中間管理職よ、大志を抱け
中間管理職という言葉は、なんともウラ悲しい響きを持っている。
経営的な知識では経営層におよばず、技術的な知識では若手の部下たちにおよばない。上からは叩かれ、下からは突き上げられ、疲れ切って精気のない顔で家に帰れば、家庭の中でも存在感は限りなく薄まっていく。
■中間管理職はミドルウェアである
しかし、このポジションのことをIT業界らしくカタカナで「ミドル」と言ってみると、イメージがガラリと変わる。
ナイス・ミドルのミドルだ。爽やかな風が吹いて来そうではないか。ミドルウェアのミドルだ。いかにも重要な役割を担っていそうではないか。
実際のところ、中間管理職は現場レイヤーで使われているプロトコルと経営レイヤーで使われているプロトコルの違いを吸収し、相互のレイヤー間のコミュニケーションを円滑に行うために必要なさまざまな機能を提供するという重要な役割を担っているのだ。
このミドルレイヤーの性能が、企業のパフォーマンスを大きく左右するといっても過言ではない。
■ボトルネックとなる原因
しかし、うまく機能していないミドルレイヤーは、保身のために、上に対しても下に対しても被害者顔で立ち振る舞うことが多い。その典型的な口ぐせは、「上のレイヤーは(下のレイヤーは)こう言っているんです」。
つまり、上下のレイヤーから発信された情報をそのまま転送しているだけだ。自分の意見を口にすることはあまりない。さらに厄介なのは、自分に都合の悪い情報はフィルタリングしてしまうことだ。
もちろんこのようなミドルレイヤーなら無い方がマシだ。
■ミドルウェアとしての誇りを取り戻せ
そんな中間管理職に必要なのは、ミドルウェアとして必要な機能を実装することだ。エンジニア上がりの中間管理職なら、要件定義などお手の物ではないだろうか?
現状を分析し、上下のレイヤーの要求を整理し、優先順位を付けて少しずつでもバージョンアップを繰り返すのだ。
考えようによっては、このポジションは上下双方のレイヤーに影響を及ぼし自分の目指す方向にコントロールできる面白いポジションなのだ。
まずは業界の情報を継続的に集めて動向に敏感になり、同時に技術動向にもアンテナを張り巡らせる。(これは部下にやらせる。調査や検証はエンジニアの本懐だ。喜んでやるだろう。)
そして自分なりに「これからこの業界はこうなる。だからこういう方向で進める必要がある。」というビジョンを確立するのだ。
ビジョンが必要なのは経営者だけではない。結局のところ、人が誰かに惹きつけられて「この人について行こう」と思うのは、ビジョンに共鳴するからだ。
■中間管理職は現場寄りの方がいい
ところで、気をつけるべきはポジション取りだ。あまり現場寄りの態度を取ると、経営層から疎んじられそうに思うかも知れない。逆に、経営者側に立つと現場からの反発が怖い。
結論からいうと、スタンスとしては現場寄りでいる方がいい。現場感覚のない中間管理職など、上にとっても下にとっても意味がない。もしも、それすらわからず上意下達のみを要求するような経営層ばかりの会社なら、長居する価値はない。
現場感覚を持ちつつ、自分なりに目指すべき方向性を持ち、それを部下にも上司にも発信し続け、双方の橋渡しとなる。
それでこそ、そのポジションにいる意味があるというものだ。そういう人は、結局のところ、下からも上からも必要とされる。
そしてもしも、経営層と自分の目指す方向性のあいだに埋めることのできない溝ができてしまったならば、胸を張って次の職場に移ればいい。そのようなポジションは、どこの企業でも不足しているのだから。
本気で大志を抱いている中間管理職の需要というものは、想像以上にあるものなのだ。
だから中間管理職よ、大志を抱け。本気になったあなたを、現場は待ち望んでいる。