記憶に残るドキュメント、記憶に残る進捗報告
Youtubeにアップされたバージン・アメリカの機内安全ビデオが話題になっている。
私も仕事やプライベートの旅行で、何度も飛行機を利用している。しかし、正直に告白すると、離陸前にマジメにCAの説明を聴いたり、ビデオに注目した記憶がない。
そんな私が、このムービーは何度も繰り返し観ている。その違いはなんだろう?
YouTube: Virgin America Safety Video #VXsafetydance
■なぜ、この機内安全ビデオは見たくなるのか?
その秘密は、このムービーの出だしの歌詞に表れている。
「ショーを楽しんでね!」
そう、これは楽しいショーなのだ。退屈で小難しい説明ではなくて。
小難しい説明というのは、そもそも聴く気にならないし、その結果として当然のことながら記憶に残らない。だから、学校の授業の内容はほとんど思い出すことができないのだ。
ところが、そんな授業の中で、なぜかいつまでも鮮明に記憶に残っているものもある。それはどういうものかというと、先生の言い回しが妙に面白かったり、個人的に興味をそそられる話だったり。つまり、楽しいことは、けっこう記憶に残っているものだ。
■伝えることを軽く考えていないか?
ヒトに何かを伝えるというのは、実はとても難しいことで、それは事実を淡々と説明するだけでは十分でなく、相手の記憶に残るようなものにする努力が必要となる。
映画、演劇、音楽、絵画、写真、小説、その他さまざまな創作活動は、ヒトの心に響くものを生み出す。だから人々はそれを楽しみ、記憶に刻み付けるのだ。バージン・アメリカの「ショー」も、まさにその1つといえるだろう。
IT業界でも、さまざまな局面でヒトに何かを伝える必要性に迫られる。新商品や新サービスのプレゼン、設計ドキュメント、操作説明マニュアル、それに、日々の進捗報告。
そのとき、われわれは相手の記憶に残るような努力をしているだろうか?
相手の記憶に残らなければ、何も伝えていないことになる。伝わらない進捗報告は、時間のムダでしかない。伝わらないドキュメントを書くのも時間のムダだし、それを読むのも時間のムダだ。
■記憶に残るドキュメントを書こう
別に、おもしろおかしいドキュメントを作れといっているわけではない。ミュージカル仕立てで進捗を報告しろといっているわけでもない。
しかし、例えば同じ箇条書きのドキュメントを作るにしても、そのドキュメントを読む相手を思い浮かべて、少しでもわかりやすく、記憶に残りやすい書き方を工夫するのと、なにも考えずに淡々と書くのとでは、読者が読んだときの印象はまったく違うものになる。
ありがちなことだが、箇条書きにすると簡潔さを意識するあまり、言葉足らずになってしまうことがある。
そのときに読者ではなく、文の簡潔さだけを見ていると、そのまま気にせずに書き続けてしまう。そこでふと「なるほど、そうか!」と読者を頷かせようと考えたなら、そこに図を付け足したくなるかも知れない。あるいは、箇条書きでなく、もっと別の書き方はできないだろうかと考えるかも知れない。それが出発点だ。
■記憶に残る進捗報告をしよう
報告にしても同じだ。聴き手の記憶に残る報告をすれば、相手はあなたのことを気にかけてくれるだろう。例えばアラートを上げるとき、そのアラートが印象深く相手の心に響けば、迅速に対策を施すジャッジをしてくれるかも知れない。
逆に印象が薄く、相手の心に響かないような報告をしていると、何のアクションも起こしてくれないかも知れない。
記憶に残る、心に響くような努力もせずに、「上の奴らは分かっちゃいない!」などと愚痴っても、事態は少しも改善しない。
ヒトを変えようとするより、まず自分が変われ、などと教訓めいたことをいっているように聞こえるかも知れないが、そうではない。周囲から好印象を抱かれれば、それは評価に直結するではないか!
これは自己防衛対策なのだ。だからもちろん、悪い意味で記憶に残るようなことをやらかしてはいけない。