第12回 自己主張と影響力
こないだ、1回しか話したことがない人から社内メールでデートのお誘いが来た。
うそのようなほんとの話である。
SEだったら社内メールなんて筒抜けなことくらい分かっているはずなので、ネタだったのだろうか? 確かに社内のアドレス帳で簡単にメールアドレスは調べられるけれども、なんだか「数うちゃ当たるお手軽作戦」みたいでコンビニ感覚は否めない。わたしはそんなに安い女じゃないのよっ。
というわけで、恋のアプローチくらいはどうぞ対面か、せめて個人ケータイメールで。簡単に手に入るものに大して価値なんかない。
今年も新人が入ってくる時期になりましたね。
わたしが新人のころは、右と左くらいしか分からず、なんとなくいつも呼吸困難気味でした。
というのも、このコラムのウリであるように、10年ぶりに配属された紅一点だったせいもあるけれど、とにかく自分に自信がなくて「スキルがない分は時間でカバーして先輩に追いつく」を信条にしていました。けれど、何もないというのは逆に強みでもあって、「どうせ大して知らないのだから何をしても一緒」と、3カ月ごとぐらいに次々と新しい技術に手を出していきました。でも、言語をある程度経験すると、後はその言語固有の方言に慣れればいいようなもので、何でも屋さんとして重宝がられるようになりました。
職場環境面はというと、課長は典型的な「女は補佐」と思っているタイプで、よく宴会ではいじめられました☆ もー、言葉のセクハラの嵐。さすがに手は出してこなかったけれども。金曜日の飲み会の次の週の月曜日はあんまり会社に行きたくなくて、課長と目も合わせませんでした(笑)。
おじさんたちは食べるペースが速くて、必死にランチを口にほうばっていたことや、「メモリの設定チーロンパー(麻雀用語?)ね」といわれて、768Mだなんてこれっぽっちも気づかなかったりだとか、どうでもいい話は山のようにあります。
でも、一番苦労したのは、プロジェクトメンバーがまともにJavaの開発をやったことがないことでした。運よくJava専門の協力会社さんが来ていたので、その人の隣の席までPCを移動して、常時張り付いているような状態に持ち込み、面倒を見ざるを得ない状態にしてJavaを習得しました。いい迷惑だっただろうな、と思いますが、契約が切れた今でもたまに飲みに行く仲です☆ その節はお世話になりました。
とにかくがむしゃらに仕事の量をこなすことで、やっと自分の仕事の方向性が見えてきたのは2年目の終わりくらいでしょうか。
そのころになると、立派な戦力として認められて、課長のセクハラ発言にも「ちゃんとお金払ってからにしてくださいねっ」なんて言えるようになって、周囲の態度も配属当初とずいぶん変わりました。
「やっぱりここは会社。何があろうととにかく前向きに仕事さえしていれば認められる」と確信できました。
新人に必要なのはずうずうしさだとわたしは思います。そしてそれは、新人の特権でもなんでもなく、SEに必要な能力だと思います(笑)。
ダメなものはダメだと上が言うでしょうし、とにかく自分の希望はアピールし続けたもの勝ちだな、と。暴走気味なら誰かが止めるか、怒るかするでしょう。遠慮なんかしないで会社にぶつかっていってもいいんじゃないかなと思います。これは権力のない若手の特権だと思います。会社にとって影響力がないからこそ、間違ったことが堂々と言えるのではないかと。間違いを正してもらえるうちに間違えておこう、みたいな、ある種の甘えですね。ただし、先輩の意見に耳を貸せる素直さがないとただの困った人ですけれど。
今年はそろそろ指導する立場になる歳だし、新人の教育係でもやってみよっかな。