疲れた身体と心に響く書籍をご紹介

書籍「ハンチバック」を読んでみた。非日常は誰かの日常【第57回】

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平岡麻奈です。9月に入っても暑い日が続き、10月を迎えました。『暑いと寒い、どっちが好き?』と聞かれると、私はいつも『暑い方が好きかな』と答えます。しかし、今年は本当に暑い思い出ばかりで、汗抜き加工を何回したことか、、、冷房の涼しさが苦手でもあるので、自然の涼しさを待ち遠しく思う今日この頃です。

今年の夏を振り返ってみると、近年少し遠ざかっていた夏の風物詩として連想するような【祭り】や【花火大会】が開催されました。今年の夏は沢山『スーパーボールすくい』に挑戦しました。意地を張りながら、ただひたすらボールを掬い上げる動きに集中する。【70個以上掬い上げると特大スーパーボールがもらえる!】らしく、つい1、2分前までは欲しくもなかった特大スーパーボールが無性に欲しくなる。横の少年はおそらく50個は掬い上げているだろう、、技術が物を言うからこそ、色々な技が生み出されているはず。ちなみに、あの掬い上げる道具は【ポイ】という名前です。紙が破けてしまい、もうここで試合終了か!という時、最後の手段で【ポイ】の持ち手部分を水中に沈め、ボールを弾き入れようとしますが、、私自身の成功例はゼロです。

こんな話をしていると、『日常を取り戻す』という表現を聞くことがあります。確かに数年途絶えていたことが復活したり、再開したことで安堵する気持ちは私の中にもありますが、個人それぞれの【日常】は異なります。ここ数年、変化のない生活をしていたら、それは世間とズレているのか?誰かが感じる【非日常】が【日常】の人だっているかもしれないのに。エンジニアライフコラム「平岡麻奈のちょっと一息」の第57回は、久しぶりに一気読み!気づきを得るばかりか、呆然と立ち尽くしてしまう1冊をご紹介します。

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ハンチバック

市川 沙央 (著)

https://www.amazon.co.jp/dp/4163917128

私の脳内は酸欠の時もそうじゃない時もこういう感じだが、実生活ではうら若く真面目で寡黙な障害女性井沢釈華さんを通していて、だからこそBuddhaと紗花は下品で幼稚な妄言を憚りなく公開しつづけられた。(P,52)

主人公である井沢釈華は30年もの間、人工呼吸器を装着し、自分で歩くことが出来ない。グループホームで生活する中、小説サイトやSNSへの投稿では誰かが経験しているであろう刺激的な【日常】を妄想として思い描き、言葉として発信する。

私自身が【小説】に抱く思い込みのようなものを一蹴する書籍でした。ノンフィクションの小説もありますが、なかなか【作られた】物語に踏み込むことが出来ませんでした。選ぶ書籍は歴史本であったりすることも多く、どこか苦手意識を持っていたのかもしれません。著者の経験や考え方、奥に潜む心情が言葉の数々として降り注ぐ度に、著者の心が映し出され、物語となり本書が生まれる。正に突き刺さる衝撃を感じました。本書に惹かれる理由のひとつは、【非日常】への憧れと絶望、どこからともなく滲み出てくる感情の起伏と共に、日常と非日常を行き交う主人公の強さだと感じました。

私は紙の本を憎んでいた。目が見えること、本が持てること、ページがめくれること、読書姿勢が保てること、書店へ自由に買いに行けること、ーーー5つの健常性を満たすことを要求する読書文化のマチズモを憎んでいた。その特権性に気づかない「本好き」たちの無知な傲慢さを憎んでいた。(P,27)

実際に自らが体験していないからこそ、分かった気持ちになることだけは避けたい。だからこそ、今の自分が何不自由なく、歩きながら本を手に取り、戻してはまた手に取り、そしてレジ列に並ぶ。こんな摩訶不思議な行動を幾度となく繰り返している【非日常】な状態を、私は【日常】と勘違いしていた。突き刺さるその先、知ったその後あなたはどうする?という問いかけがずっと身体に残り続ける感覚を覚えます。

大きな書店は1階。地下2階にはフードコートがあります。沢山の店舗の中から、カフェメニューのある店舗を探す。そしてチーズケーキとアイスティーのセットを注文し、着席。【ハンチバック】を読み始めました。少し経って「前の席良いですか?」と2人組に声を掛けられました。手には同じチーズケーキとアイスティーのセット。ニヤつく顔を隠しながら手元の【ハンチバック】を読み進める向かいの人(私)が印象的であったなら、これほど嬉しいことはない。

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