第８回：敬意と脅威とデータ利活用～オーストラリア～
オーストラリアにおける最新のデータ利活用は、地理的・社会的背景に根ざした独自のアプローチが際立っている。広大な国土に低密度の人口が点在するという特有の状況下で、政府や企業はデジタルインフラ整備とデータ活用を推進し、リモート地域や先住民コミュニティのニーズに応えるための取り組みを強化している。
まず、リモートエリアや地方地域に焦点を当てたデジタルインフラの整備が進んでいる。国家広域ネットワーク（NBN）は、オーストラリア全土への高速インターネット提供を目的としたプロジェクト等で、特に遠隔地や農業・鉱業地域でのインフラ強化に貢献している。このネットワークを通じて、リモートエリアにおけるデータ活用の可能性が飛躍的に向上し、スマート農業や自動化技術の導入が進行中だ。特に、センサーやドローン技術を活用した農業データの収集・分析により、干ばつ予測や水資源管理の効率化が図られ、持続可能な農業経営が実現されている。オーストラリアはこのような農業のデジタル化を通じて、広大な土地での生産性向上を目指す独自のアプローチを取り続けている。
また、気候変動や自然災害への対策として、データ利活用は重要な役割を果たす。オーストラリアは、森林火災や干ばつといった深刻な自然災害に直面しており、これらの災害に対処するため、政府や研究機関は先端的なデータ分析技術を導入している。特に森林火災に対しては、衛星データやドローン、AIを活用したリアルタイムのモニタリングシステム等が展開されており、火災の発生や拡大を早期に予測・検知する技術が発展。これにより、災害対応が迅速化され、被害を最小限に抑えることを目指す。このようなデータ駆動型のリスク管理は、オーストラリアのような自然災害に頻繁に見舞われる国において非常に有効であり、国独自の取り組みとなっている。
さらに、オーストラリアの先住民コミュニティに対するデータ利活用も、独特のアプローチの一つだ。オーストラリアには多数の先住民コミュニティが存在し、その土地管理や文化的権利の保護が重要な課題となっている。政府は、先住民の土地管理を支援するため、データを活用した政策を推進しており、特に環境保護や持続可能な土地利用に関するデータ共有が進んでいる。先住民の伝統的知識と現代のデータ技術を組み合わせることで、環境保護活動が強化され、先住民が主体的に関与する形での持続可能な資源管理にトライしている。たとえば、土地の燃焼管理や生態系の維持において、先住民の伝統的な知識がデータ分析と結びつけられ、効果的な環境保護を目指している。この取り組みは、先住民の権利を尊重しつつ、データを活用した持続可能な社会づくりを目指す独自のアプローチなのだ。
このように、オーストラリアにおけるデータ利活用は、広大な国土やリモート地域、そして先住民コミュニティの特有のニーズに対応した独自のアプローチを取っている。他国と比較しても、リモートエリアにおけるデータインフラ整備、自然災害へのデータ駆動型対応、そして先住民との協働による持続可能な土地管理といった民族、自然との共生をデータの利活用をもって具現化している様は、情報以上の価値を感じる。
■参照：
オーストラリア先住民の文献を守り伝えるデジタルアーカイブ · Global Voices 日本語
先住民族の権利と知恵を生かす データで見るSDGs【5】：朝日新聞SDGs ACTION! (asahi.com)
オーストラリア政府、ICEYEと提携して災害対応強化へ。洪水と山火事の被害状況を迅速に把握【宇宙ビジネスニュース】 | 宙畑 (sorabatake.jp)
オーストラリア最新森林火災対策！ 世界のAI・衛星技術 | フォレストジャーナル (forest-journal.jp)