オブジェクト開発の神髄
最初に断っておくが、今回のテーマは名著『オブジェクト開発の神髄』とはまったく関係ないし、オブジェクト指向の話ですらない。
じゃぁ何の話かというと、「モノづくり」の話だ。
ものづくりとは、使ってもらってナンボの世界。
だから、UMLを使ってアジャイルでモデル駆動で、といった作り方の話ではなくて、何を作るか、どうしたら使ってもらえるかの話となる。
ヒトは自分が理解できないモノに対して恐怖心をいだく。そしてその恐怖心は、否定的な感情となって行動にあらわれる。
一般的にヒトは歳をとるに従って保守的になり、新しいモノを受け入れにくくなるが、その根底にあるのは理解できないモノに対する恐怖心だろう。
ところで、子供は言葉を覚えるとすぐに、親に質問の嵐を浴びせる。
しかし、世の中の変化が激しい現在、子供の疑問は昔の比ではなく、多様性に富んでいる。
子供は親の知識の守備範囲など知ったことではない。容赦なくその場で浮かんだ疑問をぶつけてくる。
自分が知らないことを子供に聞かれた時、親がどのような態度を取るか。
それが後の親子関係や子供の学習態度に大きな影響を与えることはいうまでもないだろう。
注意してほしいのは、子供は質問の答えだけを学習しているのではない、ということだ。
質問をされたときにどのような対応をすればいいのかも学習している。つまり、あなたがどのような態度を取ったか、ということを記憶し、自分も同じ行動を取るようになるのだ。
あぁ、失礼。やっぱり今日も脱線してしまったようだ。話を元に戻そう。
とにかく今や日本は世界の先陣を切って、超高齢化社会へと突入している。つまり我が国の市場では、新しいモノを受け入れにくい消費者が増加しているということだ。
ここで作り手は「海外に市場を求める」という選択も可能だ。もちろんそれも不可能ではないだろうが、そこまで軽やかに動ける作り手はあまり多くないのではないだろうか。
とすると、多くの作り手は「保守的な市場に順応する」しかないだろう。
では、保守的な市場に対して、どのようなモノを提供すればいいか。重要なのは、コンセプトとストーリーだ。
コンセプトとストーリーは単純で明快であること。また、馴染み深さが重要なファクターとなる。
馴染み深さを感じさせるためには具体的であることも必要だ。
『斬新』とか『これまでにない』といったキーワードは売り文句にはならないどころか、消費者の警戒感を強めることになりかねない。
「太陽と北風」の話でいえば、これは『北風戦略』とでもいうべき愚策だ。
それよりは、今まで当たり前に思っていた日常の中の不便さを解消するといったような、親しみと温かみを与える『太陽戦略』こそ用いるべきだろう。
注意すべき点は、昔ながらのやり方に敬意を表し、あまり極端な『改善』は加えないこと。迂遠に思えるかも知れないが、やりすぎは禁物なのだ。
保守的な消費者をナメてはいけない。
大きすぎる変化、早すぎる変化は消費者にとっては『北風』なのだから。
これからの時代、変化を抱擁する開発者は、変化を忌避する消費者のためにモノづくりをしていかなければならない、というわけだ。