第1回:朝の目覚めとAIと ~タイ~
最近世間を賑わしているAI、特に生成系AIという新たな"パラダイム"にどう向き合えば、私たちの社会、組織、個々人での幸せを手に入れられるのだろうか。今やそれらの間に流れる内外のデータ量は、日々膨大な数値に拍車が掛かっている。IDCによれば、1年間の世界のインターネット上のデータ総量は、2020年で59ゼタバイト(10の21乗バイト)になっており、途方もない数字であることがわかる。そんな日々活発に流通、流動、躍動するデータ群が、各国、各シチュエーションで、実際にどう利活用されているのかを、このコラムを通して、世界中のエピソードからご紹介。毎日の生活、ビジネスシーンでの活かし方のヒントを、さまざまな視点から探ってみたい。
初回は、微笑みの国、タイ。人口約6,609万人のタイでは、ここ数年の健康ブームが続いている。それもそのはず、タイでは虚血性心疾患、脳卒中、ほかにも糖尿病等が近年の死亡上位を占めており、深刻な状況として捉えられている。地域により医療体系に格差はあるが、左様な背景もあり、今年9月に、内閣科学技術省監督下に身を置く、タイ国立科学技術開発庁(NSTDA: National Science and Technology Development Agency)と医療サービス局、マヒドン大学医学部病院が、医療AIデータ共有プラットフォームの開発について合意。1,200万バーツ(日本円で約5億8円)をかけ、国をあげて、医療分野におけるR&D(研究開発)や人材育成等に力をいれていくという。流通データとしては、患者の結核や癌等に関連するデータ等。更には、例えば医療サービス局とタマサート大学が共同開発した"AIChest4All"というソフトは、特に人手不足が深刻である地方の放射線科医を支援することを目的として、心臓病、肺がん、結核のスクリーニングを、それぞれ90%以上という高い精度でいくつかの病院に無料で配布しているとの事。こうした大きな仕組みは、もちろん、プライバシーやセキュリティー等越えなければならない多数の課題がある中での実現。ということで、データを民主化し、社会で還流させる好例の一つだろう。
一方、膨大なデータ等からさまざまなアウトプットを織りなす、画像系生成AIも、誰もが使える状態になりつつあるが、例えば、自身で気づかない深刻な病気等を、お年寄りや子供達に対して、やわらかくやさしい"絵"で表現、可視化し、本人の健康へアラートするアプリ等を、国民みなに無料で配布する等の社会的仕組み等も考えられよう。人生100年といわれる時代の中、健康問題の領域におけるビックデータやAIは、今より更に多くの生活者に関わりを持ってくる。この先、私たちの朝の目覚めの良し悪しは、日々のデータ流通の量と質次第で大きく変わってくるのかもしれない
■参照:
Trio spearhead sharing medical AI data (bangkokpost.com)
2020年の世界データ総量は59ゼタバイト、COVID-19対策でビデオ会議と映像配信が増加 - CNET Japan