疲れた身体と心に響く書籍をご紹介

書籍「ぼくはテクノロジーを使わずに生きることにした」を読んでみた。手放すことは自由なのか?【第63回】

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平岡麻奈です。季節が変わり始めていることを、自動販売機に【ホット】【あったか〜い】商品がちらほら増え始めたことで認識し始めます。『まだホットは売っていなかったか。。』とひんやりし始めた仕事帰りの夜、ボタンを押しかけた指をスッと戻し、家路に急ぐこともあります。寒い時にあったかいブラックコーヒーを買う!これぞ幸せの瞬間。

ふと気がつきました。起きている間、私は何回もボタンを押している。スマホのタップやパソコンのキーボード入力も数に加えたら、1日の目標歩数を超えてしまうかもしれない。エレベーターに乗る時、切符を買う時、電子レンジでなにかを温める時。ボタンを押せば音楽が流れたり、テレビを楽しめる。ちなみに私には憧れのボタンがあります。それはカーテンが自動で開閉するボタン!カーテンを閉め忘れたりすると、遠隔操作で閉めることが出来る。なんともすごい時代です。

ボタンひとつで!タッチで完了!というフレーズを聞けば、便利だと感じるようになりました。そんな便利さに甘えながらも、生きていることを実感したくなる時があります。間に合うかの瀬戸際にある電車へ乗るべく、家中を駆け巡る時(余裕を持って行動しない自分が悪い)、扉を開けば駅のホームに直結していたら便利なのに!と家から飛び出し(『部屋のカーテン、閉めて欲しいー!』と叫ぶこと多々あり、これこそ開閉ボタンに憧れる理由。)、徒歩5分の最寄り駅を目指しながら、乱れる呼吸を感じる時、私は生きていると実感します。【人間らしさ】はどこか遠回りをしていると感じる時に実感しやすいのかもしれません。便利さ・快適さに対する追求の傍ら、時間を掛けて取り組むことへの憧れも否めない。エンジニアライフコラム「平岡麻奈のちょっと一息」の第63回は、敢えて手間をかけ、こだわる楽しさを見出す一冊をご紹介します。

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https://www.amazon.co.jp/dp/4314011874

マーク・ボイル (著), 吉田 奈緒子 (翻訳)


この本で呼びかけたいのは、読者それぞれが自分の周囲の風景にどっぷり身をひたし、風景との密接な関係性をはぐくみ、生きるよりどころとすることである。(著者より P,11)

本書は著者が自ら実践した【産業文明から完全に「プラグを抜いた」究極のオフグリッド生活】をまとめた書籍です。テクノロジーを手放した日常の物語を追っていくだけではなく、その生活の中で【見聞きした事柄、現実的な諸問題、農園の木戸越しに交わされた会話、冒険、省察の寄せ集め】が本書に彩りを加えます。

楽な生活を期待しないことで、なにかを断つ・手ばなす・なしで生きることは、【自己犠牲や制約や禁欲を連想させ、得られるものよりうしなうものに耳目を集めがち】であることをよそに、本書では【現実との接点をすべてうしなうことになるのか。あるいは、ついに現実を見いだすことになるのか。】という問いを生み出します。手放してみれば意外と必要でなかったことに気づいたり、行きたいお店をインターネット検索する中、【インターネットに載っていない場所だって、あってしかるべき】という感覚を持つことが出来る。本書を通じて【わからないことを楽しむ】ことが出来れば、テクノロジーの全てに頼らずとも、豊かに過ごせるのではないかと感じました。

骨伝導イヤホンを装着し、GPS機能搭載の腕時計を起動させる。足音と息遣いが乱れないよう注意しながら、最新技術を取り入れたランニングシューズを履き、身体が動きやすい設計のウェアを着用する。この上なくテクノロジー感満載で、心拍数の度合いを気にしながら、生きていることを実感する為に走り出す。この【矛盾】を正そうとするのか、はたまた【矛盾】しているとすんなり認めるのか。どちらにしろ、楽しいことには変わりない。

家にたどり着かぬうちに、突然、雷鳴がとどろき、強い雨がふってくる。ぼくはずぶぬれになり、くたくたに疲れ、生きている実感をおぼえる。(夏 P,223)

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