書籍「怠惰の美徳」を読んでみた。進んで怠けてみる?【第61回】
平岡麻奈です。少し遅い梅雨入りで、雨の日が増えてきました。梅雨の時期に限らず、専ら雨の日は【やる気】という文字が私の身体から抜け落ちていきます。明日が雨だと分かった時点で(明日は雨だし走らないぞ!と意気込む)、アラームをいつもの起床時間から2時間後に設定します。『今日はいいか、ダラダラしても』と思ったり、歩くスピードが極端に遅くなったりします。しかし、これは確実に私にとって良い影響を与えています。毎日【やる気】に満ち溢れている生活を送ることができればさぞかし幸せだけれど、【空元気】の時も大いにあります。上手くいっている時だけの話を切り取っていたら、その反動で、心の奥底から『いや、絶対偽ってるだろ』という声が聞こえてきそう。そういう時は意識して、頑張らないことを目標にゆるっと過ごすようにしています。『頑張らない』を頑張る。
頑張りたい欲が出てくると、スピードの緩め方を見失う時があります。そして突然糸が切れるという不思議体験も経験済。【良い塩梅】を見つけることは難しいのか?奇跡的に続いている(継続とは無縁であった私が)ランニングは、あくまで個人的にだけれど、頑張りたい欲に押されて無理をする自分を美化する側面があります。身体に負荷を与えることへの快感(俗に言うランナーズハイ?)からなのか、もしくは負荷を与えないと練習の意味を成さないという考え方からなのか。頑張ることばかりが良しとされると、なんだか休むこと自体が億劫になってきた。エンジニアライフコラム「平岡麻奈のちょっと一息」の第61回は、頑張る為の怠け方を知る1冊をご紹介します。
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そういえば私はどちらかというと、仕事がさし迫ってくると怠け出す傾向がある(三十二歳 P.17)
そんなに眠っては、起きている時間がすくないから、一生を短く生きることではないか。いやいや、そんなことはない。起きてぼんやりしているよりも、眠って多彩で豊饒な夢を見ている方が、はるかに有意義である。はるかに人生を愉しく生きていることになると、わたしは思っている。(只今横臥中 P.145)
自ら【怠惰】を肯定し、著者自身の日常をさらけ出す。『書いている間は、頭の重労働で、早くこの苦患から逃れたい』という言葉などから、小説家であることへの苦悩が透けて見えます。読み手側の日常でも起こりうる情景を描く中、ただ怠けるのではなく【美徳を感じさせる怠け方】の作法を学ぶかの如く、『身体の状態や健康状態が、その人の人生観を形造る』ことの重要さを示しています。小説を読むことはあっても、著者の生活を覗くことが出来る本書は新鮮でした。日々の隙間で感じるであろう【怠惰への憧れ】を現実のものとし、怠けることがいかに生きていく上で大切であるかを説いています。
日常が綴られた随筆の他に、短編小説が収録されており、小説にも良い塩梅での緩さ、【怠惰の美徳】を感じました。怠けることで『だんだん、つまらんことばかりに興味を持ってくる』ことを自身の経験として振り返ってみたり、『ぼんやりとした憂鬱な気分、ろくな仕事をしていないと言う自責感、昔の失敗を思い出して胸をかきむしりたくなるような気分』を抱きながら、やるべきことを蔑ろにしている現状を悔やむのではなく認める。頑張るだけでは生み出すことの出来ない、気持ちの豊かさ故の【怠惰】が、読み手側の日常に溶け込みます。私もこうやって怠けたい時もあるよなあ、、と、頑張ることに執着してしまいそうな時こそ、読み進めたい。
先日、フルマラソンの合同練習に参加しました。あいにくの大雨です、私の身体からは【やる気】が抜け落ちていることなんて関係ありません。『濡れちゃったらもう関係ないでしょう!』と言わんばかりに、土砂降りの中、皆でずぶ濡れランニング。これが遅れてやってきた青春というものか?と、ポジティブに捉えていましたが、やはりこういう練習というものは【やる気】に頼るものではなく習慣化させるのだと、またひとつ学んだのでした。
しかしそれでもいいじゃないか。僕は重い頭を支えで起き上りながら考える。とにかくまた今日を過ごせばいい。明日は明日でどうにかなるだろう。こんな状態がいつまでつづくのか知らないが、こういう一時期をこんな形で生きてきたということも、それ以外に生き方が見つからなかったからだ。そいつは仕方のないことだ。(一時期 P.346)
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