本配属編!係長のローボール説得法
例の町工場のような職場へ課長に連れられて先輩社員たちの前で自己紹介。ここの職場には自分をふくめて新人は三人配属。もちろん女性など一人も居ない。技術職という言葉に憧れていたのだが、今はそんなことをイメージする余裕すらない。結局、本配属初日は課長、係長、班長の話しで一日が終わった。話しと言うのは仕事の内容だ。会社全体の設備を管理、修理、点検、保守。こんな感じなことを言われた。要するに「何でも屋!」ってやつだ。しかし、英語で言えばフィールドエンジニアって、聞こえが良い。「何でも屋!」だとちょっとダサく聞こえるけど、やっていることは凄い高度な仕事だった。
だって、その名のとおり、なんでも出来なければいけないのだ。電気、電子、機械、土木、組み立て、コンピューター、ときには廃棄ゴミ専用の作業服を来て下水の修理や掃除などもする。だから全ての職種の基本がわかってないと務まらない仕事なんです。とにかくこの日はそういう話しばかりで興味はなかったから睡魔との戦いだった。次の日には自分の配属された班の人たちと自分の自己紹介。先輩についていよいよ工場の巡回。とにかくでかい。大企業だけのことはある。別の工場へ移動するにも、車や自転車を使うのだ。そして工場のあちらこちらにテレビCMで放映されている製品が並んでいる。工場の巡回だけで一日かかってしまう。
そして配属から一週間は定時で帰れたのだが、次の週からは残業。先輩にくっついていろんなとこに行くのだが、さっぱりわからない。わかるわけがない。気が付けば勤務表には土曜、日曜も出勤の印が付けられていた。いきなり休日出勤か。配属前にここの係長から「たまに土曜、日曜も出勤してもらうことがあるから」って言われたことを思い出したのだが、いきなり月曜から日曜日まで休みなしの出勤なんて19歳の自分にはキツイ。最初に都合の良いことだけを話して相手を安心させて引き込み、引き込んでしまったら都合の悪いことを公にする。これは車のセールスマンがよく使う手で「ローボール説得法」というんですよね。とにかく経験者ならわかると思うのだが、休日出勤するときのあの虚しさ。周りは休んでるのに自分は駅へ向かうあの虚しさ。いつもの満員電車はガラガラ。早くも自分の中で嫌気がさしてきてしまった。高校時代の同僚たちは週休二日制の職場なんだろうか?なんてことを考えながら、会社へ向かう足取りが重い。