UXの一部としてのエンジニア
とある休日の昼下がり、部屋でくつろいでいるところに突然電話が鳴った。受話器を取って相手の第一声がわたしの鼓膜を震わせるやいなや、わたしの心に警告音が鳴り響いた。
最初の1音節でそれとわかる完璧なセールス声。声の出し方、抑揚、スピード、それらすべてにわざとらしさが滲み出ている。完全無欠のセールス声だ。マニュアル通り、何度も練習したことをうかがわせるよどみないリズム感。
完璧だ。わたしが生理的に受け付けることのできない、もっとも嫌いなしゃべり方が、受話器の先から届けられたのだ。
■しゃべり方ひとつで人は不快な気分になる
わたしにとってはセールスの内容以前に、そんなしゃべり方が耳に入ってくること自体が苦痛なのだ。
断っておくが、すべてのセールストークを否定しているわけではない。しかし、家にかかってくるセールス電話はどうしてみんなおんなじようなしゃべり方をするのだろう? 人の神経を逆なでするようなあのしゃべり方を。
というわけで電話の向こうのおばちゃんには大変申し訳ないのだが、話を速攻でさえぎって興味がない旨を伝えた上で、今忙しいからと断って電話を切った。
あれはいったい何のセールスだったのだろう。
■生理的な嫌悪感はたとえ仕事の上でも除去できない
そういえば以前、情報システム系の部署に所属していたころには、よく様々な製品やサービスなどの営業電話が掛かって来たが、やはり、いかがわしさをプンプン漂わせたしゃべり方をされると、そういうフィルターをかけてしまうことが多かった。もちろん、さすがに会社ではセールスの内容も聞かずに門前払いすることはなかったが。
しかし製品の比較をする際に、名刺交換した担当者の印象が少なからず製品の評価に影響を及ぼすことがあったのは確かだ。
■それもユーザエクスペリエンス
何がいいたいかというと、ユーザエクスペリエンスというものは製品だけで完結するものではなく、営業やサポート、受託開発なら打ち合わせに顔を出したりメールでやり取りするエンジニアも含めてのものなのだ、ということだ。
だからわれわれは、完成した製品のみでなく、プロジェクトの進行中すべてのフェーズでユーザに満足感を与えられるエクスペリエンスを提供し続けなければならないのだ。
ユーザとの打ち合わせ、作成する資料、電話やメール。あなたの言動はユーザーに対して、快適なエクスペリエンスを提供できているだろうか?