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「仕事へのこだわり」――エンジニアと大工さんの意外な関係

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 エンジニアの不死身力、新しい記事が公開になりました。

 「エンジニアとしてのこだわり」と「仕事の評価」の関係

 この記事は、つい最近わたしが顧客からお伺いした実体験を元に書いてみました。

 エンジニアの皆さんは、スキルにこだわりをもっている方も多いと思います。技術者ですから、スキルにこだわるのは当然のこと。

 こだわりが評価される方向につながるのならいいのですが、実際には顧客からの評価を落とすことにつながったり、こだわるもの同士のイザコザに発展したりすることもありますよね。「ボクは(わたしは)こんなにスキルがあるのに、なんで分かってくれないんだろう」……そんな思いを抱かれたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

 せっかくスキルにこだわっているのなら、そのこだわりによって、顧客や上司から「やっぱり○○さんはできるな」のような、皆さんの評価につながるように生かしてほしいなと思い、今回の記事を書こうと思いました。

 もし、よろしければ読んでみてくださいね。

■大工さんの世界にもある、「仕事へのこだわり」が招く顧客とのギャップ

 で、話は変わって……。

 今回の記事の舞台となった工務店さん。いま、ホームページを変えるお話を進めています。どんな文章をホームページに載せるかを一緒に考えているのですが、実はいま、工務店のホームページの中で、IT業界でわたしたちが体験するような「こだわり」による顧客とのギャップが起きているんです。で、「顧客が分かってくれない」と。

 こだわりがある職場だからこそ、同じような現象が起こっているんだな~と思っています。では、大工さんの世界でどんなことが起きているのか、ご紹介しましょう。

 ところで、皆さんがもし家を建てるとしたら、どんな家を建てたいですか?

 「天井が高く吹き抜けていて、思わず背伸びをしたくなる家」かもしれませんし、「窓を開けると、森から流れてくる新鮮な空気を胸いっぱいになるまで深呼吸できる家」かもしれません。「お気に入りのデザインの家具を眺め、ゆっくりコーヒーを飲みながらリラックスできる家」かもしれませんし、「家族の笑顔が見え、安心感があるキッチンで、自慢の料理をふるまえる家」かもしれません。

 わたしは雪国に住んでいるので、冬でも暖かい家が欲しいです。雪国の家は、一歩廊下に出ると、そこはまるで氷の上を歩いているかのよう。お風呂場はさらに最悪です。脱衣所で裸になり、タイルに足をつけた瞬間の「ヒヤッ」とした冷たさといったらありません。あと、屋根の雪や除雪が大変なので、できるだけ人の手がかからない家が欲しいな~。

 「あ~、もっと快適にすごせる家が欲しい……」

 そう、わたしたちは「快適に過ごせる家」が欲しいんですよね。

 では、工務店のホームページにどんな言葉が並んでいるのかと言いますと、「高気密、高断熱」「家具職人が作るこだわりのキッチン」「こだわりの自然素材」などです。

 もうお気付きの方もいらっしゃるかもしれませんが、工務店のホームページには、「工務店のこだわり」が書いてあるだけで、わたしたちが快適に過ごしたいと思っていることが一切書かれていないのです(多くの工務店がそうです)。

 わたしたちは「快適に過ごせる家」が欲しい。こだわるなら、そこにこだわりたい。でも、工務店のこだわりは「高気密、高断熱」「手作りのこだわり」「素材のこだわり」。これ、顧客のこだわりと、工務店のこだわりのギャップです。

 だから、わたしは工務店の社長にこう言っています。

 「わたしがこれから家を建てるとしたら……暖かい家が欲しいのであって、高気密、高断熱の家が欲しいわけではありません。暖かい家を実現するのに、高気密、高断熱が必要なのかもしれませんが、しつこいようですが高気密、高断熱の家が欲しいわけではないんです。今まで、お客さんの声で、『○○の家が欲しい』というような声はなかったでしょうか?そういう『お客さんが欲しいと思っていること。それを実現できること』をホームページでアピールできたら、きっとお客さんも読んでくれるでしょうね。」

 何度かこの話をしていたら、「このホームページじゃだめだね」「最近、仕事に対する方向性が見えてきた」と工務店の社長は言ってくれるようになってきました。

■こだわりがあるからこその構造

 この構造、IT業界でもまったく同じだと思うんですよね。大工さんも、仕事にこだわりがあるからそうなるように、IT業界のエンジニアの皆さんも、スキルにこだわりがあるからこそ、スキルを中心にアピールしたくなるのではないかと思います。

 でも、顧客の評価は、

 「このキモチ、分かってよ」

というのを分かってくれて、それを埋めてくれるから評価されるのではないかと思うんですよね。先ほどの家の話なら、

 「高気密、高断熱の家、いりませんか?」

だったら、「いえ、結構です」って感じです。でも、

 「冬が寒くてお困りなんですね。暖かい家に住みたいですよね? そのためには……」

だったら、「はい、住みたいです」となります。なぜなら、わたしが困っているのは、「寒い!」ということだから。

 「冬の、足が冷たいってキモチ、分かってよ。お風呂が寒いってキモチ、分かってよ」

なんです。寒いというキモチを分かってくれて、それを実現するために、高い技術で家を作ってくれそう。だから、信頼するし評価をするんですよね。

 IT業界にいるエンジニアの皆さんだとどうでしょうか。

 「高いITのスキル、いりませんか?」

だったら、確かに欲しい人もいるかもしれませんが、

 「○○にお困りなんですね。それなら、○○で実現できますよ」

だったら、「はい、それを解決したいです」って感じになると思います。

 「そんなに簡単じゃない」という方もいらっしゃるかもしれません。もちろん、このような1行で表現できるほど簡単ではないです。けれども、このような視点が大切なのではないかと、顧客と接する中で、最近特に感じます。

 「エンジニアとしてのこだわり」と「仕事の評価」の関係の最後にも書きましたが、

  • 顧客が何に困っているのかを知り
  • 「それを何とかしたい」という欲求を満たすためには何が必要なのかを考え
  • 自分が持っているスキルを当てはめていく

 こんな流れを作ることで、高いスキルが評価されるようになるんじゃないかな~と思っています。。

 「顧客の気持ちを考えろ」とお説教じみたことを言うつもりはありません。顧客の気持ちを考えるのって、なかなか難しいですよね。でも、顧客が困っていることを埋めてあげること。それが評価につながることもまた、事実。

 どうせ働くなら、仕事が評価され、楽しく仕事をしていきたいものです。今回の記事が、そのヒントになれば幸いです。

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