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第5回:貨幣の手触り~ケニア~

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データを語る上で、Fintech(Finance + Technology)は外せないドメインの一つだ。2024年、東アフリカ地域において活力に満ちたケニア共和国は目覚ましい発展を遂げている。

首都ナイロビを始めとする各地域において、同国の金融システムの中核を担っているのがモバイルマネーサービス「M-Pesa」である。2007年に誕生して以降、瞬く間に普及し、現在では国民の7割以上がこのサービスを利用しているとされる。ケニア国内の基盤インフラとして不可欠な存在となったのである。

M-Pesaは携帯電話さえあれば誰でも容易に送金や決済を行うことができる。銀行口座を保有していない層も利用可能であり、特に農村部や低所得者層において、金融サービスへのアクセスが飛躍的に向上した。その利用用途は極めて多様であり、友人や家族への送金、公共料金の支払い、食料品や日用品の購入、各種サービスの料金支払いなど、日常生活のあらゆる場面で活用されている。更には、マイクロローンによる少額融資、マイクロ保険による低コストでの保険加入、少額からの貯蓄や投資が可能なサービス、電子商取引における決済手段の提供等での利活用等も挙げられる。こうした新サービスはケニア国民の生活をより豊かで便利なものへと変革する可能性を秘めている。

過日、マイクロソフト社とM-Pesaを提供するVodafone社が、AIにフォーカスした約15億ドルの提携を発表した。今後、更にM-Pesaの進化を支えているのが、データ利活用と人工知能(AI)であろう。M-Pesaは膨大な量の取引データの分析を通じて顧客のニーズや行動パターンを把握し、よりパーソナライズされたサービス提供が可能になるだろう。また、AIの活用により、不正利用の検知や顧客サービスの自動化なども実現できるだろう。

一方で、データ利活用とAI導入においては、データセキュリティ、プライバシー保護、AI倫理といった課題も存在する。個人情報保護の徹底、透明性の高い情報開示、AI開発における倫理的ガイドラインの確立が求められよう。こうした課題を乗り越え、M-Pesaにおけるデータ利活用とAI導入はさらなる進化を遂げていくことが予想される。将来的には金融分野のみならず、教育、医療、農業などの様々な分野においてもM-Pesaが更に活用される事は想像に難くない。データ利活用とAIがもたらす新たな可能性によって、M-Pesaはケニア社会の更なる発展を後押しする重要な役割を担うことになるだろう。また、そうしたデジタルな社会的進化は、文化的な変化にも少なからず影響を与えるだろう。

ケニアという一国に限らず、こうした進化は、実物としての貨幣の"手触り"の機会も奪う。個人における自身や自身を取り巻く物質的恩恵は、より豊かになるはずだが、金融データのトランザクションが増える事で、貨幣の有難みそのものが減っていくのは避けたいものだ。

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