第7回:勝利への要因~ラトビア~
今年のオリンピックが終了した。今回は、フランス・パリという事もあり、幾分メディア関係者も、取材に準備にやや浮足立っている様に見えた。自身も会場近くを行き来した経験があり、そのオリンピック仕様の街並みへの変化に、良くも悪くも時の流れを感じずにはいられなかった。その中でも日本は、海外でのオリンピック参加において過去最多の受賞数だと言う。選手の皆さんの計り知れない努力と、それを支える関係者各位の熱意及びその技術の進歩進化も想像を超えたものがあろう。
さて、さまざまな参加国の中から今回は、ラトビアに注目したいと思う。バルト海に面した小さな国、ラトビア。中世の古都リガの美しい建築物や、豊かな自然が魅力だ。近年はIT産業が発展し、スタートアップ企業も数多く誕生しており、伝統と革新が共存する、北欧風の落ち着いた雰囲気が特徴と言われている。物価も比較的安く、治安も安定しているため、多くの観光客が訪れる。これらをもう少し掘り下げると、"小さな国"と"多言語文化"というキーワードが浮かび上がる。ラトビアは小さな国でありながら、データ利活用において独自の強みを発揮している。
まず、小さな国であることは、データの利活用において意外な利点となる。国土や人口が限られているため、政策の実施やインフラの整備が比較的迅速に行えるのだ。政府や企業は、デジタル化やデータ管理の施策を迅速に導入し、全土に一貫したシステムを展開しやすい環境にある。例えば、公共サービスのデジタル化やデータを活用した行政運営が、効率的に行われている。このスピード感は、大国には難しい統合性を実現し、国家全体でのデータ利活用を促進している。
更に、ラトビアの多言語文化もデータ利活用の推進に貢献している。ラトビアでは、ラトビア語が公用語である一方、ロシア語や英語も広く話されているため、国民が異なる言語間でのコミュニケーションに慣れている。これは、多様なデータソースからの情報を活用する能力が高いことを意味する。例えば、国際的なデータセットや外国企業との連携における多言語対応が容易であり、データのグローバルな利活用が可能。これにより、ラトビア企業は国内市場にとどまらず、国外市場への展開や国際的なビジネスチャンスを積極的に追求することができると言われている。
また、ラトビアの多言語性は、データ解析やAIの分野でも大きな強みとなっている。複数の言語に対応した自然言語処理(NLP)技術の開発や、異文化間でのデータ統合における課題解決において、ラトビアの技術者や研究者は重要な役割を果たしている。これにより、ラトビアはデータサイエンスの分野でも競争力を高め、ヨーロッパ全体で注目される存在となっている。
総じて、ラトビアはその小ささと多言語性を巧みに活用し、データ利活用の分野で独自の強みを築いている。この戦略的なアプローチは、ラトビアをデジタル時代の先駆者として、今後さらに飛躍させる要因となるはずだ。人も国も、自分の強みを見極めることが勝利に繋がる。オリンピックの折、殊更実感する。
■参照:
バルト三国ラトビアがテック系の起業大国に?小国の「ハングリー精神」と「スモールネス」戦略(鐙麻樹) - エキスパート - Yahoo!ニュース
ラトビア人科学者が設立したAI創薬企業「インシリコ」の強み | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
ラトビアのIT産業を支える人材事情 | 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報 - ジェトロ (jetro.go.jp)
ディープテックからアグリテックまで--多数のITスタートアップが育つ小さな国 - ZDNET Japan
ラトビアが急成長を続ける理由 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
Mag_202105_07_VenturesLVA-1.pdf (joi.or.jp)
意外と知らないロシア周辺国「バルト三国のラトビアってどんな国?」 | 読むだけで世界地図が頭に入る本 | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)