リスクを抱擁せよ
ジェダイの騎士は「フォースの共にあらんことを」といったが、リスクは願わなくても常に我々と共にある。
例えば、仕事を引き受けるということは、リスクを負うということだ。プロジェクトに失敗して「考えが甘かった!」と悔いるとき、それはリスクに対する認識の甘さを悔いているのだ。
だからリスクを正しく把握して、それと正面から向き合う姿勢が何よりも大切なことだといえる。ということで、今回はリスクとの付き合い方を考えてみよう。
■世界はリスクで満ちている
私は先ほど、仕事を引き受けることとリスクを負うことは等価であるといった。つまり、すべての完了していない仕事はリスクなのだ。そして仕事を進めるということはリスクを減らすことであり、我々はリスクと向き合うために満員電車に揺られて家と職場を往復しているというわけだ。
もっとも、リスクは職場だけにあるものではない。犬も歩けば棒に当たるし、猿も木から落ちるし、生で肉を食べることにもリスクはついてまわる。人生とは、リスクの荒波を乗りこなすスリリングなスポーツなのだともいえる。
しかし、ここでは「人生」というとスコープが広すぎるので、プロジェクトを進めるに際してのリスクに話を限定しよう。範囲を絞るのはリスク回避の一般的な手法でもあるのでご容赦いただきたい。
■近くて遠い存在
では、それほど身近な存在であるリスクのことを、我々はどれだけ理解しているのだろうか。リスクは対策を取らない限り、常にそこにあるものだが、普段の我々はそれをあまり意識していない。
身近なのに、普段はあまり意識しない存在の代表といえば、やはり家族を措いて他にあるまい。実は、家族との付き合い方の失敗事例を反面教師として、リスクとの正しい付き合い方を身に付けることが可能なのだ。
■リスクとの付き合い方
例えば、親とのコミュニケーションを回避し、責任を転嫁することによって、ストレスを軽減する。これは思春期にありがちな行動パターンなので、身に覚えがある方も多いのではないだろうか。
リスク対策にも、この思春期の行動パターンと同じ「回避」「転嫁」「軽減」があるのは偶然の一致だろうか。
しかし、この思春期の3つの対策には、大切なポイントが抜けている。それは、ステークホルダーのコンセンサスを得ていない点だ。1人で勝手に回避し、勝手に転嫁し、勝手に軽減する。だから家族というプロジェクトチームは崩壊してしまうことになる。
このように失敗した思春期プロジェクトは、一般的に反抗期と呼ばれている。我々はここから教訓を学べるはずだ。つまり、ステークホルダーとの間でコミュニケーションを密にして良好な関係を築き、リスクを回避するための合意形成を取り続けることが、プロジェクトを崩壊から守る第一歩となるのだ。
■リスクを読もう
もう1つ重要なのは、リスクを読むことだ。今度はサーフィンを例に挙げてみよう。サーファーは、ウネリや風の強さや向きなどさまざまな条件を観察して波を読む。プロジェクトがリスクの荒波を乗りこなすスポーツなのだとしたら、サーファーが波を読むように我々もリスクを読まなければならない。
しかし、どうやったらそれが可能なのだろう。
サーファーは波をリスペクトし、そして愛している。それが答えだ。我々もリスクをリスペクトし、そして愛そう。ヒトは皆、尊敬し愛するモノをより深く知ろうとする。そうやってリスクを認識することが、対策を講じるためのトリガーとなる。
前回、私は「ステークホルダーは敵ではない」といった。同じように、リスクも敵ではないのだ。リスクを抱擁し、プロジェクトを成功に導こう。
コメント
なるほど。リスクというとマイナスイメージの言葉ですが、プロジェクトマネジメントの書籍にも、負のリスクと正のリスクがある、と出てましたね。リスクをチャンスにしていくという前向きな気持ちが大切ですね。