「生活イチバン、ITニバン」という視点で、自分なりのITを追及するフリーエンジニアです。ストレスを減らすIT、心身ともにラクチンにしてくれるITとはどんなものかを考えていきます。

スローなアジャイルにしてくれ

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 世の中アジャイルが全盛だ。ビジネスもアジャイル、開発の現場もアジャイル。俊敏に、素早く、変化に振り回されて、膨大なエネルギーを浪費しながら世界は回っている。

■速けりゃイイってもんじゃない

 もちろん、この変化の激しい乱世に生き残るためには、俊敏さは必要だ。のんびり構えていたら、あっという間に時代に取り残されてしまうだろう。

 しかし、ただ単に俊敏に行動するだけでは、上にも書いたように、膨大なエネルギーを浪費するだけ、という結果にならないとも限らない。浪費とは無駄ということだ。

 どうも巷では、アジャイルという言葉がひとり歩きして、間違った認識を持っている人が多いように感じられる。

■都市伝説に惑わされるな

 そういえば多くの人は、「拙速は巧遅に勝る」とか「兵は拙速を尊ぶ」を、「あーだこーだと考えるより、まず行動しろよ!」という意味で、それを孫子の言葉だと思っているようだが、これは単なる都市伝説だ。

 そもそも孫子は「計篇」において事前準備の重要性を、口をすっぱくして言っているのだ。その舌の根も乾かぬうちに「いいから、やれ!!」みたいなことを、言うわけがない。

 「作戦篇」に書いてあるのは、「戦争はコストもかかるし、長引いたらいろいろとヤバいことが起きるから、欲をかいて長期化・泥沼化するようなリスクは避けて、当初の目的を達成したら、適当なところでサクッと終わらせろ」ということだ。「計篇」で既に戦略的に勝つための算段は出来ているのだから。

■アジャイルは計画的に

 翻って、今の日本では行動の速さだけを尊ぶ風潮がある。孫子が戦争を速く終結できたのは、事前準備がしっかりできていたからなのだが、そこは全く無視して、とにかく身軽に素早く行動することだけを求める。しかも、どちらかというと、孫子のいう終結までの速さではなく、スタートの速さや、たくさんのことを詰め込むために作業を速くすることばかりを求めているように感じる。

 ゴール(落とし所)も決めずに走り始めるような、無謀な行動はアジャイルとは言えない。それは単に、俊敏に反復横跳びをしているだけだ。前には進めず、エネルギーだけを消耗する。

 そのような、巷で言われてるような「拙速」を尊んだアジャイルをやっていると、きっとプロジェクトは泥沼化するだろう。そうではなく、綿密な計画を建て、ゴールもしっかりと定めた上で、素早くプロジェクトを完了させるべきなのだ。

 あなたのプロジェクトは反復横跳びになっていないだろうか? もしなっているなら、一度立ち止まってゴールを再確認した方がよい。

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