

という2点です。

医療訴訟やたらい回しは事実ですし、過酷な労働条件も事実だと思います。事実は変えようがありませんので事実として発信すべきなのではないでしょうか?

今回はわたしがお伝えしたい2点を書く際に、医療訴訟やたらい回しについて頭の中に浮かんできておりませんでしたので文章にはなりませんでしたが、もし浮かんできていたら、何かしらの文章となったかもしれません。

意図的に触れなかったということはありませんのでご理解いただけばと思います。

大変勉強になりました。ありがとうございました。

■takuさん

> 労働条件が悪いなら、会社と戦ってでもその悪い労働条件を変えるべきでしょう。
> ちなみに、私は過去にそういう経験があり、一人で会社と戦って、労働条件を改善させた上で、退職したこともあります。
takuさんは行動を起こされたのですね。

> 私はこと労働条件に関しては、ITも医療も一緒で、日本全体の問題だと思っています。
確かに、日本全体の問題なのかもしれませんね。

国に「日本が悪い」と伝えることはとても大切だと思います。一方で、国に即効性のある対策を期待してもなかなか動かないのは見ての通りですし、takuさんのような行動を起こせる勇気はすばらしいことだと思いました。

gemo

■mm70663 さん

あなたのような方が、「○○が悪い」と否定的な言葉を発するだけで終わってしまい、特に何も行動に移そうとしない方なのかなと感じました。

>結局、その業界に首根っこを押さえられていない、
>新規就業者が「No」を突きつけるのが
>現実的で効果のある唯一の方法だと私は思うのですが。
という、まさに他力本願な記述がありましたので、確信が持てました。

マイナスな理由を集めて文句や愚痴ばかり言い、
解決や改善に向けてのプラス思考が持てないのでは何も代わりませんね。
これじゃ確かに駄目です。

反面教師として、とても参考になりました。
有難うございました。

mm70663

gemoさん:
>マイナスな理由を集めて文句や愚痴ばかり言い、
>解決や改善に向けてのプラス思考が持てないのでは何も代わりませんね。
>これじゃ確かに駄目です。
正にこの方のおっしゃる通り。
>ポジティブな面にも光を当てていく必要があるのでは?
もまた、「解決や改善に向けてのプラス思考」でないことが言いたかった。

本来は、ネガティブ情報は事実なのかそうでないのか、
事実でなければ正しく反論すべきだし、
事実ならば改善の方策を示すべき。
情報操作には情報操作で対抗する、みたいなやり方はどうか、
と思っただけのことです。

To:gemoさん
ご指摘はごもっともですが、
残念ながら、私はIT業界人じゃありませんので、
解決や改善にお役に立てることはほとんどありません。

■みなさま
たくさんのコメントありがとうございます。

価値観は人それぞれかと思います。

わたしへのご批判は真摯に受け止めますが、
みなさま同士のご批判は望んでおりません。

みなさま同士のご批判はご遠慮いただきますようお願いいたします。

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