書籍「はぐれイワシの打ち明け話 」を読んでみた。陸が辛けりゃ海がある【第55回】
平岡麻奈です。無事にフルマラソンを完走しましたので、少しその話を。無事にと言えども、身の程知らずの練習を重ねた結果、大会2週間前あたりに『ビキーーー!(本当にこの効果音)』と腰に電流が流れ、一定期間走ることが出来なくなりました。左足の腫れもなんとなく感じ取っていた中の右腰激痛。不安と心配と、なんとか出場したいという気持ち。『無理してまで出なくていいよ』という声かけにも、もはや無応答(←タクシー業界用語らしいです)。【安静にする】ことが脳内を掻き回し、途中棄権で感情を爆発させている映像が脳裏に流れてはまたフリーズ。様々な方法を駆使し(色々な方にお世話になりました!)、なんとか大会2、3日前に痛みは治まりました。やる気99%実力1%の中、走り抜けての5時間42分06秒。ラン中の出来事はゆっくり小出しにすることとして、最後は号泣しながらFINISH!
陸で生きているので、足を使って走ることが好きになりました。走ることが出来なくなった時に、海では走らず泳ぐんだよなあ、、とぼんやり考えていました。エンジニアライフコラム「平岡麻奈のちょっと一息」の第55回は、海の世界もきっと楽じゃないだろう、そう思いながらも陸での楽しみを奪われて自棄になっていた(自分が悪いのですが)私にとって、海水で満たされ、心が潤った1冊をご紹介します。
はぐれイワシの打ち明け話
海の生き物たちのディープでクリエイティブな生態
https://www.amazon.co.jp/dp/4334962505
本書は【海の雄弁術】が題材となり、著者自身の実体験に加え、魚の特性や歴史の話までもが沢山組み込まれています。『言語を使うことが出来る』から会話が成立するという考え方は剥ぎ取られ、何千キロも離れた場所に【想いを伝え合う】海の魅力を知ることが出来ます。
そもそもの話。
パッケージに表示されているカロリーよりも大切な【魚の話】が聞こえていなかったことに恥ずかしさを覚えました。魚の栄養素を知ると同時に、魚が歩んだ物語に興味が湧けば、日頃から何を食べるか食べないかなど、議論するまでもないのかもしれません。
僕たちの先祖は、水面という鏡面の向こう側にある海中世界を陸上世界のパラレルワールドとみなしていた。(10.海は鏡 P,186)
パラレルワールドとは、並行して存在する別世界。本書では、【「バイオミメティクス」と呼ばれる創意工夫によって海をまねすることで、僕たちの世界は海の鏡になりつつある】と示されています。【陸上に存在するものが海の中にも存在する】と考えられることは、現在も同じかもしれません。本書で紹介されている事柄として、多くの飛行機の胴体部分は魚の流体力学的形状に発想を得ていることや、手術用ロボットはタコの触手の柔軟な敏捷性を模倣していることが例として挙げられています。
人間は、海の怪物がいなくなったら、今度はその存在を自分たちで発明してしまうのだ。(9.シー・サーペント P,177)
過去には存在を証明できない生き物が沢山【存在】していましたが、時代が発展するにつれ、存在を証明できない生き物は名前をもつ権利も与えられず、数多くの魚も存在を消されてしまったようです。『存在は知っているけれど実際に見たことは無い』、『このように行動すればこのような結果になると知っている』という知識と未経験に溢れている現在より、【陸上の動物については実物を参考に出来たが、魚を見て描くことが出来なかったため、陸上の動物に魚の尾だけを付け加える】時代は、水中世界の伝説が長生きするものとなり、知らない世界への憧れのようなものが強まっていたように感じます。
フルマラソンは名古屋で開催され、前日にはひつまぶしを食べて大会に臨みました。鰻にはビタミンが豊富!という知識でひつまぶしを選択したことに加えて、生まれた場所に向かって何千キロも泳ぐ抜く鰻の頑固さに尊敬の念を抱きながら。
水族館に行ったり海岸でバカンスを過ごしたりという経験がこれまでの別のものになること、家にいる金魚や海の幸の料理やツナサラダのサンドウィッチをこれまでと違う角度から見られるようになってくれることを。(プロローグ P,14)
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