「生活イチバン、ITニバン」という視点で、自分なりのITを追及するフリーエンジニアです。ストレスを減らすIT、心身ともにラクチンにしてくれるITとはどんなものかを考えていきます。

エンジニアはもっとトレーニングに注意を払うべきだ

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■いきなり走るな!

 「どんなスポーツでも、初心者はいきなりゲームから入ったりはしない。そんなことをしても上達はしない。でも、なぜかランニングに関しては、多くの人がいきなり走ることから始めている。ランニングの初心者は、走る前にやるべきことがあるのに」

 先日、家の近所で開催されたランニングクリニックに参加したとき、コーチの方がそのような意味のことをおっしゃっていた。

 確かにそうだ。野球もサッカーもテニスも、いきなり試合形式でトレーニングを始めることはまずない。しかし、ランニングの場合、距離は違うにしても、本番と同じスタイル(つまり走るというカタチ)でトレーニングを始めているわけだ。

 「なるほど」と納得しつつ、「いやいや、でもこれってIT業界も同じだよなぁ」と思い至って少しブルーな気分になってしまった。

■入社当時を思い返してみる

 ここでみなさんにお聞きしたいことがある。エンジニアの仕事に就いたときに、トレーニングの仕方を教わったヒトは、どのくらいいるだろうか。トレーニングを受けたヒトではない。トレーニングの仕方だ。わたしは教わらなかった。

 新人向け研修はどこでもやるだろう。IT系のトレーニングコースというのも無数にある。しかし、それらの多くは特定の技術や言語・製品を覚えるのが目的だ。

 これは、スポーツでいえばルールのようなものといえる。もちろんルールを覚えるのは大切なことだが、それだけで技能が向上するわけではない。にもかかわらず、多くの場合、エンジニアは一通りルールを覚えたところでいきなりゲームに参加する。つまり、実戦投入されるということだ。

■実戦だけでは成長できない

 OJTといえば聞こえがいいが、実際にはトレーニングではなくて実戦だ。これではランニングよりヒドイではないか。ルールブックを一読しただけで、トレーニングもせずに、またトレーニングの仕方も知らずに、いきなりゲームに参加するスポーツ選手などいるだろうか。われらがIT業界はそういうことをやっているのだ。

 当然のことだが、実戦の経験を積むことは必要だ。しかし実戦はトレーニングとは違う。実戦でうまくいかなかった原因を探りそれを矯正するために、トレーニングは不可欠なものなのだ。トレーニングする間もなく、実戦ばかりやっているだけでは、成長は望めない。実戦とトレーニングとのバランスが大切なのだ。

■みんなでトレーニングについて考えてみよう

 ところがスポーツの世界と違って、IT業界ではトレーニングは仕事とは認められにくい。だからエンジニアのトレーニングはプライベートな時間を削っての自主トレが中心とならざるを得ない。

 自主トレももちろん大切なことであって、そこが問題なのではない。本当の問題は、ほとんどのエンジニアがトレーニングの仕方を知らないまま、手探りで我流のトレーニングをしているということにある。

 これはIT業界全体で、膨大な時間の無駄づかいをしていることになりはしないか。われわれエンジニアは、そろそろみんなでトレーニング方法を共有することについて、真剣に考えるべきなのかもしれない。

Comment(3)

コメント

インドリ

その通りだと思います。
思い返せば私も入社した時いきなり「特許取れ」と言われて、猛勉強して任務を果たしました。
それから以後も教えてくれる人はおらず、常に聞かれる方で、全て自己学習で今に至ります。
それでよく私は「頼れる師匠や先輩がいれば今の数倍の実力があっただろうに」と思いました。
ただ、自己学習にも一ついい事がありました。
それは、「自分にあったトレーニング法を考える力が身に付いた」事です。
師匠がおらず、欲しい知識・技術・道それら全てを自分で考えなくてならず、負担も大きい半面、飢えを満たすべく余計に知識欲が強まり、自然と自己流が生まれました。
無論だからと言って、今のままでいいと言っているのではありません。
全て自己責任で済ますのではなく、知識欲を高める工夫だとかヒントを用意すればいいのにと思います。
本来その仕組みを作るのが会社であって、現状は余りにも不甲斐ない。
しかし、会社に求めても無理なのは現状が証明しています。
問題意識を持った我々が後輩を育てるしかないと考えております。

nsh1960@twitter

いつもは半ば斜な見方なエセーであるとバイアスをかけて読んでましたがトレーニングの方法(直に言えばOn theJob Trainingのやり方)に関しては全く同感。というわけで今までのエセーも評価修正して読み直すことにします。
25年以上OJTについて周囲を見渡してまるで進化していないなとがっかりしながらスルーする日々です。だから他のトレーニング法についてもきっと。

>インドリさん
入社していきなり「特許取れ」ですか。それはスゴいですね!
確かに、「自分にあったトレーニング法」という意味では、最終的には自分流のカスタマイズは不可欠なのかも知れませんけど、「知識欲を高める工夫やヒント」というのが事前に用意されていて、それを使えると大分違いますよね。
私も、会社に求めても埒があかないので、自分たちで出来るところからやって行くしかないと思っています。

>nsh1960さん
ありがとうございます。
最近は昔よりも短納期なプロジェクトも多くなって、教えるべき側も以前に増して余裕がなくなっているように感じます。こういう状況が、若手エンジニアの成長を遅らせたり、時には成長の芽を摘んでしまったりということもあるので、本当に残念でしかたありません。

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