疲れた身体と心に響く書籍をご紹介

書籍「暇と退屈の倫理学」を読んでみた。忙しいのに退屈なのよ【第51回】

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人生の癒しは専らパンダです、平岡麻奈です。仕事の話をしていると、引退したらゆっくり過ごしたいんだよな、なんて話になりました。その話になると返す言葉は、いつも決まっています。『暇になったら、結局なにかをしたくなるんじゃないんですか?』と返します。一日中ダラダラしていたとしても、四六時中【無】でいるはすがないやんかと。テレビやネットを見て興味があるものを探したり、時間を埋めようとするんじゃないかなと考えてしまいます。猫やパンダが羨ましい(話していた相手が猫好き、そして私はパンダ好き)、【生まれ変わったら猫になりたい】と、まあ確かに。けれど彼彼女も色々大変なはずだよ、と仕事の在り方と癒しの動物を掛け合わせるのでした。

家族内で変な共通認識があります。正しいか間違いかは、ひとまず置いておいて下さい。私と父親はマラソンを趣味としていますが、歩くことは面倒だと感じています。あれだけ自らを追い込みたがるのに(きつかったー!と言いたい)、近くのスーパーや、駅までの徒歩圏内の距離がなんだか面倒と感じます。便利で快適に生活したいのか、苦しさを耐えたいのかどっちなんだよ!とツッコミが入りそうな。

仕事に追われない自由な時間が欲しい、けれど退屈な時間は嫌だ。なにかに夢中になりたいと願い、対象となるものを見つけたい。快適さを求めているはすが、忍耐力が必要なことを敢えてやりたくなるこの気持ち。エンジニアライフコラム「平岡麻奈のちょっと一息」の第51回は、やらなきゃいけないことが沢山あるのになんだか退屈してる、これってなんだ?の本質に迫る1冊です。

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暇と退屈の倫理学
[著]國分 功一郎
https://www.amazon.co.jp/dp/4778314379


私たちの生活は気晴らしに満ちている。


満たされているのだが、満たされていない。本書は【退屈への苦しさ】を考察する1冊です。著者が日々感じていた退屈への疑問と、あらゆる方面からの見解を元に、読み手側も自分自身の経験と重ね合わせ、一緒に結論を出していく。著者と対話しながらページを読み進めている感覚でした。

本書では、【人間のみじめさの本質】をも説いています。気晴らしを求め、欲望の対象と原因を探す。そして熱中し、個人個人にあったものを選ぼうとする。ここには【気晴らしの対象が手に入れば本当に幸福になれる】と、自分をだましている状態を作り出し、退屈から逃れる策を模索している様子が浮かびます。

それにしてもなぜ退屈している私たちは、やるべき仕事を探し、仕事に従事しようとするのだろうか?仕事というのは普通、できることならやらずにすませたい、そのようなものではないだろうか?いや、そうではないのだ。やるべき仕事がないと、人は何もない状態、むなしい状態に放って置かれることになる。そして、何もすることがない状態に人間は耐えられない。(第五章 暇と退屈の哲学 P,221)

仕事を効率的に行うための書籍には沢山出会ってきましたが、効率的に仕事を終えた先、【何もすることがない状態】の想像は出来ていなかったように感じます。【人は自由が故に退屈すること】を覚え、その状況に向き合わなければならない。退屈と向き合うことを余儀なくされた人間が、そのつらさとうまく付き合っていくために編み出した方法や、人間らしさの行く先はどこに存在するのか?と結論に迫ります。人間は、今日と昨日を区別したがる、毎日変化の無い日常に飽きているということでしょうか。【暇はないが退屈している人間】の姿と向き合うことを避けてきた事実を思い知らされました。


人間らしく生きることは退屈と共に歩むことかもしれません。自由が故の退屈を認め、楽しむ訓練、受け取る能力を身につける。妹が毎日楽しそうにアニメ愛を語るのなら、私も彼女の楽しむ気持ちが知りたい!と、そのキャラ帽子を被り、ユニバに行く。なんならコミック全巻も読んでしまおうか。【環境が変わる不法侵入を受け入れる】ことを大いに歓迎し、退屈を共に楽しもう!という心持ちに、人間らしさが隠れていると感じました。400ページ以上の分厚い書籍でしたが、続きが気になりいつも持ち歩いていました。ここ良いな!と感じた箇所には付箋を貼ります。読み終えてみると付箋がびっしり。カバーは途中で破れてしまい、取り外しました。あの人、相当あの本好きなんやろうな、と思われていたことでしょう(聞いてませんが)。綺麗に読むというよりも、中身を吸収しよう!という気持ちが高まった一冊でした。そう考えると、車を買う時にまず売る時のことを考えて選ぶ派、愛着を持つだろうから売ることは後で考える派、と分かれるとしたら私は後者かな。皆さんはどちらでしょうか?

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