「生活イチバン、ITニバン」という視点で、自分なりのITを追及するフリーエンジニアです。ストレスを減らすIT、心身ともにラクチンにしてくれるITとはどんなものかを考えていきます。

「継続的バック・アップ」でプロジェクトを乗り切ろう

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 障害対策としてのバックアップの重要性は、誰の目にも明らかなことであって今さら私がここで力説するまでもないだろう。しかし、プロジェクトの障害対策としても、バックアップが非常に重要だということを忘れてはならない。

 プロジェクトの障害といえば、やはりコミュニケーションの問題が多い。ということで、ここではコミュニケーションにおけるバックアップについて考えてみよう。

■それはエビデンスの話ではなく

 ただし、ここでいうバックアップは一般的なバックアップとは少し意味合いが違う。

 コミュニケーションのバックアップというと、「あぁ、なるほどね。言った言わないでトラブるのを回避するためにエビデンスを残すことだな」と思った方が多いのではないだろうか。だが、そうではない。私はコミュニケーション「を」バックアップするとはいっていない。

 だから、たとえば会議の内容をレコーダーに収めておいて、芝居の台本のように発言を一言一句逃さないばかりか、参加者の感情の推移まで精緻に記述した格調高い議事録を書くべきだとか、会議だけでなく廊下や休憩室でのちょっとした立ち話までレコーディングしておいて、いつでも誰でも聞けるフォルダにアップするとか、ましてやクライアントとの電話でのやり取りまでレコーディングするとか、そういう話では全然ないのだ。

■それはBackupの話でもない

 では、何の話かというと、今回のタイトルに少し違和感を覚えた方も多いと思うが、バックとアップの間に中黒(・)が入っているところが伏線になっている。

 つまり、このバックとアップは、プロジェクトを円滑に進めていくために必要な2つの大切な習慣を示しているのだ。それは、フィードバックフォローアップだ。

 大切なことだから、もう一度いっておく。フィードバックとフォローアップ。これはプロジェクトを円滑に進めていくための、いわば潤滑油のようなものだ。

■成果物に対するフィードバック

 フィードバックとは、アウトプットを受け取る側を主体として考えると、自分が得た情報に対して、その情報を自分が正しく理解し、みんなと認識を共有しあっているかどうかを発信者に対して確認することによって理解度を向上させる活動ともいえる。

 指示を受けたら、その内容を復唱し、作業範囲、やり方、納期などを確認する。不明点をクリアにして、指示という名のアウトプットの精度を高めるのだ。また、ドキュメントやプログラムなどの成果物に欠陥を見つけたら必ず確認したり、プロジェクトが終わったら、次回に生かすために反省会を実施するといった、本来の意味でのフィードバックも、もちろん大切だ。

 ただし、非公式な場(仲間内での飲み会)での愚痴や議論は公式な場へのフィードバックにならない場合があるという点については、注意が必要だろう。

■プロセスに対するフォローアップ

 一方、フォローアップはプロセスに対して行われる。たとえば、自分が発した指示、質問などは、WBSに含まれていない小さなものであったとしても、それをトリガーとして何らかのプロセスが走り始める。それが適切に伝わっているか、忘れられていないか、適切なタイミングで結果を得られそうかといったことを常に気にかける必要がある。

 また、自分が作成した資料や各種成果物についても、外部からのフィードバックを待つだけでなく、漏れ、矛盾などの欠陥がなく、定められた基準を満たしているかのチェックが行われているかどうかを積極的に確認することも大切だ。

 ただし、高圧的・強権的な態度では相手にフォローアップとは感じてもらえない可能性が高く、プロジェクトメンバーのストレスを高めることにもなりかねないので、要注意だ。

■継続は力なり

 しつこいようだが、とても大切なことだからもう一度いっておく。成果物に対するフィードバックとプロセスに対するフォローアップ。2つ合わせて「バック・アップ」。とにかくこれらの習慣はプロジェクト・コミュニケーションの基本中の基本だ。基本であり、大切なことであるこれらは、当然のことながら継続的に行う必要がある。継続するからこそ習慣といえるのだ。

 レビュー時に「ここは曖昧だったので、こういう想定で作業しました」というのは、フィードバックが働いていない証拠だ。また、納期直前になって、突然思い出して「あれどうなった?」と聞くのもフォローアップとはいえない。

 これでは継続されているとはいえないし、習慣化されているともいえない。今回は「継続的」という部分を強調したいので、「継続的デリバリー」に習って「継続的バック・アップ」と呼ぶことにしてみようか。

 もしもあなたのプロジェクトで「えっ!? あれってそういう意味だったんですか?」とか、「なんでもっと早く言わなかったんだ!」などという悲鳴や怒声が頻繁に聞こえてくるようなら、ぜひとも今日からこの「継続的バック・アップ」を試してみていただきたい。

 最後にもう一度。成果物に対するフィードバックとプロセスに対するフォローアップ。2つ合わせてさらに習慣化するために、「継続的バック・アップ」を励行しよう。

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