第2回:"三方良し"2.0 ~デンマーク~
欧州のAI利活用は、今更ながら、多くの国がかなり力をいれ始めている。その流れの文脈では、デンマークは外すことができない国だ。デンマークは、国連経済社会局(UNDESA)における世界電子政府ランキングでNo.1を誇る程の実力を持つ。また昨年、AI主導の政党("Det Syntetiske Parti":人工党)が誕生したというニュースは記憶に新しい。政策立案等をAIが実施するというが、その教師データ、"何をもとに、AIが判断しているのか"という視座においては非常に興味深い。また、国全体としても国民のAIリテラシーを上げるべく教育にも熱心だ。
その結果を構成している人々が所属する組織、団体等、そして国、それらのエレメントで成り立つデータエコシステムの上で、共通したビックデータが流通されている。その一例に、生成系AIの時代として、改めて"e-Boks"についてみてみたい。"e-Boks"は、公共機関とのやりとりとりができるメールシステムプラットフォームであり、国が電子メールの使用を義務としている背景の上に成り立っている。そこで流通されるデータの属性は、医療機関、政府、公的機関等、社会インフラを形成するほぼ全ての組織に関するものである。
これが実現、運用し得るのは何故か。そのデータを扱う組織、団体、あるいは個人間での"信頼"が存在するからである。関係者間の信頼がなければ、そのデータの流通はなかなかうまくいかない。(もちろん、強制という選択肢もあるが。)組織、団体、個人問わず、自身以外のデータを扱う者として、あるいはビジネスパーソンとしては、改めてそのデータを使う側、提供する側、あるいは受け取る側の立場に立って、データを設計、運用、流通させていかなければならない。しかしそれらは、人間の感情的な情報を除去したものであり、なかなか、所謂"相手を慮った"という手立てを取りにくい。(もちろん、データの構造的に項目名称等の設計にて、わかりやすい表記等でフォローすることはできるが。)
左様な時代背景の先に、今後、AIによって、どこまで、意識的、業務的負荷が、どう、緩和、軽減されていくのか。日本には、"三方良し"という古の名言、名モデルが存在する。今後のデータ(マネージメント)ドメインで言えば、データを送る側、受け取る側、そしてAI側という"生成系AI時代の三方良し"が、さまざまな場所で更にボリュームを増すデータ群に向き合うための"信頼パラダイム"のキーコンセプトになるのかもしれない。さすがにまだ"AIの気持ち"を深く慮ることはないのかもしれないが、プロンプトに、"いつもご苦労様(^^)"等と、AIを労うコメントもいずれ必要になるのだろうか。
■参照:
総務省|令和3年版 情報通信白書|国際指標におけるポジション (soumu.go.jp)
2020 UN E-Government Survey (Full Report).pdf