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あなたの職場はアテネ型? それともローマ型?

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■なぜローマは大きくなれたのか?

 古代ギリシアといえば、多くの人はアテネを筆頭とする都市国家を思い浮かべるだろう。そのアテネの全盛期に隣のイタリア半島では新興国としてローマが力をつけつつあった。ローマも最初は都市国家として生まれた。しかし、最後まで都市国家で終わったアテネとは違い、ローマはやがて拡大し、いつしか広大な領土を持つ地中海の覇権国となる。

 そんなアテネとローマの違いは、どこにあるのだろう。そこから、企業や組織が大きく成長するために必要なものが見えてくるのではないだろうか。

■民主国アテネの実情

 アテネといえば直接民主制で有名なこともあり、自由で開放的な国というイメージが強い。しかし実際のところは、アテネにしろスパルタにしろ、古代ギリシアの都市国家は非常に排他的で閉鎖的な社会だったようだ。

 アテネ市民になる方法はたった1つ、アテネ市民の両親を持つこと。つまり、同じギリシア人でもアテネ以外から移住して三代過ぎようと、アテネ市民になることはできなかった。アテネに学校を開き、アテネの文化発展に寄与したあのアリストテレスですら、一生外国人のままだった。

 またギリシア人は、地中海各地に植民を進めた。しかし独立心の強さが邪魔をして母国と植民地との間は、交流はするが他国としての付き合いしかせず、結果として地中海全域を支配する覇権国となることはできなかった。

■オープンなローマ人

 それに対して、ローマ人の開放的なことといったら、あきれるほどだ!

 ローマでは敗者を奴隷化して排除するのではなく、例えば初期のころにはローマ市内に移住させて自分たちと同等のローマ市民権を与えたりしている。

 それだけではない。ローマは最初、王制の国だったが、市民集会が王を選出していたので、終身の大統領制みたいなものだったと考えられる。その王を、新参の部族から平気で選出したりしていたのだ。このようなやり方は市民の帰属意識も強化しただろうし、新しい血を入れることによって社会の流動性を維持することもできた。

 もちろん、真の意味で都市国家から広大な領土を持つ覇権国となるまでには、さまざまな紆余曲折があったにせよ、ローマはこのような開放的な性格故に、発展することができたのだ。

■企業の発展に必要なもの

 国にしろ企業にしろ、成長するには戦略が必要だ。しかし、それ以前の問題として、排他的か開放的かとった組織の性格が重要ではないだろうか。

 例えば小さな企業の場合、それは経営者の性格そのものでもある。そして困ったことに、経営者とはギリシア人と同じく独立心が強く、排他的な傾向を持つことが多い存在なのだ。

 そのような経営者が率いる企業の場合、最初のうちはうまくいくかもしれないが、拡張路線に転じようとした際に、経営者自身の性格が足を引っ張ってしまう。よくある話で、皆さんも実例の1つや2つは思い浮かぶのではないだろうか。

 しかし今のこのIT業界の中で、他の企業との協力なしに何かを成し遂げることはほとんど不可能だ。経営者に限らず、この業界で生きる人にとって、古代ローマ人から学ぶべきことは多い。

Comment(2)

コメント

レモンT

いつも楽しく読ませていただいております。これまでのコラムにつきましてはいろいろと頷けるところも多かったのですが、今回の内容についてはさすがに突っ込まざるをえないというか、何と言うか……。

>ローマはこのような開放的な性格故に、発展することができたのだ。

 原因と結果が完全に逆だと思いますが……。

>ギリシア人は(中略)地中海全域を支配する覇権国となることはできなかった。

 ヘレニズム文化圏の存在を完全に無視するのはいくらなんでも無茶です(むしろヘレニズムの成立なしに後のローマの発展がありえたとは思えません)。

コメントありがとうございます。
こうやってコメントを頂けると、自分の足りない部分等が分かってとても参考になります!

さて、まず原因と結果が逆という点ですが、確かに、そうせざるを得ない必然というものがあったのかも知れません。ただ、個人でも集団でも、それを受け入れたが故に先に進めた、あるいは逆にそれができずに先に進めなかったということもあると思います。
今回のテーマとしては、その組織のもつ性格と、それにもとづいた行動が組織の成長に影響を及ぼしているという、私の感じている経験則めいたものを表現したかったのです。あまり長文にならずに、それを分かりやすく見せるために、かなり端折った書き方になってしまったようで、特に歴史にお詳しい方々からすれば、逆に「こいつは何を言っているんだ?」と思われてしまったようで、その点は反省しております。

それから、ヘレニズム文化圏の存在を完全に無視していると取られていることについても、私の筆力のなさを痛感させられました。
ひとつのまとまった組織として、都市国家の規模以上にならなかったアテネと、帝国主義的に領土を拡大していったローマを対比させ、組織を大きくするにはどうすればいいかという点にフォーカスしたかっただけで、両者に優劣をつけるような意図はまったくないのです。

もっと言うと、組織は大きくすればいいわけではないとも思っています。個人と同様に組織にも性格があるとすると、その性格に適した行動をする限り、うまく機能するでしょう。それはアテネが示しています。
アテネは、アテネらしく行動したからこそ、後世に語り継がれる結果を残したのだと考えています。
だから、本当は、もっと構想をあたためて、組織の性格にあった成長戦略を提案するようなストーリーにした方が良かったと、反省しています。

というわけで、このように未熟者ではありますが、今後ともよろしくお願いします!

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