第9回:人間のAIの育て方~ブラジル~
ブラジルの国家データ保護局(ANPD)は、Metaが同国内のユーザーデータを人工知能(AI)のトレーニングに使用する計画を中止させた。Metaは新たなプライバシーポリシーのもとで、プラットフォーム上の公開投稿や写真をAI開発に利用する予定だったが、規制当局はこれがユーザーのプライバシーを損なうリスクがあると判断した。
ANPDは、Metaが個人情報をAIトレーニングに使用することで「回復困難な損害」を生じさせる可能性があるとして、同社に対し停止命令を発出。この措置はMetaの全製品に適用され、ユーザーでない個人のデータも含まれる。違反時には、5万レアル(約140万円)/日という高額な罰金も科されることが示されている。
Metaはこの決定に失望を示し、ブラジルの法律に準拠した透明な手続きを取っていると主張している。また、規制が同国のAI開発を妨げ、ブラジルの競争力を低下させる恐れがあると警告している。ブラジルのこの対応は、EUでも同様の反発があったMetaの計画に対する、世界的なプライバシー懸念の一環といえる。
一方、米国では包括的なプライバシー法が存在しないため、Metaは米国のユーザーデータを利用してAI開発を継続中。この規制はブラジル国内のAIイノベーションに影響を与える可能性があり、技術進歩とデータ保護のバランスが求められる。
政策立案者と企業は、プライバシーを尊重しながらAIの活用を促進するための柔軟な規制を模索する必要がある。Metaのケースは、他国のデータ保護政策に影響を与える重要な前例となるだろう。教師データの定義とは、なんなのだろうか。改めて想う。
■参照:
ブラジル、規制措置によりMetaのローカルデータによるAIトレーニングを停止 - Unite.AI
国家データ保護機関がMetaに「ユーザーデータを勝手にAIトレーニングに使うのを即刻停止せよ」と命じる - GIGAZINE